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魔王メイドエクリナのセカンドライフ  作者: ひげシェフ
第四章:魔王メイド戦記~その名はエクリナ~

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◆第41話:玩具たちの魔導戦具◆

魔力の嵐が吹き荒れる実験場――

だが、そこにあるのは戦闘ではなかった。


「……ひひっ、いい音だな。骨の軋む音も、肉の裂ける音も、どれも実に芳しい……」


魔哭神ヴァルザは、高座に腰をかけ、指先で空をなぞるように魔法を展開していた。

眼下には、鎖で拘束されたまま、床に膝をつく二人の少女――エクリナとティセラ。

「反応は? ……ふむ、まだ笑わぬか」


無慈悲な光がティセラの背に降り注ぐ。

反撃は禁止。回避も封じられている。

ヴァルザが“そう命じた”のだから。


「っひぁあぁあああああああっっ!!」

「いやっ、やめて……っ、熱い……熱いの、いやぁぁっ!!」


氷と炎の複合魔法が交互に少女の身体を焼く。

結界は許可されていない。防御は存在しない。

ただの“的”として、壊れるまで与えられる苦痛に耐えるだけ。


「吾に抵抗するな。表情と反応だけを見せろ。それで充分だ」

ヴァルザは次に、エクリナへと手を向けた。

「さぁ、吾のお気に入り。今日はどんな声を聴かせてくれる?」

雷撃と斬撃の融合魔法が放たれる。


「……ッ、ぁ……ッ、くぅ……あ゛あああああああああぁぁッ!!」


膝から崩れ、黒焦げた服の裂け目から露わになった肌が赤く爛れる。

「まだ壊れるには早い。……ゆっくり、時間をかけて焦がすのが礼儀というものだ」

治癒魔法が、わざと緩やかに注がれる。

神経が再接続されるその間、再生と痛覚が同時に重なり、声にならぬ呻きが漏れる。


ティセラも、隣で血と涙に濡れながら身体を丸めていた。

息を吸うたび、肋骨が内臓を圧迫する。

それでも、命令には逆らえない。


ヴァルザはゆったりと立ち上がり、手を一度振る。

「……ふむ。そろそろ時間か。実に名残惜しい」


満足げに息をついた後、愛玩していた人形に別れを告げるように、浮遊する魔導術具に命じた。

「こいつらの装備を整えさせろ。今夜、戦地に投入する」


「玩具どもよ。せいぜい良き舞台を踏むがいい。戻ってきたら、たっぷり“続きを”やってやる」

その口元に浮かぶ笑みは、歓喜と狂気の境界にあった。


 ◇


玉座――漆黒と金で構成された巨大な神の間。

エクリナとティセラは、装備を整えられ、ひざまずいていた。


エクリナは漆黒の魔術ローブに身を包み、手には《魔杖アビス・クレイヴ》。

濃紫の杖身に金色の円輪が先端を飾り、中心には深紫の魔晶が脈動していた。

ティセラの背には、輪状構造を持つ光の術具《浮遊式聖印装置ソリッド=エデン》が二基浮遊していた。

白金の輪がゆっくりと回転し、表面を走る光紋が淡い音を立てながら空気を震わせている。


「それをお前達に与える」

ティセラの背で聖印が淡く輝く。未だ不安定なまま、空気を震わせていた。


「エクリナは主戦力。ティセラは補助結界を展開すること。今回の任務は“実戦下における連携反応”の観測を主目的とする」

淡々と宣告するヴァルザの声に、拒否の余地はない。

「異常が出ても構わん。その時は――壊すだけだ」


その日の夜、二人は“戦地”へと送られた。

足元の魔法陣が淡く輝き、瞬きの間に空気が裂ける。

感覚が反転し、城の空気は一瞬で硝煙と血の匂いに変わった。

運命も、自由も、希望さえ持たぬままに――。

次回の更新は、『8月17日(日)20時ごろ』になります。

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