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魔王メイド・エクリナのセカンドライフ  作者: ひげシェフ
第四章:魔王戦記~その名はエクリナ~

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54/201

◆幕間:四人の魔装◆

朽ちた研究所の記録をあらかた読み終えたティセラは、才を最大限に使っていた。

これからの戦いのために魔導戦具の修繕と魔装の新造を進めていた。

四人分の装備を描き上げ、最終確認に手を伸ばす。

その指先には、仲間たちの生還を祈る想いが込められていた。


作業に取り掛かるにあたり、ティセラは三人に声を掛けた。

集会場に集まるエクリナ・ルゼリア・ライナ、そしてティセラが円卓を囲んでいた。

机上には図面が四つ並んでいた。乾いた紙の擦れる音だけが、広間にやけに響いた。


「忙しい中すみません。皆の戦具と魔装を整えたくて、集まってもらいました」

ティセラは紙片を手元に揃え、三人に言う。

「構わん、大事なことだからな」

エクリナは微笑みながら返す。


「区切りが良かったので問題ありません」

「気にしないでいいよ!」

ルゼリアとライナも微笑みながら言った。


「ありがとうございます。まずはエクリナからですね……」

礼を言いつつ紙片を見るティセラ。

「エクリナの《アビス・クレイヴ》は特段問題無しでした。入手した《ヴェヌシエラ》はほぼ稼働しますが、極大魔法が封印されてますね」


「うむ、その通りだ」

エクリナは同意する。

魔導戦具である《魔杖アビス・クレイヴ》は、見事に機能を果たし逃亡の際には神の兵のほとんどを撃退した。

ヴァルザの手製というのが、心に引っかかったが贅沢を言うことができなかった。


「今エクリナに必要なのは、新たな魔装です。支給されたローブはただの服なので、エクリナを支える魔装を準備しますね」

「魔法威力向上と自動展開する結界を盛り込んだ感じにしようかと思います。エクリナは無理するので、これくらいは必要かと」

ティセラはエクリナの行動特性をしっかり理解していた。

だからこそ、それを支えるための魔装を考えていたのであった。


「お見通しか……すまぬな、助かるぞ」

エクリナはティセラに微笑み、提案を甘受することにした。

「姿はこんな感じです」

ティセラは図面をエクリナに見せる。

エクリナだけではなく、ルゼリアとライナも覗き見していた。


魔装名《深淵纏装ドミヌス・クロア》。

機能は魔法の威力を高め、さらに自動展開する結界で主を守護する。

黒銀のワンピースを基調に、胸元の紋章が淡く脈動する魔装。

前裾は膝上で切り揃えられ、背には黒と紫のフレア布が重なって“尾”のように揺らめく。

その上に羽織る黒のハーフローブは白銀の装飾を抱き、威容と気品を添える趣向。


「……少し派手ではないか? 装飾が多いような……」

エクリナはティセラを見ながら言う。

闇を纏い、地味な姿が多かったエクリナ。

ティセラの提案には僅かな抵抗があった。


「エクリナは王なのです、威厳ある姿で威圧も大事です!」

「それに機能付与で魔晶や紋様は必要なので、多少派手になるのは仕方がありません」

ティセラは自身の趣味も入っている魔装をエクリナに着せたくて説得する。


「かっこいい! 王さま着てよ!」

ライナが援護射撃をする。

「ええ、まさに王にふさわしいかと思います」

ルゼリアもティセラの味方となった。


「そ、そうか……ならばこれで頼む」

三人に押され、受け入れるエクリナ。

ティセラは満面の笑みであった。

「ありがとうございます! では、次はルゼリアですね」

元気に返事をし、次の議題に切り替える。


「え~と。ルゼリアの戦具は《フレア・クリスタリア》、二つの特殊魔晶で射撃と砲撃をすると……」

「一つは砕かれてますね……」

過去に回収されていた《焔晶フレア・クリスタリア》を確認していたティセラ、現状を伝える。


「ええ、その通りです。《フレア・クリスタリア》が無いと発動時間や制御に影響が出ますので、可能ならば直してほしいのですが……」

《焔晶フレア・クリスタリア》はルゼリアが討たれる際に砕かれていた。

精密射撃・砲撃だけではなく、中長距離からの支援射撃などルゼリアの潜在能力を向上させていた魔導戦具。

戦況を冷静に分析し制圧するルゼリアには必要であった。


「記録術具に設計図はあったので、やってみますね。資材が特殊なので鉱物採取は必要かとは思います」

ティセラは持ち得ている情報をルゼリアに伝える。

「わかりました、ありがとうございます。必要なものがあれば後で教えてください」

ルゼリアは礼を言うと、ティセラに微笑みかけた。


「それとルゼリアの魔装ですが、耐炎重視が良いかなと思ってます。多分、火の粉が舞うので……これまでの服って穴開いてませんでした?」

ティセラは提案しながら、ルゼリアに聞く。

「!? 良くわかりましたね……中距離で攻防を行うと燃えることがありました」

ルゼリアは驚き、それを認めた。


「やっぱり……火傷もしますし対策は必要ですね。エクリナ同様に結界展開もできるようにしますね、姿はこんな感じを考えてます」

ルゼリアに図面を見せた。


魔装名《紅蓮纏装ヴァル・アルディア》。

自動結界と耐炎術式で身を護る魔装。

紅蓮を思わせる赤いロングジャケットに、濃紺の重ねスカートを合わせ、肘上まで覆う布袖がひらめく意趣。

全身を覆うことができる服装は、炎魔法における自傷対策に相性がよさそうだった。


「これは真っ赤ですね……素晴らしい!」

ルゼリアは気に入ったようだった。

「赤毛に紅眼ですからね、魔装も赤が似合うと思って……」

ティセラは見た目も大事とばかりに言う。


「うむ、全てを灰燼に帰す感じで良いな」

「守るための炎だ、うぬに似合う」

エクリナは物騒な褒め方をした。

「おお、派手だね。赤好きのリア姉にぴったりだね!」

ライナはルゼリアの趣向を知っていたため、似合うと認めていた。


「ではこれで進めますね。次はライナですね」

「《グランヴォルテクス》は、恐らくですが鹵獲防止で封印されてますね。封印の解析から開始ですね……」

ティセラは使えるまで時間が掛かると説明する。


「そうなんだ……でも、また振るえるんだよね。お願いねティセラ」

ライナは《魔斧グランヴォルテクス》と成長してきたし、どんな困難も切り伏せ吹き飛ばしてきた。

今や愛着すら湧いた戦具、手放したくはなかった。

「頑張りますね」

笑顔で答えるティセラ。


「それで、ライナの魔装ですが、こういうのを考えてます」

ティセラはライナに図面を見せた。


魔装名《迅雷外套アーク・レゾナンス》。

機動力を重視し、纏う者の稲妻を取り込み肉体を加速させる魔装。

半袖の蒼衣に腰までの小さなマント、掌には半指の戦手袋。

水色の短衣と軽靴が雷光を帯びる。


「おお、動きやすそうだね! 今までローブだったから大変だったんだ、いつもボロボロになるし……」

機動力と腕力で戦場を駆け抜けていたライナ。

全身を覆うローブ自体が合っていなかった。


「”稲妻が力を引き出す”とはどういう意味ですか?」

ルゼリアが仕様を見て聞く。

「この前ライナの訓練を見ましたが、魔力が高ぶると全身から稲妻が走りますよね?」

「あれも魔力には違いないので、魔装に少し吸収させて身体能力を上げようかと思ってます」

ティセラは解説をする。


「どういうこと?」

ライナは理解できておらず聞き返した。

「もっと早く動けるということだ」

エクリナが簡単に説明した。

「王さま、わかりやすい!」

ライナは理解できたようで喜んでいた。


「ティセラはどうするのだ?」

エクリナは確認をした。

「わたしの方ですが、《ソリッド・エデン》を使ってみてわかったのが、出力が足りていないことです」

「結界魔法は魔力の消費が激しそうなので、二基から四基に複製して半自立制御を拡張しようと思います」

ティセラはヴァルザから渡された試作品では不足であると結論を出していた。


「うむ、そうか。方針が出ているようで良かった、ティセラは我らの守護の要だからな」

エクリナはティセラが自身を考えていることに安心していた。

三人を気遣うあまりに、自身を後回しにしていないかを心配していたのであった。


「魔装はどんな感じなのですか?」

ルゼリアは興味ありげに聞く。

「わたしのは魔力効率重視ですので、少し地味ですね」

ティセラは皆に図面を見せた。


魔装名《幻奏礼装シンフォニア・ラピス》。

魔力消費効率を高める白の長衣は、裾や袖に術式の紋様を刻み、薄緑のケープがやわらかに肩を覆う。

足首までの靴を揃えたその姿は、自身を強固にし他者を守護する者となる。


「ほう、堅牢そうだな。自身を守ることは我らを守ることだ、良いと思うぞ」

エクリナはティセラのこだわりを認めていた。

「ティセラに似合いそう」

「どの魔装も素晴らしいものになりそうですね」

ライナとルゼリアも賞賛していた。


来るべき日に備え、ティセラの初めての魔装製造が始まる。

初めての仲間を支え、護り抜くために――ティセラは指先に祈りを込めた。

加筆してたら長くなりすぎたので、幕間として独立させました。

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