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魔王メイドエクリナのセカンドライフ  作者: ひげシェフ
第四章:魔王メイド戦記~その名はエクリナ~

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◆第55話:終焉の剣◆

数日間にわたり、拠点跡の大地は黒と紅に焼かれ続けた。

漆黒の魔力と激情の焔が幾度も衝突し、世界の縁を焼き尽くすように燃えさかる。


「アブソリュート・レンドッ!! ナハト=シンフォニアァァ!!」


咆哮と共に放たれた闇魔法が、幾重にも重なる闇刃となってセディオスへと殺到する。

その数は百を超え、空間ごと斬り裂く圧力と共に嵐のように降り注いだ。


だが、セディオスは剣を構え、静かに踏み出す。

「―――カレイド・ガーディアン」

展開された防壁が魔力の奔流を受け止め、剣閃が飛び交う闇を切り裂いた。


エクリナは続けざまに魔杖を振り上げ、詠唱に入る。

「空間よ、応えよ……時を沈め、闇を重ねよ……〈ディメンション・アーク=ヘルストーム〉!!」


全方位から空間断裂の槍が複数放たれ、セディオスを囲い込む。

その瞬間――

「孤絶・断境閃!」

閃光が走り、空間ごと切断する剣気が魔法の陣を断ち割った。


「ならばこれでどうだ……!」

エクリナが叫び、漆黒の空に魔力を集中させる。

「ディア=エクリプス・サンクション!!」


降り注ぐ黒き月の魔炎が大地を焼き、天と地の間に巨大な魔力の渦を生む。


セディオスはそれを見上げながら、静かに言う。

「……ここで終わらせる」

魔剣アルヴェルクに紅光を宿し、渾身の構えを取る。

「禁奥義――、エピローグ・ブレイドッ!」


旋回する紅黒の竜巻が解き放たれ、月の闇を突き破るように魔力を貫く。

紅黒と黒月がぶつかり、大地を揺るがす爆発が巻き起こる。

二人の身体は吹き飛び、荒野に叩きつけられた。



それでもなお、エクリナは立ち上がる。

「我は……負けぬ……この怒りが、悲しみが、我を支えているのだ!!」


最後の魔力を集中し、魔杖を突き立てる。

「アニヒレイト・ゼロ=ディメンション!!」

空間がねじれ、絶対消滅の術式が発動した。


だがその直前、セディオスの剣がその詠唱を断ち切るように、寸前で割り込む。

「すまない……止まってくれ」


その言葉と同時に、空間が一閃された。


やがて、魔力の奔流が途切れる。

エクリナの膝が崩れた。

「……ハァ……ハァ……まだ……我は……」

体は限界を超え、魔素は枯渇し、視界すらも滲んでいる。


それでもなお、彼女は立ち上がろうとした。

「あの時の誓いが、まだ胸に残っている……」

それは血と涙にまみれたあの夜、必ず皆を守ると誓った、たった一つの約束。

誰かに命じられたわけではない。


それでも――進むべきだと、かつてそう信じたから。

その姿に、セディオスが静かに歩み寄る。

「終わらせる。ここで、すべてを」


その言葉と共に、漆黒の剣《魔剣アルヴェルク》に紅の輝きが灯る。

力を帯びたそれは、まるでこの物語に幕を引く“最終章”のように。


「――エピローグ・ブレイド」


一閃。

空間が断たれ、爆風が巻き起こる。

エクリナは必死に魔杖を構えた――だが無情にも、その杖は折れ、力を失った 。

地に伏し、ついに――動けなくなった。


その瞬間、“魔王”の物語は、終わりを迎えたのかもしれない。

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