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魔王メイドエクリナのセカンドライフ  作者: ひげシェフ
第六章:偽りの楽園、砕かれる朝

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◆第89話:繰り返す《完璧》◆

翌朝――。


“昨日と変わらぬ光景”が広がっていた。


焼きたてのパン。温かなスープ。賑やかな声が交錯する食卓。

まるで昨日をなぞるように。


「朝食は我が用意してやったのだ。感謝するがよい、セディオス」

「ありがとう、エクリナ。いただくよ」


無造作に逆立つ茶髪の男が微笑む。

その笑顔に頬を染めて返す少女――碧眼のエクリナは、けれどその胸中に微かな違和感を覚えていた。


(……この会話……昨日も、聞いたような……?)


ふと感じた“繰り返し”に、彼女は目を伏せ、静かに思案する。


 ◆


庭では、ライナとルゼリアが模擬戦を繰り広げていた。

跳ねる赤髪、ひらめく青い髪。その動き、その言葉、その掛け合い――どれもが既視感に満ちている。


「はい、そこで踏み込みすぎです、ライナ!」

「うぇ〜、また怒られた〜!」


声のトーンも、息づかいも、まったく同じだった。昨日と――。


(……これも……昨日、見た……)


エクリナはそっと足元の草花に視線を落とす。

そのとき――ほんの一瞬、花の色が白黒に褪せ、すぐに元へ戻った。


(今のは……?)


見間違いか、錯覚か。

だが、どこか“作り物のような”冷たさが、微かに肌を撫でた。


(いや……これは、ただの勘違いではない)

胸の奥に、冷たい確信のようなものが刺さっていた。


 ◆


その夜。


庭が一望できるテラス。

薄明かりの中、風が無音に揺れていた。


エクリナは隣に座るセディオスへ囁く。


「なあ、セディオス……うぬは、この日々を、どこまで覚えている?」


セディオスは一瞬、驚いたようにまばたきをし、そして穏やかに笑う。


「何を言ってるんだ、エクリナ。毎日、楽しく過ごしてるじゃないか」


その言葉に、エクリナも微笑んだ。

だが、そこには確かな影があった。


「……そう、か」


(この表情も……返しも……完璧すぎるのだ)


彼の笑みが、遠く――“描かれたもの”のように見えた。


(ならば我が、確かめねばなるまい。この《平穏》の正体を――)


夜風が頬を撫でる。

冷たく、まるで“外”から吹き込んでくる風のようだった。


エクリナは静かに目を閉じた。

音も、匂いも、息づかいすら――一瞬だけ、世界から消えた。

次回は、『10月16日(木)20時ごろ』の投稿となります。

引き続きよろしくお願いしますm(__)m


ここまで読んでくださり、ありがとうございました!

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