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魔王メイド・エクリナのセカンドライフ  作者: ひげシェフ
第四章:魔王戦記~その名はエクリナ~

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72/201

◆第63話:玉座にて咆哮す◆

玉座の間――

深紅の絨毯が引かれた広間を、エクリナとセディオスが静かに歩む。

背後には、仲間たちが命を賭して守った扉。


「……行くぞ」

「ああ。共に果たそう」



空気は張り詰め、時間が凍るようだった。

重厚な玉座に、かの者は座していた。


「ようこそ、吾の愛しき“実験体”たち」


魔哭神ヴァルザ。

彼は相も変わらぬ微笑を浮かべ、片肘を玉座に預けていた。

「エクリナ……ついにここまで来たか。意思を持った玩具ほど面白いものはない」


そして、隣の男に目を向けた。

「ほう、人間か。玉座までたどり着いたのは初めてだ。賞賛に値する」


ヴァルザは立ち上がり、片手を掲げる。

闇と輝きが交差するような魔力が渦巻き、

杖――魔導戦具《律創杖剣〈レギオン・セファル〉》がその手に現れる。


「ならば……褒美をくれてやろう。全力の“破壊”を、な」


その瞬間、天井から奔流のような魔力が降り注いだ。

高位空間分断魔法〈ディメンショナル・カスケード〉。

大地が歪み、空間が引き裂かれる。


「……遅いッ!!」

エクリナが《魔盾盤ヴェヌシエラ》を展開し、空間防御壁で迎え撃つ。

セディオスはその影から一気に踏み込み、抜刀。


「通らせてもらう」

閃光の一閃――剣撃が直線的にヴァルザを狙う。


「ふん……浅いな」


ヴァルザの杖の先端に槍の刃を備え、セディオスの剣を弾いた。

瞬時に回転し、衝撃をそのまま返すように柄を突き出す。


「ぐっ……!」

セディオスが後方に飛ぶ。


「ならば、次は――これだ」

杖から槍、そして両刃の大剣へと姿を変える。


「セファル=クレイモア、展開」


ヴァルザの一撃。大剣と剣がぶつかり合い、魔力の火花が散る――

だが、圧倒的な質量と威力がエクリナの《魔盾盤ヴェヌシエラ》ごと押し切った。


「ぅ、あ……!?」

圧縮した空間が破られ、彼女の身体が宙に弾かれる。


「エクリナッ!!」


続けざま、杖がさらに変化する。

分割された刃が異空間から現れ、杖と合体する。

第三形態――両刃大斧《ヴァスト=ディバイダー》。


「斬って、砕いてやろう!」

轟音。床石が砕け、衝撃波が玉座の間を駆け抜ける。


《深淵纏装ドミヌス・クロア》が斬撃を防ぐが、結界が悲鳴を上げて砕ける。

眩い閃光が視界を塗り潰し、耳に残るのは轟く金属音と骨を軋ませる圧力だけ。


吹き飛ばされるエクリナの身体を――セディオスが背で受け止めた。

衝撃で膝が沈む。

それでも剣士は倒れず、彼女を立たせるために踏みとどまった。


「……くっ、エクリナ……っ」

「うぬこそ……無理を……」


セディオスはエクリナをそっと立たせる。

そして、正面のヴァルザを睨むように言い放つ。


「……この化け物が、すべての元凶か」


ヴァルザの口元がわずかに歪む。笑っているのか、それとも、何か別の感情なのか。

「そうだ――吾は、愚かなる魂どもが“何を叫ぶか”を見ているだけだ」

その声には、冷酷な響きと、底知れぬ狂気が混じっていた。


「……剣士よ。ふむ、近接戦というのも、悪くはなかったな。

血の軌跡と刃の軋み、その一瞬に宿る“決意”――実に、美しい」


魔導戦具《律創杖剣レギオン・セファル》が再び変形し、禍々しい大槍の形を取る。

「だが……そろそろ、“本気”を出すとしようか。

崩壊を、絶望を、悲鳴を――もっと高みへと至らせるために」


滅びを嗤う神は、静かに、そして確実に“遊戯”を次の段階へと進めようとしていた。

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