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魔王メイド・エクリナのセカンドライフ  作者: ひげシェフ
第三章:静穏と影の狭間

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34/201

◆第30話:仮面の影、浮上する真意◆

大地を割るような轟音と共に、エクリナと黒騎士の戦いが激しさを増す。

闇の奔流と斬撃が交錯し、空間すら悲鳴を上げる。

「――我を狙う愚か者よ。我が闇に呑まれるがいいッ!!」


〈スペース・ランス〉が放たれ、空間圧縮の魔槍が黒騎士を貫かんと迫る。

しかし、黒騎士はその場で跳躍し、双剣で透明な槍を切り裂いた。


「貴様……傲慢……ここで断つ……」

「その覚悟、良し。我が“王”としての威光、思い知らせてやろう」


刃と魔力が激突し、空間が歪む。

エクリナは空間転移で背後に回り、闇の魔力弾を連射。

黒騎士はそれを双剣で受け止めながらも、空中で回転し反撃に転じる。


「シャドウ・グラトニー、絡め取れ!」

「喰らうがいい、シャドウ・バレット!」

黒騎士の足元に、闇へと誘う大きな顎が開く。

黒い手が地中から伸び、脚へと忍び寄って絡みついていく。

傀儡の騎士の機動力が、じわじわと奪われていった。


ダン!ダン!ダン!——

同時に、二十発の闇の魔力弾が展開され、一斉に射出される。


兜の奥の目が揺れる。

双剣を操り、連弾を切り伏せていく。

バシュッ、バシュッと、幾度も鋭い音が鳴り響いた。


〈シャドウ・グラトニー〉は飲み込もうとするが、黒騎士が地を踏み抜く。

亀裂が走り、闇へ誘う顎は霧散した。


「……足りんな……モットだ……」

たどたどしい発音ながら、その声音にははっきりとした挑発が滲んでいた。


「ほう?」

「ナハト・シンフォニア、ディメンション・スライス!」

複数の闇刃が舞い、幾つもの空間断絶の刃が四方へと放たれる。

そのうち二条が、黒騎士を正面から薙ぎ払わんと迫った。


カキンッ、カキンッと、黒騎士はそれらを弾き返す。

軌道を読み、魔力を感知し、不可視の刃すら捌いてみせていた。

「こんな……ものか……」

黒騎士から声が漏れる。


「そんなわけなかろう?」

「ノワール・ブレイクアーク!」

空より、闇の爆撃柱を多数撃ち下ろす。


躱すことができないほど広範囲の攻撃。

黒騎士は双剣を重ね、渾身の力で大きく振り抜く。


魔力を纏った剣閃が飛び、闇柱にぶつかった瞬間、ドオンと爆発が巻き起こる。

それを一本一本、確実に叩き落としていく黒騎士。

相当の手練れであった。


戦場に噴煙が巻き起こる。

黒騎士は一点を見つめていた。


「よくぞ抑えた」


その視線の先――エクリナは、すでに次の極大魔法の詠唱に入っていた。

その詠唱は、間もなく完了しようとしていた。


「——————運命すらも一つ残らず、焼き尽くしてみせよう……!」

エクリナは魔力を収束し、対軍団戦術魔法を発動する。


「ディア・エクリプス・サンクション!」


黒き月が召喚され、戦場の中心――黒騎士と傀儡兵の密集地点を包み込むように重力が反転。

巨大な力場が敵陣を浮かせ、逃れる暇もなくその全てを術の核へと吸い寄せる。

エクリナの詠唱を聞いていたルゼリアとライナは既に退避していた。


そして、超密度の闇光線が降り注ぎ、空間ごと爆裂する――。

戦場が一度、沈黙に包まれた。


数多の下級兵が消滅し、かつて草原だった大地は抉れ、無残な姿を晒していた。

広範囲に煙が立ち上っている。


だが、その黒煙の中――姿を現したのは、無傷の黒騎士であった。

エクリナの放った闇光線は、確かに直撃していたはずだ。

だが、そのほとんどが鎧の表面で「何か」によって屈折し、逸らされていた――と、エクリナは感じ取る。


「貴様……を討つ……それが……使命……」

言いながら、ゆっくりと向かってくる黒騎士。


「ならば来い、黒騎士よ。我が闇で、貴様の執念ごと消し去ってやろうぞ!」

再びの激突。

斬撃と魔法が交錯し、宿ごと戦場が揺れる。


――その最奥、ティセラは《ソリッド・エデン》に更なる魔力を注ぐ。

結界はさらに強化され、民間への被害は一切ない。


「エクリナ、皆……どうか、無事でいてください……」

静かにそう呟くその眼差しは、誰よりも冷静に戦局を見据えていた。

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