第四話 天道、決闘、ご乱心?!
一人で二年生の教室に向かう。
ひな姉は三年生なので上の階へ
ハナコさんは転入手続きで職員室へ行った。
……ハナコさん、一人で大丈夫かな。
自分のクラスのドアを開けた。
すでに賑やかな教室内では
天道の周りに女子が群がっていた。
天道カケル。
成績優秀、スポーツ万能の
超絶イケメンで、女子にはモテる。
彼女を作らない理由は「僕はみんなのものだから」
……ある一点を除けば、非の打ち所がない完璧人間だ。
やがて担任が入ってきて、朝のホームルームが始まった。
「今日は転入生を紹介します。
じゃあハナコさん、入ってきてー」
ハナコさんが教室に足を踏み入れた。
校舎の風景の中に彼女が立つと
その「大人の色気」と「セーラー服」の
ミスマッチがさらに際立つ。
なんだか、見てはいけないものを見ている気分だ。
「華那古命ですぅ。
ハナコって呼んでくださいねぇ」
教室中がザワザワと色めき立つ。
無理もない。
どこからどう見ても大人びた金髪美人が
セーラー服を着て、
「背中に羽、頭に輪っか」までつけているのだ。
いくら個性の時代とはいえ、
ハナコさんほどの情報過多は他にいない。
担任の先生も、少し顔を強張らせて睨む。
「ハナコさんねぇ……その金髪……
校則違反じゃないかしら?」
「えぇ? 地毛ですよぅ」
そこ!?
突っ込むべきはまず「羽と輪っか」だろ!
まあ、校則に「輪っか禁止」なんてないけどさー。
ガタンッ……!
突然、天道が椅子を蹴るような勢いで立ち上がった。
「……惚れた」
……マジか。
天道はスタスタと教壇のハナコさんに歩み寄ると
壁ドンならぬ「黒板ドン」で彼女を追い詰めた。
「君は……僕の天使だ……」
「あっ……えっと、ジャンル違うよぉ。
ハナコは『命』だよぉ」
「そんな些細なことはどうでもいい。
僕は君と出会うために、
この星に生まれてきたのかもしれない……」
「えぇ~?」
「僕と、交際してくれないか?」
ハナコさんは困ったように首を傾げ
さらりと言ってのけた。
「ハナコはねぇ、太郎くんの『彼女』なんだよぉ
そういう契約だからぁ、ごめんなさぁい」
クラス全員の視線が俺を貫く。
不意打ちすぎて反応できない。
「な……っ! た、太郎くんと……!?」
天道が、これでもかと大げさにたじろぐ。
「うん、昨日から同棲してるんだよぉ♪」
ハナコさんが嬉しそうに笑う。
……それは嬉しいけど……が、学校なんだけどっ!
「ど、どどど、同棲ーー!?」
天道は後ろにひっくり返りそうなほど仰け反ると
そのままの姿勢で俺を睨んだ。
「太郎くん……君とは、争いたくなかった……」
彼は胸ポケットからシルクのハンカチを取り出し
俺の顔にバサッとぶつけた……地味に嫌だ。
「よろしい! ならば決闘だ!」
始まった。天道の持病、「決闘体質」が発動した。
「おい、マズいぞ……」
「誰か天道止めろよ……」
クラスが騒然とする中
天道は、背中から竹刀を抜き放った。
「えぇい! 無手で僕に勝てると思うなよ!」
ブンブンと鋭い風切り音を立てて竹刀を振り回し始める。
「ハナコさん、危ないから下がってて!
いつものことだから大丈夫!」
俺はハナコさんを教室の隅へ促し
暴走する天道を止めるべく前に出た。
ハナコさんは「ほぇ~」と感心しながら隅っこに立つ。
ハナコさんとの波乱万丈な学校生活が
天道のご乱心と共に盛大に幕を明けた。




