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魔王メイドエクリナのセカンドライフ  作者: ひげシェフ
第四章:魔王メイド戦記~その名はエクリナ~

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◆第37話:血塗られた戦場◆

「……ノワール・ブレイクアーク」


エクリナの指先から黒く染まった空へと魔力が放たれ、巨大な闇の柱が降り注ぐ。地を揺らし、天を焦がし、敵陣は一瞬で塵と化す。

焼け焦げた臭い。地鳴りの残響。

それすらも彼女の心を動かすことはない。


「殲滅完了。戦果、記録」

無表情に呟き、背後に浮遊している”球型の魔導術具”が応じる。

「確認。戦闘記録収録完了。次任務準備中――」


周囲には、まだ震える兵士たちの姿がある。

味方でありながら、誰一人彼女に近づこうとはしない。


「魔王……いや、“化け物”………」

「俺たちを魔法で巻き込む…………迷惑………」

「……人間のまがい物」

低く吐き捨てるような声が、誰ともなく漏れる。


それでも、戦場での彼女の戦果は圧倒的だった。

数百の敵を一瞬で灰に変え、味方をも恐怖で支配するその存在は、

やがて兵士たちの間で、畏れと嘲りを込めて──**“魔王”**と呼ばれるようになった。


公式な階級でもなければ、称号でもない。

だがその二文字は、誰よりも“戦場で死をもたらす存在”としての彼女を象徴していた。



命令が終われば、後は回収される。それが任務であり、存在理由。

だが、その帰還途中。

ふと、足元の瓦礫の影に、何かが転がっているのを見た。

血塗れの人間の手だ、小さな、小さな手。  

戦場に似つかわしくない白いリボンが、その指に絡まっていた。


「…………」

一瞬だけ、エクリナの瞳に揺らぎが生まれる。

まるで、そこに“何か”を見出そうとするかのように。


だが、それも一瞬。

強制転移される――

魔導術具の音声と共に、視界が暗転する。


その瞳に宿った微かな揺らぎも、次なる命令の前には意味をなさない。

魔王は、ただ機械のように“神の城”へと帰還するのだった。

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