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魔王メイドエクリナのセカンドライフ  作者: ひげシェフ
第四章:魔王メイド戦記~その名はエクリナ~

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◆第50話:新たな策略◆

――復讐の炎は、確実に広がっていた。


エクリナ率いる“魔王軍”は、この数週間の間に魔哭神軍と人属軍が交錯する複数の戦線を次々に渡り歩き、壊滅させてきた。


西方では、炎と雷が夜を切り裂き、補給拠点を電撃の如く急襲。

北方では、ティセラの結界で敵を封じ、エクリナの闇魔法がそのまま丸ごと呑み込んだ。一拠点が、跡形もなく消滅した。


人属軍との直接交戦は避けながらも、魔哭神軍を選別し、標的を絞って叩く精密な破壊行動は、確実に戦局に影を落としていた。


「魔王軍――奴らはただの反逆者ではない。行動に“意志”と“戦略”がある」


そう敵に言わしめるほどに、その名は両陣営に広まりつつあった。

だがその栄光は、同時に危機を招く。


 ◇


その夜――


次なる戦線へ向かうべく、簡易野営の撤収を行っていた四人のもとに、不穏な気配が忍び寄っていた。

「……ん? この魔力の流れ……妙に“整って”いる……」


ティセラが眉をひそめ、魔力感知を展開した直後、声を上げた。

「これは……転送魔法っ!? エクリナ、避け――!」


だが、時すでに遅かった。

足元の大地に複数の魔法陣が展開され、空間が歪むように捻じ曲がっていく。

「ちっ、罠か……!」


空間の淵が開かれ、四人は転移の光に呑まれた。


 ◆


気がついたときには、すでに囲まれていた。


転移先は、山岳地帯に築かれた魔哭神の奇襲拠点。

辺りは結界に覆われ、逃走経路も、空間魔法の行使すら制限されている。


四方を囲むのは、魔哭神直属の精鋭兵たち――。

神造生命体ではないが、極めて高密度に製造された量産個体たち。

その中心に立つのは、闇の礼装を纏った将級の神兵。最上級個体である。


漆黒の礼装に包まれたその神兵は、燃えるような魔核を中心に、闇の光を放つ双刃の杖を構えた。

声は無機質でありながら、神からの使命を帯びていた。

「反逆者、確認……。ここが貴様らの墓所となる…」


「ふん、我を囲うつもりか……この程度で“死”を望むなよ」

エクリナが杖を振りかざし、《魔盾盤ヴェスペリア》を展開。空間を断ち切るような輝きと共に、足元に刻まれた転送陣が砕け散る。


「……封じるのは……無理だ……」

だがその瞬間、足元の魔力が再び逆流を始めた。

周囲の空間が再びきしみ、破壊されたはずの陣が、まるで“自動修復”するかのように再構築されてゆく。

同時に上空には漆黒の封鎖結界が顕現し、魔力の出口を完全に封じ込める。


「っ……再構築が早すぎる。これは……本気の包囲陣ですね」

ルゼリアが構えながら呟き、背中越しにライナが気配を探る。

「来るよ、王様。あちこちから、槍と斬撃の気配が一斉に……!」


その瞬間、四方から突進する精鋭部隊。

魔導強化兵による高精度な剣術と槍術の連携――!


「我が力、見せてやるわッ!」


ルゼリアの掌に紅蓮の魔力が奔り、《焔晶フレア・クリスタリア》が展開される。

可変式の双晶が多重に重なり、迫る敵を撃ち払う。


「焼け散れ……クリムゾン・ハウリング!!」

螺旋状の炎刃が炸裂し、敵陣を焼き崩す。


一方、ライナが後方から雷光の一撃を放つ。

「サンダーバースト・インパクトッ!」

雷撃を纏った突撃で前衛を吹き飛ばし、即座に二連撃へとつなげる。


「王様、後ろは僕が抑えるよ!」

「頼んだぞ、ライナ!」


ティセラは中央で〈スペルドーム・クレイドル〉を起動し、四人を多重結界で包む。

「耐えて……今、魔盾盤ヴェスペリアの制限解除を準備中……!、ぶっつけ本番ですが……」


 ◆


敵は無尽蔵のように湧いていた。


ティセラが伝える。

「エクリナ!、魔盾盤ヴェスペリアの極大魔法が可能になりました!」

「分かった、反撃だ!」


エクリナは転がる瓦礫を踏みしめ、崩れた地形の中央へと歩を進めた。

エクリナは《魔盾盤ヴェスペリア》に魔力を込め、封印されていた文字列が、音を立てて解き放たれる。


「空間よ、応えよ……我が闇は、いまや形を持たぬ。

時の輪は砕け、次元は沈黙し、記憶の灯さえ掻き消える。

名も残さぬ消滅を――

ここに下すは、魔王の絶対令!

〈アニヒレイト・ゼロ=ディメンション〉!!」


世界が静止した。


一瞬の沈黙の後――

空間そのものが“潰れる”ように崩壊し、敵もろとも拠点全体が闇に呑まれていく。


次の瞬間、全域が光と闇の奔流に包まれ、時空が爆ぜた。

敵の軍勢は影も形もなく消え去り、戦場にはただ沈黙だけが残った。


 ◆


瓦礫と砂塵の中に、立ち尽くす魔王の影が一つ。

「……ふっ、我が名を刻め。エクリナ、魔王であるぞッ……!」

血のような汗が静かに落ちる中、その眼差しにはなお、滾るような闘志が宿っていた。


「エクリナッ!」

ティセラが駆け寄り、〈治癒魔法〉と〈結界魔法〉を同時に展開して彼女を守る。

「大丈夫……ですが、次はありませんね。魔哭神は確実にこちらの存在を“脅威”として認識しました」


「ふむ……ならばこちらも、“本拠”を潰す算段に入らねばなるまい」

エクリナはそう言うと、ゆっくりと顔を上げる。

「全力で叩き潰す。そのための一手を打つ――ティセラ、例の術具の設計に取り掛かれ」


「はい。空間魔法を応用した戦略兵器型の消滅術具。構想は既にあります。“神滅の槍 ”、あの魔哭神を貫く槍にしてみせます! 」

魔王と盟友は、闇の中にあって、さらに深い怒りと決意を燃やしていた。


復讐の焔は、なおも激しさを増してゆく――

それは、神々すら焼き尽くす“破滅”の炎へと変わりながら。

次回は、『8月28日(木)20時ごろ』の投稿となります。

引き続きよろしくお願いしますm(__)m


ここまで読んでくださり、ありがとうございました!

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