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魔王メイドエクリナのセカンドライフ  作者: ひげシェフ
第三章:静穏と影の狭間

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◆第29話:逆巻く運命の縁(えにし)◆

戦場の後方――そこには、戦局を支えるもうひとつの戦線が存在していた。


ティセラの展開した〈浮遊式聖印装置ソリッド=エデン〉により構築された複合結界〈ミメシス=アークレイ〉が、宿を守る最終防衛線として機能していた。空間に浮かぶ魔導陣が、次々と位置を変えながら敵の侵攻を攪乱し、魔力の波動を緻密に制御している。


「第三防壁に反応。補強型傀儡、進行中……5秒後、突破の恐れあり」

ティセラは冷静に魔法陣の再展開と構成術式の補強を行う。複雑な制御を一手に担いながらも、その瞳には一切の迷いがなかった。


「了解、ティセラ。お前の背中は俺が守る」

その声に応じて、ティセラのすぐ傍に立つセディオスが《魔剣アルヴェルク》を構えた。戦場の最前線を駆ける仲間たちとは異なり、彼は“要”を守る者としてこの地点を選んでいた。

「……懐かしいな、この感覚。剣を振るう理由が、今は確かにある」


鈍く疼く魔核の痛みを無視して、迫る傀儡兵に斬撃を見舞う。一撃ごとに正確に関節を砕き、核心へと刃を届かせる。

「動きは単純だが、耐久性が異様だな……だが、通すわけにはいかない!」

数体が一斉に斬りかかるが、セディオスは間合いを読み切り、カウンターの斬撃で迎撃する。

爆風と衝撃波が敵を薙ぎ、後方からティセラが援護射撃を行った。


「援護します」

「本当に助かる。……お前の魔導具、やっぱり精度がすごいな」

「当然です。私は“仲間”ですから」


その言葉は静かだが、胸の奥まで届く力を持っていた。



一方、戦場の中央では、ルゼリアとライナが驚異的な連携を見せていた。


「はあああッ、ボルト・ラッシュっ!!」

雷を纏ったライナが高速突進、斬撃の軌跡に雷光を奔らせて敵を一掃する。

跳び駆け抜けるその身体は、まさに雷神の如し。


「双晶形態へ移行、インフェルノ・チャージ!」

ルゼリアが《焔晶フレア・クリスタリア》を炎の双槍として展開し、空より灼熱の火炎を降り注がせる。

絶妙なタイミングで連携する攻撃は、傀儡兵の耐久すら打ち破っていった。


「右の集団に偏りがあります。ライナ、そちらを」

「うん、任せてっ!」


雷と炎――二人の少女が描く戦場の輪舞は、見る者すら圧倒するほどに美しく、そして苛烈だった。

しかし、敵もまた無尽蔵に現れる強化型傀儡であり、次第に包囲の気配を見せ始める。


「囲ませるつもりだ……! リア姉、火力を集中させて!」

「了解。――カルミナ・スピラ、広域展開!」


ルゼリアが上空から螺旋状の火炎を放射、敵の動きを封じる。ライナは《魔斧グランヴォルテクス》を"

雷殛槍刃(スピア)形態”に変形させ、詠唱を口にした。


「響け、怒れる雷よ――、空に吠え、大地を裂け。纏いし魔雷、我が刃と成りて、罪を断て。忍ぶな、赦すな、轟け、裁け――グラン・ヴォルトクラッシュ!!」

雷魔力を圧縮・蓄積し、対象に向けて光速で突貫する一撃。

大地を震わせる雷の裁きが、敵陣を一気に崩壊させる。


その後方――戦況全体を俯瞰するエクリナの指示が飛ぶ。


「左側、包囲の動きあり。ルゼリア、補足を。ライナ、内側から突け」

「承知!」

「了解っ!」


“魔王一家”の連携は完璧だった。誰一人欠けることなく、役割を果たし、互いを支え合う。


そしてその戦場を、誰にも気づかれぬまま見つめていた存在が一人――。

影は、闇に溶けるようにその場を離れた。

(……情報は十分だ。次は、“核心”に触れさせてもらおう)


戦いは、まだ序章に過ぎなかった。

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