表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王メイド・エクリナのセカンドライフ  作者: ひげシェフ
第十章:遠き地での出会い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

236/247

◆第221話:初めてのお使い◆

樹が生い茂り、鉄の建物が立ち並ぶ区画。

地中へ続く金属管が、時おり低く異音を鳴らす。

霊機自治区アークの一画にそびえる異様な研究棟、『マナ』に関する研究が行われている。

警戒用の術具が張り巡らされ、魔導銃を持った亜人が巡回をしていた。


その建物へ忍び寄る影があった。

氷結銀色の団子髪を二つ結った少女と、淡い緑の短いサイドポニーテールの少女。

セルドリカとレーテシアだ。主リゼルの指令でアーク内部へ侵入していた。


「えれぇ厳重だな……」

「これなら期待できるかも……」

氷風コンビは警戒しながら進む。


「登るぞ」


セルドリカは囁くと、氷の階段を瞬時に形作り、建屋二階の窓へと接続。

指で”チョイチョイ”と招き、先に駆け上がる。

レーテシアは無表情のまま頷き、後へ続いた。


窓枠をこじり、音を立てぬよう慎重に開けるセルドリカ。

「こういう細かい仕事は苦手だ……」

殴る・蹴るが得意な少女は、低く愚痴る。


「あたしも嫌い……」

戦うのが好きなレーテシアも、淡々と同意。


中は仮眠室らしく、ベッドが整然と並ぶ。

「お目当てはどこだ? ……よっと」


セルドリカは腰の魔導収納鞄からコンパスを取り出す。


「ネヴァ言ってた。……そのコンパス、濃い『マナ』を検知してくれるって」

レーテシアが見つめながら言う。


「お、確かに向いてるな」

「行こう」

二人は出口へ。


「見つかったらどうする?」

セルドリカが小声で問う。


「もちろん口封じ♪」

無表情で明るく言う。

「はは、だよなぁ!」

息は合っていた。


 ◇


回廊を、音なく滑るように進む二人。

右へ、左へと角を抜ける。


「意外と誰にも会わねえな……」

「少し残念……」

二人の想いとは裏腹に、侵入は順調そのもの。


針が示す方角へ、スッ、スッと脚を運ぶ。

やがて、開いたままの扉。二人は迷わず内部へ入る。


硝子製の大きな保管術具が林立し、樽型の金属器へ配管が伸びている。

周囲には白衣の亜人が数名。壁際には魔導銃を抱えた警備の影。


「おお、ようやく目的地のようだな」

セルドリカが口角を上げる。

「ネヴァみたいな服の人がたくさんいる」

レーテシアは白衣を見てぽつりと言う。


「さて、どうするか……」

「あの植物人間、一人で奥に移動するみたい……」


「んじゃ、付いていくか!」


二人は白衣の植物人間——ドライアドを尾行。

気配を消し、角ごとに壁へ溶けるように身を寄せ、距離を保つ。


やがて、ひときわ大きな扉。

ドライアドは鍵を差し、開錠して中へ。


「入ったな……」

「どうする、入る? 待つ?」


首をかしげて聞くレーテシア。


「ここまで来て乱闘はメンドーだ。待つ」

「……分かった」

指令最優先で判断を揃える。


しばらくして、ドライアドが部屋から戻ってきた。

施錠をしこちらへ向かってくる、元の部屋に戻るようだった。


「む。セルドリカ、上に飛ばす」

「頼むぜ」


レーテシアが風で二人をふわりと上昇させ、

天井近くに張り付くと、セルドリカが氷で固定。


「……つめたい」

即座に愚痴るレーテシア。

「我慢だ」

短くたしなめるセルドリカ。


ドライアドが角を曲がり、保管術具の林立する部屋へ戻る。

通り過ぎるのを待ち、――パキン、と氷が外れて二人は静かに着地した。


先ほどの扉へ――


「さてと……おらぁ」


ドアノブを凍らせ、へし折るセルドリカ。

コン、と軽く叩けば、扉は内側へ開く。

中は紙束と、背表紙の硬い専門書がびっしり。


「当たり。良かった」

レーテシアは無表情のまま、小さくパチパチと拍手。


「さっさと回収しようぜ……なあ、レーテシア?」

「『マナ研究情報?』って、どうやって探すんだ?」


「……どうしようか? セルドリカ」


「「……」」


二人は顔を見合わせる。

初めてのお使いを言い渡された少女たちは、紙片の山の前で……立ちすくんだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ