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魔王メイド・エクリナのセカンドライフ  作者: ひげシェフ
第十章:遠き地での出会い

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◆第220話:海路行く先で◆

外海を疾走する《魔導船フォルネア号》――目指すは海門港ペラギア。

左手には、うっすらと人属領の陸影。数刻も走れば、神領の海域へ入る。

魔哭神ヴァルザが健在だった頃は、水棲の大型生物を放ち、亜人属との国交を断ち切っていた。

百年余を経て、ようやく航路は開かれたのだ。


そんな中でも、一行は船旅を楽しんでいた。

潮風が頬を撫で、揺れの少ない快走が続く。


「いい風だな……」

船首甲板で風を受け、水平線を眺めるエクリナが、自然とこぼす。


「今度は皆と乗りましょうね」

家族を思い、ティセラ。

「ああ、必ずな」


しばしの静けさを破って、老婆が声をかける。

「無事に出航できましたし、昨日の続きをお話ししようかしら」

昨日は長丁場になり、説明を一度切っていた――ヴァレンシアは移動中に話を進めたかったのだ。


「ああ、そうだったな。まだ続きがあるんだった」

ガンゴはつるりとした頭をかき、思い出したように肩をすくめる。


「お二人には関わる内容でもあるし、お茶でも飲みながら話しておきたいわね」

ヴァレンシアが穏やかに促す。


「うむ、承知した。新しい茶葉を手に入れたのだ、ついでに淹れてみよう」

エクリナが頷く。


四人は甲板を離れ、応接室へ。


 ◇


応接室――

エクリナは昨日手に入れた、ダージリンの準備を始める。

部屋には水差しと、魔導式の加熱ポットが一つ。魔晶を動力に温度設定もできる優れ物だ。


「昨日の宿にもあったが、こういう便利な術具は、もう容易に入手できるのだな?」

エクリナには珍しくないが、世間一般ではまだ新しい。


「まだまだ費用がかかるから、平民層に行き渡るのはもう少しかかるわね」

ティーセットを整えながら、ヴァレンシアは言う。


「今は貴族ども中心に売ってるから、出回らんのだろ?」

ガンゴはティセラの出した菓子を皿に並べつつ口をはさむ。


「それは仕方ないわ。高級品なのよ? 安価にするには、まず貴族様に出資してもらわないと」

「目先だけ見ていては発展はないわ」

ヴァレンシアがキリッと睨む。


「まあまあ、いいじゃないですか。いずれ普及するのですから、便利になるのは良いことですよ?」

ティセラが間に入り、場を和らげる。


「ふん、分かっとる。貴族優先ってのが性に合わんだけだ」

ガンゴは腕を組んだ。


エクリナはやり取りを聞きながら、ティーポットに湯を落とす。

葉がゆっくり開き、芳醇な香りが部屋に満ちていく。


「そろそろ飲み頃だ」

カップを並べ、頃合いを見て注ぐ。会議の支度は整った。


香りをひと息、ヴァレンシアは一口啜り、切り出す。

「今回の依頼、引き受けてくれてありがとう、エクリナさん、ティセラさん。改めてお礼を言うわ」

「ガンゴ殿には世話になっているからな」

エクリナも茶を口に運ぶ。


「『人造魔核』の続きだけを少しだけ。――実はこの技術は、滅びの神の技術を”盗用”して発展したの」

「アークは『神領』に隣接していて、向こうの拠点兼研究所が付近にあるそうで、そこからの入手と伝え聞いているわ」


「ほう? では、戦で勝ち取ったとも言えるな。亜人がそこまで強いとは知らなんだ」

人属領担当のエクリナは、亜人属戦線の詳報は知らない。


「もともと人間より身体能力に優れる節がありますからね。序盤はそれなりに優勢――ただ、滅びの神は人間にご執心。こちら側の損耗が苛烈でしたわ」

ヴァレンシアは扇を口元へ。


「あの段階で”神”ではなく、別の何かだったからな……」

エクリナは小さく呟く。


「一時は亜人属が押しましたが、結局は盛り返され、いまは『神領』に戻っています」

ヴァレンシアは肩を落とし、続ける。

「それで、聞きたかったの。『人造魔核』について――何か知らないかしら? ”神の技術”流用という点が、どうにも気になって」


「どう思う、ティセラ?」

エクリナが視線を向ける。


「う~ん……『人造魔核』自体、初めて聞きました。情報はありませんね。ただ、遺跡都市への襲撃と何か関連がある気はします……憶測の域を出ませんが」

ティセラは慎重に言葉を選ぶ。


「そう……着いてから判断するしかなさそうね」

ヴァレンシアは結論を保留にする。


「確かにキナ臭い。触れてはならん技術――その可能性は十分ある」

スコーンをかじりながら、ガンゴはヴァレンシアの勘に頷いた。


「お伝えしたいことは以上よ。明日の朝までは、のんびりして頂戴」

笑顔で告げた後、ヴァレンシアもスコーンを割り、口へ運ぶ。


技術都市フォルネアが誇る魔導術具士の二人は、内心で思案を続けていた。

亜人領との技術国交再開――その道を、《人造魔核》が阻むのではないか。

その答えを、彼らは遠くて近い未来に、ふいに垣間見ることになる。


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