第十八話 お通夜っすか?
学校の昼休み
ハナコさんと一緒に食事をする。
あまり変わらない光景だけど、話が少なくなった。
何気に話していた会話が出てこない。
目が合うと、ハナコさんはニコッと笑う。
「焼きそばパンって美味しいよねぇ」
「ハナコさん、それ好きだもんね」
「うん、でも小麦でしょー?これ、全部」
「小麦も美味しいけどぉ、女神としては
お米食べて欲しいなぁ」
――これはね、未練なんだよぉ――
"女神"と言う言葉で昨夜の
ハナコさんの言葉を思い出す。
――ハナコの姿は太郎くんを、ずっと傷つけるよぉ――
今まで、かわいいと思っていた羽と輪っかが
何故か、邪魔に思えてしまう。
「そ、そういうもんなんだ…」
なんとか会話しようとするけど、
上手いこと言葉がでない。
元々、会話が上手いわけでもないけど
こんなだったっけ?
「なんすか?お通夜っすか?ここは」
夢野がコロッケパンを片手に、
勝手にハナコさんの隣に座る。
「美子ちゃん、お通夜もジャンル違うよぉ」
「別にいいじゃないっすか、ニュアンスっすよ、ニュアンス」
「それより、太郎くん、神主引き継いだんすよね?」
「うん、一応ね」
「やった!」
「これから、ダイレクトに神社経営の
やり取りできるっすね!」
美子がコロッケパンを食べ終わりガッツポーズをする。
「以前、華那古神社を図書館で調べたんすよ」
「不思議っすねー、神事とかお祭りとか…
全然やってないんすよー」
「あー、そりゃそうだろうなぁ…」
「なんか知ってんすか?」
「別に、詳しいって訳じゃないよ」
「口外禁止なんだってさ、だから内緒」
「へー…ケチっすねー」
「でも、いろいろやっちゃダメって事じゃないんすよね?」
「別にいいんじゃない?ハナコさんが嫌がらない事なら」
「当の女神が目の前にいるんだしさ、便利だよね」
「うんうん、ハナコは
いろいろイベントあると嬉しいよぉ」
「ハナコさん、みんなで騒ぐの好きだもんね」
…あれ?誰かいると普通に話せるな、不思議…
「じゃあ、まずは華那古祭の開催っすね!」
「華那古祭〜!」
俺とハナコさんは同時に声を出す。
驚いてお互いの顔を見て、同時に目を逸らす。
「なんすか?2人は付き合ってて、
倦怠期ってヤツっすか?」
「な…!違っ…違うよ、たぶん」
「でも、一応、まだ彼氏だもんねぇ」
ハナコさんがニヤニヤして、こっちを見る。
「ほぇー、神様と付き合うとか、
太郎くんも大物っすねー」
マジマジと夢野が俺を見る。
まだ、彼氏かぁ…これから、どうなるんだろ?
「たーくん、ちょっといい?」
ひなたがクラスに入ってくる。
「げ…美子ちゃん…」
「ひなたお姉様〜、美子に会いに来たんすかぁ♡」
美子の目がハートになり、ひなたにまとわりつく。
「ちょっと、美子ちゃん落ち着いて…ね」
「あのさ、たーくん、今度の試合、見に来てくれない?」
「美子も行くっす!」
「試合、ソフトの?」
「うん、IH予選の決勝なんだ、次勝てばIH出場」
「すげー、去年は全国ベスト8だっけ」
「うん、去年は先輩達、強かったから」
「今年はね、私達中心のチームだし
一応、ピッチャーやるし…見て欲しいなって…」
「絶対、美子も行くっす!」
「もちろん行くよ、応援してる」
「ありがとう、ハナコさんも来るよね?」
「うん、ハナコ、ソフトよく分からないけどぉ
ひなたちゃん応援するよぉ」
「もちろん!美子もガンガン応援するっすよ!」
「わかった!美子ちゃん、わかったから、ありがとうね」
ひなたも夢野にはタジタジだ…
「じゃあ週末の試合、よろしくね」
ひなたは、明るく手を振って教室を出ていった。
いつも世話を焼いてくれるひなたが、
応援とはいえ俺を、頼ってくれている。
それが、少しだけ誇らしくて、
俺は、ただ嬉しかった。




