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女神な彼女  作者: なつみかん


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第十一話 段ボールは戦士の必需品

「ウズメさん、高天原たかまがはらに帰っちゃったねー」


「ウズメちゃんはハナコと違って

 現役の女神様だからねぇ

 この前は太郎くんを見に来ただけだもん」


「あ〜……また冴えないって言われたなー

 ハナコさんにも最初は言われたけど……」


「もぉ〜、昔の話をネチネチはモテないよぉ?」


朝のホームルームが終わり

俺はハナコさんと談笑していた。


今更だけど、こんな超絶美人と

教室で当たり前に話している自分に驚く。

俺も少しは出世したもんだ……

なんて、柄にもないことを考えていると。


ガタガタ、ガタッ……


不自然な音を立てて、床に置かれた段ボールが動いた。

中から背中を隠し、ほふく前進で

じわじわとハナコさんの足元へ近づいてくる影。


クラスメイトの、我妻来人あずま らいとだ。


「……お前、何してんの?」

俺が冷ややかに問いかけると

段ボールの隙間からギョロリと目が覗いた。


「パ、パンツ見えないかなぁ……って……

 チッ、よく俺の『ステルス』を見破ったな」


「いや、どう見ても無理があるだろー

 教室の真ん中で段ボールが動いてたら

 目立つに決まってるよ」


「おっかしいなー。YouTubeでは

 上手いこと潜入できてたのに……

 段ボールは戦士の必需品のはずなのに……」


「いい加減、聞きかじりのサバゲー知識で

 スケベなことするの、やめたら? 無理あるって」


「何を言ってるんだ!

 いつだって世界を変えるのはミリタリーなんだぞ!

 ミリタリーの力があれば、不可能なんてないんだ!」


ハナコさんは、理解が追いつかないのか

ぽけーっとした顔で来人の演説を聞いている。


「でも、現に今、あっさり失敗してるじゃん」


「ふん、今回は小手調べだ。

 放課後の『本番』は完璧だからな!」

来人は段ボールを脱ぎ捨て、自信満々に胸を張った。


「ターゲットは、ソフト部の部室だ」


「は? ソフト部? なんでまた……」


「そんなの、覗きに決まってるじゃないか!

 言わせるなよ……恥ずかしい」

「確かにお前の存在は恥ずかしいよ!

 でも、もっと華やかな部活が他にあるだろ?」


「太郎もバカだなぁ

 ソフト部には、『宮下ひなた』先輩がいるんだぞ?」


「ひなた!?

  ……なんでそこで、ひなたの名前が出てくるんだよ」


今まで女子の群れに囲まれていた天道が

優雅に輪を抜け出してこちらへ歩み寄ってきた。


「太郎くん、君は幼馴染という立場に甘え

 本質を見失っているようだね」

天道は、憐れむような目で俺を見た。


「宮下ひなたの、真の魅力に」


「そ、そうなのか……?」


「まったく、君は彼女のどこを見ているんだ?」

天道は、まるで舞台俳優のように朗々と語りだした。


「彼女の魅力は、ボーイッシュな中から

 不意にこぼれるあどけない笑顔。

 そして、日々鍛錬された至高のヒップライン!

 そこから伸びるムチッとしていながらも、

 しなやかな躍動感を秘めた太もも……

 これはもう、芸術と言っても過言ではない……」


天道は空中に向かって、愛おしそうに指を広げた。

「彼女は、この豊葦原とよあしはら学園でも

 五本の指に入る屈指の美少女だぞ!」


……お前こそ、どこを見てんだよ。

ツッコミを入れたくなったが、

天道は目を閉じ、空中で何かを愛でるように

手をモミモミさせながら、深い想像の海に浸っている。


隣でぽけーっとしていたハナコさんも、

なぜか「うんうん」と深く頷いて、

天道の変態的考察に同意していた。


「キャー! 天道くん、変態だわーっ!」

周囲の女子から黄色い悲鳴が上がる。

……高スペック男子なら、変態発言も

ファンサービスになるのか。世の中、不公平すぎる。


しかし……ひなたって

俺の知らないところでそんなに人気があったのか。

……でも。


「ひなたを覗くなんて絶対にダメだ!」

気づけば、俺は身を乗り出して叫んでいた。


「ほう……つまり、来人くんと太郎くんで

 意見が真っ向から対立した、というわけだね」

天道が口角を吊り上げ、不敵に笑う。


「よろしい。ならば決闘だ!」


「……えっ、また!?」


「僕は来人くんに加勢しよう。

 何としてでも、覗きを成功させてみせる!

  だいたい、君はハナコさんを独占しておきながら

 ひなた先輩という至宝まで……

 なんだ、君は!ハッピーセットかっ!」


ハッピーセットって……

いやいや、ひなたとはそんな関係じゃないし

そもそもそれを天道にだけは言われたくない!


「なんでそうなるんだよ!

  絶対に、絶対に許さないからな!」


「そうだ……その言葉を待っていたよ

 太郎くん。……僕たちを、止めてみせろ!」

すると、ハナコさんが楽しそうにパッと表情を輝かせた。


「あ、じゃあハナコは、太郎くんと組むねぇ」

そう言って、俺の腕をぎゅっと抱きしめる。


ハナコさん……

加勢は嬉しいけど、タイミングが最悪だ。

天道と来人の燃え上がる闘争心に

ハイオクを注いでしまっている。


「決まりだな!

 放課後、覗きが成功したら俺たちの勝ち

 阻止されたら太郎の勝ちだ!」

「ミリタリーの……いや、

 男の執念の恐ろしさを教えてやるぜ!」

来人が勝ち誇ったように叫び、戦いの火蓋が切られた。


かくして、放課後の

「ソフト部防衛戦」が幕を開けたのだった。

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