表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王メイド・エクリナのセカンドライフ  作者: ひげシェフ
第九章:闇に芽吹く信頼

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

223/251

◆第209話:無敵の獅子◆

人造生物が住む部屋。

獅子は腹の横から大刃を伸ばし、疾駆していた。

――白衣の人々が消えた日を作り出した、同じ魔力波長を持つ者を裂くために。


リゼルへ迫る刃。

獅子は立ち止まった得物を目掛け進む。


間もなく切り裂こうとして――研究所の最奥で「ドオォォン――!」と何かが倒れる音がした。

次の瞬間、広間は暗転する。闇が訪れ、すべてを呑む。


流石の獅子も対応できず、一瞬だけたじろいだ。

暗転と同時に、空気を縛っていた圧が消えた。


リゼルはその消失だけで悟る。――魔封じが、死んだと。


やがて、壁の魔導ランプが――残光のようにふたたび灯り始める。

視界を確保した獅子は見渡す――敵がいない。


すぐに気づく。頭上だ。

暗転の隙に、リゼルは空間魔法で階段(足場)を組み、頭上へ逃れていた。


「実に運がいい……」


空中のリゼルは嗤った。

ここで果てるはずの身を、動力停止が拾い上げていた。

ルゼリアとライナは知らぬまま、仇敵を助けていた。


獅子が砲塔を頭上へ向ける。

その死角を、セディオスが駆け上がった。


「フレア・サンダリアス!」


斬撃に爆雷を載せ、対象を焼き焦がしつつ感電させる一撃。

大剣に赤熱の焔と紫電が絡み、着弾点から爆ぜる雷鳴が迸る。


炎雷の魔法剣技の衝撃が獅子の背を打つ。

巨体がわずかに撓む。

セディオスは、リゼルを見事に囮にし、獅子に一撃を加えていた。


同時にリゼルは確かめる。

魔法を使っても魔核は痛まない――やはり、魔封じは止まっている。


「セディオス、好機です!」

頭上からリゼルが叫ぶ。


「分かった――ヴァルトクリード!」

その声に応じる。


大剣に雷を帯電させ、そのまま獅子の背へ突き立てる。

刺突と同時に電撃波が内部を駆け巡る。

《アルヴェルク》の魔晶は、魔力消費が“元の感覚”に戻っていた。


獅子は「ギャオォォォ――」と吼え、三又の尾で背後に乗る者を迎撃する。

セディオスは、キン、キン――と火花とともに受け流す。


その隙に改めて頭上のリゼルへ巨砲を向け、砲弾を吐き出す。

ドン、ドドン――


バキンッ!――と、リゼルが立っていた“空間足場”が砕け散る。

一足先に跳んだリゼルは、《レギオン・セファル》を翻す。


「スペイシャル・グラインド! 巻き込まれなさい!」


獅子の周囲に多重螺旋の空間壁が立ち上がる。

圧縮、収束、捻じ曲げ――空間ごと押し潰す必殺の檻。


「なっ! リ――」


セディオスが抗議を発するより早く、リゼルは〈クロノ・シフト〉を唱える。

止まった二秒の世界でセディオスの背後へ転移し、獅子の背から離脱する。


――時間が動き出す。


「——ゼル、お前!」


続きかけた抗議の先に、誰もいない。

当の本人は、横にすまし顔で立っていた。


「巻き込んでも良かったのですがね♪」


涼しい顔で囁く。

本領を取り戻した狂信者は、隣の渋面を横目で見た。

セディオスは睨み返す――とはいえ、共闘はまだ続いている。


獅子の周囲で、空間の螺旋が回転を上げ、周囲そのものを圧砕していく。

轟音の中で、獅子の眼窩の魔法式が目まぐるしく走り――


「ガオオオオォォォォォォォォォン!!!」


と、ひときわ大きな咆哮。

衝撃波が空間壁の位相を乱し、蜘蛛の巣状のヒビが走る。


「ガオッ! ガオォォォォォォォン!!」


さらに吼え、走り回りながら側腹の大刃で螺旋壁を切り刻む。

砕ける、砕けていく――必殺の囲いが粉砕されていく。


「咆哮でわたくしの魔法を破壊ですか……本当に規格外な……」

リゼルは歯ぎしりをし、苦虫を噛んだ顔をしていた。


「はは……こりゃ本格的にまずいな」

セディオスは《双詠大剣アルディス》を握り直す。


人属と亜人属の“集大成”。

その“無敵”を前に、なお二人は立つ。

――獅子の魔法式が、さらに加速していく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ