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魔王メイド・エクリナのセカンドライフ  作者: ひげシェフ
第九章:闇に芽吹く信頼

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◆第207話:拮抗する戦場◆

大樹が支配し、蜘蛛型・石板型・蝙蝠型・大蛇型が蠢く。

その床に、紅い魔法陣が咲いた。中心に立つのは紅と蒼の姉妹。


ルゼリアが構築した『陣地』は、陣内に散る魔晶から魔力を抽出して自らの糧へと転じる。

これまで蓄えた知識と魔術師としての本領を発揮し、即興の魔法式を編んだ。


「凄いね、今なら高位魔法くらいなら撃てそうだよ!」


魔力封じが続く中、ライナの魔核に魔力が流れ込む。

放出する魔力を陣地から調達、ルゼリアの見事な策だった。


「なるべく陣地内で倒してください、それで魔晶の補充になりますから」

「ただし――この円から出れば効果は切れます。離脱は気を付けてください」


円の内側だけ、魔力の流れが“呼吸”のように整っていた。

ルゼリアが注意事項を告げ、二人は頷き合う。


「じゃあ――」

「反撃開始です!」


陣地に侵入してくる警備術具を、背中合わせのまま軽やかに切り崩す。


「スパーク・ダンス!」

「インフェルノ・チャージ!」


倒れた骸の魔晶が紅に脈打ち、陣地へ魔力が還流する。

討てば討つほど、力は満ちる。


白き巨大魔晶を抱えた大樹が、ポオォォォオン――と嘶く。

呼応して群れが寄り、波が厚みを増す。


「クロス・ライトニング・カット!」

「カルミナ・スピラ!」


十字の雷が装甲の継ぎ目を裂き、紅蓮の渦が残骸ごと巻き上げて叩き落とす。

次々と迫りくる警備術具たちを打倒していく二人。


ポッ!ポッ!ポオォォ――――!!!

何かを訴えるように鳴く大樹。

根である大管で二人を襲う。


「サンダーバースト・インパクト!」

「バーニング・デクリエイト!」


ライナは雷撃を纏って突撃する、ルゼリアはこぼれた大管へ一点集中の熱線を放つ。


大管は蹴散らされ、焼け落ちる根もあった。

押している。――だが、攻勢は永遠ではない。


陣を維持するにも魔力は要る。

魔封じが支配する空間で、それに抗う陣は拮抗を強いられていた。

陣地の維持と高位詠唱を両立するルゼリアの肩が上下し、額に汗が滲む。

紅い陣の縁が、呼吸のたびに薄く欠けていく。


「……はぁ、はぁ……早めに決めなければ……」


胸を押さえ、息を切らし始めるルゼリア。

額から汗が流れだす。


「頑張って、リア姉!」

負担を負っている姉分を気遣うライナ。


短期決戦を迫られる姉妹。

大軍に押され、戦況も拮抗する。


保管術具を守る大樹は本能で戦う。偽りの樹木らしい戦い方で。

根――大管がうねり、数を増やして前線を押し返す。


それを弾き防戦一方のルゼリアとライナ。

紫電をほとばしらせ、火炎を撒き、迎撃を続ける。

大樹はポオォォ!ポオォォ!と嘶き続け、警備術具の群れを指揮する。


それは本命を隠すために、意識をそらすために。

そして、ポオォォオオオ――!!! と大樹は一段と大きな声で嘶いた。


突然、地鳴りが発生する。――震源は二人の足元。

「「――っ!」」


バキバキバキ、ドゴォォン―――—―!

紅い陣の“要”を狙って、大管が石床を砕き幾条も突き上がった。


「そう来ましたか!」

「うわぁぁっ!」


二人は弾かれ、宙へ。

陣が崩れ、魔力の供給がぷつりと断たれる。


保管術具は強かだった。

奸計を敷き、邪魔な陣地を床ごと破砕した。

侵入者が衝撃で浮かび上がる――大樹は即座に追撃の横薙ぎを見舞う。


鞭のようにしなる大管。

ルゼリアは壁へ叩きつけられ、ライナが重なるようにぶつかる。


「ぐっ……!」

「かはっ!」

肺から空気が絞り出され、視界に白が散った。


さらなる追い打ち。大樹は真正面から突き――終わらせに来る。

シュバッ、シュバッ、シュバッ――

二人は鉤爪と大斧で必死に逸らし続けるが、刺突は壁をも抉り、反響衝撃で身体が痺れる。


猛烈な刺突の雨。

弾いた刺突は壁を穿ち、ひびが幾つも走る。



そして――壁が砕けた。

慣性のまま、二人は隣室へと雪崩れ込む。


「がぁっ!」

「くぅぅっ!」


転がり、床に横たわった。

偶然が味方し、隣の部屋に逃れることができていた。


大樹は開いた破口から、逃がすまいとじわじわ距離を詰めてくる。

――陣地は壊した、もう存在しない。

紅と蒼の息が、荒く重なる。

蠢く偽りの樹木の根が這い寄ってくる。


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