表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王メイド・エクリナのセカンドライフ  作者: ひげシェフ
第十章:遠き地での出会い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

247/247

◆第231話:迎賓館への移動◆

アーク駅構内で友好を結んだ両使節団。

拍手に包まれ、笑顔が絶えなかった。


しばしして――

拍手の残響が石に折り返し、足音の律動へ収束する。


「早速ではあるが、会議をしたいと考えているのである」


自治長のリンデが、ヴァレンシアに申し出ていた。

三本角の金輪が微かに鳴り、決意の震えを隠す。


「ええ、日程が限られてますからね、是非お願いしますわ」


ヴァレンシアは承諾し、促す。

リンデとヴァレンシアは両隣で歩き、会議室へ向かう。


各代表の後ろに付き従うアーク使節団とフォルネア使節団。

厳粛の場ゆえに会話は、リンデとヴァレンシアだけであった。

互いに柔和な顔で、何かしらの雑談をしていた。


ザッ! ザッ! ザッ! ザッ! という足音だけが響く。

誰も咳ばらいすらしない。空気は磨かれた刃のように静まる。


その最中、エクリナは隣のコルネをちらりと見た。

泣き晴らして目は赤く、涙の跡がまだ見える。

少し前に、相棒『ヴォトカスト』を潰した手前、さすがに気に病んでいた。


(う~む、制圧しなければならんかったからな……)

(まさか、あのゴーレムが破壊されたことで泣くとは思っておらなんだ……余程大事なものだったのであろうな……)


コルネは小柄ながら、強い警備隊隊長であることを示すよう胸を張り、堂々と歩く。

先刻泣いた姿を忘れさせる、見事な出で立ちであった。

踵の打音が前列と揃い、隊の呼吸が戻る。


アーク自治区警備隊隊員たちも隊列をなし、同じく堂々と付き従う。

装いはボロボロでも、視線は鋭い。

破れた装甲の縁に乾いた血が筋を作る。


(機会があれば、少し話すか……)

コルネを一瞥し、エクリナは思う。


フォルネア使節団は技術者集団ということもあり、エクリナへの畏怖は簡単には拭えない。

なるべく気にしない者、なお恐れる者――様々であった。

理で測る者ほど、規格外には沈黙する。


ガンゴだけが、堂々と正面だけを見て歩いていた。

副代表として行進の先頭に立つ、その歩みは立派だった。


その横には『潮刃隊』が見守るように行進していた。

会議室に入るまでが仕事の彼らは、気を抜かず警戒を怠らない。

アーク使節団の行動を目の当たりにし、襟を正していた。


ナギロは先頭に立って隊を率いる。

隣には初めての人属の友人ガンゴ、少し前には護衛対象のヴァレンシア。


(この身に代えてでも、己が指令を果たしますぞ……)


指の節が鳴り、柄巻が掌に馴染む。

命を賭してでも守る覚悟はできていた。その程度には心を許していた。

それは覚悟を見せた二人への敬意にも見えた。


 ◇


隊列が歩みを進める。

既にアーク駅を出ており、豪奢な建物が見えた。アーク自治領の迎賓館らしい。

扉を開け、中へ入る。

樹脂香と石灰の匂いが混じり、客人のための冷気が肌を撫でた。


「アークは来賓が多いため、駅近くに迎賓館を作ったのである。少々人数が多いゆえ、まずは少数で会談させて頂きたいのである」


リンデがヴァレンシアにと申し出る。


「ええ、そうですわね」

ヴァレンシアの人選は最初から決まっていた。


「ガンゴ、エクリナさん、ティセラさん、同席をお願いしますわ」

三人は頷く。


「シトラス、いらっしゃい」

呼ばれたのはヴァレンシアの女性秘書だった。


「残った使節団のお世話をお願いね」

ヴァレンシアは秘書に指示する。


「かしこまりました、オーナー」


シトラスは会釈し、フォルネア使節団のもとへ向かう。

控えの茶と傷薬について、目配せ一つで指示を飛ばす。


「部屋への案内は、潮刃隊の中隊長がいたす」

リンデが言う前に、ナギロが告げた。


「……任せるのである」

信用されていないのを受け入れ、リンデは承諾した。


「ガゼ、フォルネア使節団への案内を頼むぞ。隊を半分連れていけ」


ナギロは冷徹に指示する。

ガゼは「はっ!」と言い、フォルネア使節団を護衛しながら別室へ案内し始めた。


「イーサリ、コルネ、ついて来るのである。それとコルネ、こちらは警備隊を待機させるのである。外の待機部屋に行かせるのである」


リンデはコルネに告げる。


「爺さん! それじゃあ……いや、何でも……ない」

エクリナを一瞥して、指示に従った。


「皆、外で待機してくれ。後で、うちも待機部屋に向かう」

警備隊は忠実に従い、部屋を出ていった。


「お待たせした。互いに準備が出来たようであるな」

先導し始めるリンデ。


「会議室内には、ブロム、シルヴァという参加者が待っているのである」

歩きながら、アーク側の会議参加者を伝える。


「承知しましたわ、リンデ殿」


ヴァレンシアはリンデの隣におり、ガンゴ・エクリナ・ティセラが続く。

ナギロを先頭に残りの潮刃隊が後を追った。

リンデの後ろにはイーサリとコルネがついていく。


迎賓館の部屋に向かう。

石柱と樹柱が調和した造りで、自然を感じさせる。

床は石造りで、歩くたびにカツン、カツンと鳴る。


ようやく、会議室の前に到着した。


「ここである」


リンデが扉を開けると、低身長だが筋骨隆々の髭の男ブロムと、蔓を纏った背の高い木人シルヴァが立っていた。

扉を開けたリンデに目をやり、その後ろを見る二人。いつもの空気ではないと感じていた。


ナギロが先に部屋に入る。

「失礼、拝見いたす」とだけ言い、安全を確認する。


窓・梁・床縁、順に三点を撫でるように目で掃く。

潮刃隊隊長の、いつになく物々しい素振りに二人は驚いた。

いつもは出で立ちに合わないほどの柔らかさを見せるのだが、その気配はなかった。


「……失礼いたした」

ブロムとシルヴァに礼をし、部屋を出る。


「リンデ殿、安全であること確認いたした。よき会議ができると良いな」

ナギロはリンデに告げた。


「ヴァレンシア殿、無事に会議室まで到着いたした。小官と潮刃隊は扉の外で待機しておる。何かあれば駆け付けいたす」


ナギロはヴァレンシアに告げる。


「護衛の任、お疲れ様です。何かあれば頼らせて頂きます」

ヴァレンシアはナギロに礼をした。


「さあ、こちらである」


リンデがヴァレンシアたちを促す。

ヴァレンシアに続き、ガンゴ・エクリナ・ティセラが入る。

ほぼ同時に、リンデ・イーサリ・コルネも部屋に入った。


迎賓館の大会議室。

ようやく人属と亜人属の技術師団代表が揃った。

椅子脚が石を擦る音が、最後の一つで止む。

会議が始まろうとしていた。


次回は、『4月12日(日)13時ごろ』の投稿となります。

引き続きよろしくお願いします。


本日もお付き合いいただきありがとうございました!

引き続き、評価・ブックマーク・感想で応援いただけると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ