◆第67話:再会、そして新たな日常へ◆
魔哭神が破れ、玉座の間には沈黙が訪れていた。
肩を貸し合いながら、セディオスとエクリナは瓦礫の残る階段をゆっくりと下っていく。
決戦の名残が残る空間を、二人は確かに、生きて歩いていた。
そして、辿り着いたのは――大広間。
重く軋む扉を押し開けた瞬間、焦げた匂いと鉄錆の香りに、仲間たちの流した血と魔力の残滓が混じり合っていた。
戦場の熱気と、息遣いの混じる大広間――その中央に、仲間たちの姿があった。
「……ティセラ……」
倒れ伏した仲間たち。
エクリナはセディオスを扉際に下ろすと、迷うことなくティセラのもとへ駆け寄った。
「――……エク……リナ……っ!」
目を開いたティセラが、泣き崩れるように叫ぶ。
再会の喜びと安堵、全ての想いが涙になって頬を濡らした。
「終わった……魔哭神は討ち果たした。すべて、終わったのだ……」
震える手でティセラの肩を抱くエクリナ。
その声音は、かつての“魔王”のものではなかった。
その声に、他の二人も気づいた。
「ん……? エクリナ……? 本物……?」
「よかった……ほんとうに、よかったぁああ……!」
ルゼリアとライナが泣きながら飛び込んでくる。
ティセラは泣き崩れ、ルゼリアは声を殺しきれずにしゃくり上げ、ライナは子どものように笑い泣きした。
三人はエクリナに縋り、肩を寄せ合い、声を上げて泣いた。
その光景を、セディオスは安堵の笑みを浮かべていた。
笑みの影で、魔核の痛みが心臓を殴り続けるように響いていた。




