第二十五話 全面的に禁止っす!
「なるほど。太郎くん。
ついにやる気を出したんすね」
夢野が腕を組み、
いかにも「デキる軍師」風に目を閉じる。
「それで美子の思いつき……
『華那古祭』を実現させたい、と」
「……ああ。今後のプランについて
お前の知恵を貸してほしい」
悔しいが、ここは下手に出るしかない。
神社の知識も、ビジネス戦略も、夢野の方が一枚上手だ。
「いいっすよ。やりましょう!」
「本当か!」
俺が身を乗り出すと
隣でハナコさんも「よかったねぇ」と
パチパチ手を叩いて喜んでくれた。
「ただし。一つ、絶対に譲れない条件があるっす」
「……条件? なんだよ、改まって」
夢野はカッと目を見開き、俺を指差した。
「お祭り当日まで、太郎くんの
イチャイチャを全面的に禁止するっす!」
「そんな、イチャイチャする予定なんてないよ」
「あー!そういう無自覚なのが
いっちばんイライラするっす!」
「ソフトの試合の時の……
美子、忘れてないっすからね!」
「美子のひなたお姉様を……
あまつさえ、ふ、ふ、二股とか!」
夢野が頭を両手で掻きむしりだす。
「わかった!わかったから!
しない!絶対にしないから!」
「それに誤解だからな、たぶん…」
「まぁいいっすよ、どのみち太郎くんは
お祭り始まるまで、そんな余裕はないっす」
「そ、そんなに忙しいのか?」
「それは後で話すんで、
先ずは一緒にやってくれる人集めないとっすね」
「ひなたお姉様も手伝ってくれるんすよね?」
目をキラキラさせながら聞いてきた。
「まだ聞いてないけど、いいんじゃないかな」
「人数は多ければ多い方がいいっすよ」
「他にいないっすか?」
「多い方がいいなら、考えがあるよ」
「ほぇー、いつになく自信ある発言っすねー」
「太郎くんは、昨日から
ちょっとカッコ良くなったからねぇ」
ハナコさんが嬉しい事を言う。
ますますやる気が出てきた!
「女神様も……イチャイチャ禁止っすからね」
夢野がジトーっとハナコさんを睨む。
ひなたの件でよほどナイーブになってるな……
「はぁい」
笑顔で答えるハナコさんが、こっちを向く。
「それで人いっぱい集めるって、
太郎くん、どぉするのぉ?」
「天道を誘ってくるよ」
「ふぇ、天道くん一人ぃ?」
「まぁ見てなって」
俺は天道のところへ行く。
相変わらず女子に囲まれていた。
「なぁ、天道」
「太郎くんか、どうしたんだい?」
「ハナコさんのお祭り、やるんだけど
人手が足りないんだ」
「僕の天使のハナコさんが?」
「いや、そこは違うんだけどさ」
「でもいいだろ、友達じゃんか」
「僕と君とは、友と書いてライバルと読む感じだが……」
「ハナコさんを巡ってのね!」
天道が背中から武器を出そうとするのを
サッと押さえる。
「っ!……まぁまぁ、そこは休戦してさ」
「つまりハナコさんが喜ぶなら
天道も賛成なんだな」
「それは……そうだな」
天道は、考え直したように腕を降ろす。
危なかった……
「じゃあ決まりだな」
「ついでに、なんだけど……」
「まだ、何かあるのかい?」
「天道のファンの女子、何人くらいいるの?」
「僕に聞かれてもな……たぶん
豊葦原学園の女子の半分くらいかな」
「じゃあその子達も良かったら誘ってくれる?」
「え、まぁいいけど、」
天道がふわっと了解すると、
天道ガールズが話しに入ってくる。
「私達が徴収かけてきます!」
「天道くんの頼みなら地獄の果てまで!」
「祭りの成功は天道くんの笑顔のため!」
すごい、これが愛の力なのか……
「ほぇー、一気に数百人の人員が……」
「女子ばっかっすけど」
夢野が感心したように言う。
「な?天道は凄いだろー」
「なんで太郎くんが、自慢するのぉ?」
ハナコさんが羽をパタパタさせながら聞いてくる。
「面倒なやつだけど、凄い友達だからかなー」
「太郎!話は聞いていたぞ!」
突然、来人が現れた。
「俺は誘わないのか?」
「俺のミリタリーの知識も必要だろ?!」
「え、じゃあ、やりたいならやろうよ」
「ただし!俺を誘うなら条件がある!」
来人はピシャリとキメ顔になる。
「なんでだよー、自分から混ざりに来たのに」
俺の話など聞こえてないのか、来人は続ける。
「祭の衣装…女子はふんどし!
これが俺の条件だ!」
……沈黙が訪れ、カラスの鳴き声が聞こえる。
「こんなバカは置いて、
ひなたお姉様、誘いに行くっすよ!」
……うん、そうだよな。
俺たちは来人を無視して
ひなたがいる三年生の教室に向かう。
「待ってくれ!俺が悪かった、置いて行かないでー」
結局、来人も付いて来た。
それを受け入れるみんなも、なんだかんだ優しい。
「ハナコさんのお祭り?」
「いいよー、手伝う」
三年の教室に行くと、
ひなたはあっさり承諾してくれた。
「ひなたお姉様…肘、大丈夫なんすか?」
夢野が心配そうに聞く。
「うん、安静にしてれば大丈夫だって
夢野さんも心配してくれたんだ、ありがとう」
サポーターをした腕を曲げて見せる。
「……良かったっすー」
美子が、ひなたに抱きつく
ひなたも慣れてきたのか、美子の頭を撫でる。
マジで王子様感が増して来てるな。
「ひなた、ありがとう」
俺も感謝の言葉を言うと
夢野が睨んでくる……怖い。
「お姉様、こんな事言いたくないけど
お祭りまでは太郎くん、イチャイチャ禁止なんで」
「お姉様も、太郎くんに抱きつくの禁止っす!」
三年の教室が夢野のセリフでざわめく……
ひなたがフリーズしてしまった。
ひなたの友達……確か美香さんだっけ?
美香さんが、ひなたに近づいてくる。
「いつの間にそんな事してたの?やるじゃん!」
「……っ!? な、なななな何を……っ!」
ひなたの顔が、みるみる耳まで真っ赤に染まる。
限界までオーバーヒートした頭から
シュー、と蒸気が出た。
そのまま、ひなたは糸が切れた人形みたいに
ゆっくりと倒れ込み――「お姉様〜!」
夢野が慌てて抱き支える。
その後、夢野もひなたから
抱きつき禁止を言い渡されていた。
新章突入です!今もデータ集めて
悩みながら書いてます




