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女神な彼女  作者: なつみかん


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第三十話 大人をからかってはダメよ

「ほぇー、おっきいビルっすねー!

  流石に緊張してきたっすよ」

ビルの前で、私は企画書を握りしめた。


相手は、国内シェア5位の化粧品メーカー

華林堂かりんとう

地元・小華市おはなしが誇る大企業だ。


ここでスポンサー契約が取れれば

目標の金額にグッと近づく。

「巫女ドル」の夢だって!


「美子くん、企画書まで自作したのかい?」

隣で天道くんが、驚いている。


「あたりまえじゃないっすか!

  お祭りで売れそうな

 新商品のアイデアもバッチリっす!」


「新商品……?」


「そう! 落ちにくいお祭りメイクとか!」


天道くんは「……なるほど」と呟くだけ。

相変わらず、やる気があるのか謎だ。

全く、ちょっとモテるからって!


「とにかく、行くっすよ!」

緊張を誤魔化すようにロビーへ踏み込み

受付で担当者を呼ぶ。


現れたのは、ビシッとしたスーツにメガネをかけた

三十代のキツめの女性。


「企画部、係長の因幡いなばうさぎです」

渡された名刺はツヤツヤの高級仕様。


「こ、こんにちはっす! 華那古神社の夢野美子っす!」

負けじと出した、お手製名刺、役職には"巫女"の二文字。


「……巫女? それで、ご用件は?」

因幡さんのメガネが光る。


「はいっす! 今度お祭りやるんで

 協力してほしいなって……」


「待って。仕事の話なら

 その学生みたいな口調はどうにかならない?

 時間の無駄なら戻るわよ」


「あわわ……失礼しましたっす!

  ……じゃなくて、失礼しました!」

ヤバい、営業なんて初めてでアタフタだ。


その時、天道がすっと因幡さんに近づく。


「失礼しました、因幡さん

 僕は天道、天道カケルです」

なんと因幡さんの手を両手で優しく包み込んだ。

おい、やめろ……!


「……あなたのような

 素敵な方にお会いできて、光栄です」

ダメだー!この商談、完全に終わったっす!


……と思いきや、因幡さんの頬が赤くなっていく。

「お、大人をからかってはダメよ……」

まさかのチョロい?!

天道くんのファインプレイで、首の皮一枚つながった。


「あちらのブースに行きましょう」

通された応接スペースで

夜なべして作った企画書を差し出した。


因幡さんが静かに資料をめくっていく。

「ふーん……この新商品、うちで開発しろってこと?」


「は、はい」


「お嬢ちゃん、あのね、新商品を開発するのに

 いくらコストがかかるか、考えたことある?」


「いや、そこまでは、っす……」


「テーマは素晴らしいわ

 地元活性化には当社も協力したい、とは思います」

因幡さんが、鋭い視線のまま資料を机に置いた。


「でも集客は? 初めてのイベントで

 どれだけの動員を見込んでいるの?

 ちゃんとKPI(目標数値)で示してもらえないと

 当社も動けないわ。慈善事業じゃないのよ」


うぅ…実社会、怖いっす。

つい小さな声で「…負けそうっす」と呟いた。


天道くんが真剣な目になる。

「美子くん、負けるのはダメだ。戦いは勝たないと」


「ちょっと、何をコソコソ話しているの?」

因幡さんが眉を寄せる。


「失礼しました」

天道くんは因幡さんに向き直り

スマホを取りSNSを開く。

「これを見ていただけますか?」


画面には、数百人の天道ガールズの

拡散によってトレンド入りした『#華那古祭』


「ここ数日の結果です。動員数は未知数ですが

 これをどう取るかは御社次第です。

 拡散しているのは、御社のメインターゲットの

 十代の若者層ですよ」


因幡さんの顔つきが変わる。


「さらにお祭りは、全年齢層に

 アピールできるチャンスです」

「……いや、専門家のあなたに

 こんな話は釈迦に説法ですね。すみません」

相手を立てながら、天道くんは畳みかける。


「因幡さん、本当にいいんですか?

 『地元の美容』をテーマにした祭ですよ。

 他社にスポンサーをさらわれた時のリスクは?」


「で、でも、SNSだけでは判断材料が……

 それに、さっきの新商品の話だって……」

因幡さんの声が揺れ始めた。


「在庫商品があるでしょう?

  このお祭り限定と言って

 ラベルを貼り替えるだけでいい。

 御社の商品には、それで十分な価値がある」


天道くんは少し間を置き、再び因幡さんの手を取った。

「SNSだけでは不安なのは承知しています。

 だからこそ、御社にお願いしたい。

 ……僕は、あなたと一緒に仕事がしたい。

 協力してくれませんか?」


因幡さんは、射抜かれたように天道くんを見つめた。

「……はい。上に報告します。

 必ず良いお返事をしますので、お待ちください」


※ ※ ※


帰り道、

「天道くん、凄かったっすねー!

 美子、全然ダメダメだったっす……」

悔しいが本当の事だ。

天道くんが、いなかったら門前払いだった。


あれ?もしかして……男も悪くない……?


「うん。やはり勝負事は勝たないとね。」


「それに……」

天道くんが爽やかな笑顔を向けて

「因幡さんみたいな

 美人と仕事がしたいってのは、僕の本音さ」


あれだけのファンの女を抱えて、三十路女まで……

やっぱり男はクソだ……美子はそう思うっす!

次回、ひなたがアップを始めます

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