第十六話 華那古命の御神体
奥の間に着くと
親父はマスターキーならぬ、神主キーを出す。
ガチャガチャ…
…どうやら錆びついて、鍵が入らない様だ。
「困りましたなー」
「鍵屋さん呼んで、また来週ですかな」
「あのぉ〜…パパさん、鍵が開けばいいんですよねぇ」
「そうですが、開けられるんですか?」
「さっきまで、ためらっていらっしゃったのに
いいんですかな?」
「はい〜、来週までドキドキしてるのは、ちょっとぉ…」
そう言って、ハナコさんは
神器「しゃべれるくん」を取り出す。
「あ、ウズメちゃん?…うん、元気だよぉ」
「えぇ、そんな事あったのぉ?酷いねぇ」
たぶん、話が逸れて雑談になってるな…
「それでねぇ、うん、おねが〜い」
神器の停止ボタンを押して、折り畳む。
「ウズメちゃん、来てくれるってぇ」
「おぉ…ウズメさんか、怖いなー」
「ワシは一言も、話しませんぞ!」
よほど、ナマコにされたのがトラウマなんだろう…
俺もだけど…
数分後、
「おいーっす」
ウズメさんが来た。早いな!さすが神…
※ ※ ※
「なるー、あんたらさー
神通力を便利屋みたいに使うなし」
「ごめんねぇ…」
「別にいいけどさー、ハナっち、ホントにいいの?」
「…ウズメちゃん、ハナコの事、知ってるの?」
「知らんし」
言い切ったあと、顔を反らす。
「でも、まぁ…想像はつくし」
「…そうなんだねぇ」
「ハナっちが、彼ピに見せてもいいって決めたんだね」
「うん、今がいいかなぁって」
「うん、じゃあ、…ほい」
ウズメさんが扉に手をかざす。
ガチャリ…と鍵が開いた音がする。
「おい、そこのおぢ、ここ御神体あるんでしょ?」
「は、はい!」
「そういうのは、もっと大事せんとイカンし」
「そうですな!大変申し訳ない!」
「今後は、太郎が引き継ぎますゆえ、このような事は…」
あ、俺に投げた。
「んじゃ、まぁウチは帰るわ」
「あ、ウズメさんありがとう!」
ウズメさんは俺を見て、微妙そうな顔をする。
「ウズメちゃん…」
ハナコさんが呼びとめる。
「何?」
「…ハナコの御神体、見ないの?」
ウズメさんは顔をしかめ、横目でハナコさんを見る。
「別に…ハナっちは、ハナっちでしょ?」
「ウチは"それ"が何でも、変わらんし」
「…そか、ウズメちゃん、ありがとぉ」
ウズメさんは、それを聞いて
むっつりしたまま、赤くなる。
そのまま、ゆら〜っと飛んで
天井を突き抜けていなくなった。
最後まで見届けたハナコさんは
「それじゃぁ、入ろうかぁ」
と気合を入れなおし、少し真面目そうな、
それでいて、悲しそうな顔をする。
「そうですな」
親父は扉を開く
カビやホコリの匂いが広がる。
狭い部屋には、古いお札や枯れた榊が散乱している。
「酷い散らかり様だね」
「十年以上、もっとか?
誰も入ってなかったからなぁ」
「ウズメさん、帰ってくれて良かったね」
「この散らかり方、絶対ナマコにされてたよ」
「た、確かに!」
「太郎!これからは、ちゃんと掃除するんだぞ!」
そう言って慌てながら、
奥の戸棚を開け、古い木箱を取り出す。
「これが、この神社の…氏神様の御神体だ」
「いいか?口外しないと誓えるか?」
「ワシも、母さんにも言ってない大事な事だぞ」
いつになく、真剣な顔をしている。
「すっごい脅かすね」
「いいよ、別に誰かに話すことでもないし」
親父が木箱を開ける。
…中には、綺麗な銀のロザリオが入っていた。




