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魔王メイド・エクリナのセカンドライフ  作者: ひげシェフ
第九章:闇に芽吹く信頼

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◆第205話:獅子型の人造生命◆

獅子型の人造魔獣は、侵入者を見据えた。

「ガオオオォォォォォン――—―――!!」

威嚇の咆哮。髪が逆巻き、空気そのものがびりびりと震える。


「……動かないんじゃなかったのか?”少年”」

「……聡明なわたくしにも間違いはありますよ、”おじさん”」


互いに一言、火花を散らし横目で睨む。


セディオスは魔剣を抜いて構え、リゼルは杖剣の切っ先を獣へ向ける。

「で、どうする? まずは足から行くか?」

「王道ですね。では、わたくしは左足へ行きます!」

言うが早いか、リゼルは駆けた。


「なっ、あいつめ!」

「利き手じゃないことを願うぞ……」


多くの生物は“右利き”。不利な側を、さりげなく押し付けていく狂信者。

セディオスは《魔剣アルヴェルク=グランドエッジ》のみを握り、右足へ回り込んでいく。


二つの影が迫るのを認め、獅子は右前足を大きく掲げる。

「やはりそうだよな! グローース!」

セディオスは走りながら身体強化を重ねる。


上がった足が振り下ろされる――距離はまだ遠い。

(まだ距離があるのに……まさか……)


爪先から、鎌鼬のような風刃が三つ射出された。

真っすぐにセディオス目掛けて飛んでいく。


「ちぃっ!」


セディオスは一歩沈み、《アルヴェルク》で受け、風刃を裂き、押し返す。

埋め込まれた魔晶が微かに煌めいた。


(あれは、魔力吸収か? 厄介な剣でしたか……)

横目で見抜き、冷静に捉えるリゼル。


「クロノ・アシュータ、ディヴィジョン・ブレイド」


敏捷・思考を加速。さらに《律創杖剣レギオン・セファル》の先端へ空間圧縮刃を這わせる。

相変わらず、魔核に痛みが走る、歯噛みし無視する。


「こっちの足は、いただきますよ!」

杖剣を振り抜き、左足関節へ打撃——


キィィン!

鋼鳴りのような反響に、刃が弾かれた。


「かっったい結界ですね!」

痺れる反動を押し殺し、二撃目——なお弾かれる。


魔核がうまく制御できず、最低限の魔力で構築した刃。

いつもならば結界を裂く、もしくは砕くくらいは、リゼルならば容易いはずだった。

実力が封じられ、防がれてしまっていた。


獅子は右足を着地させ、左前足を持ち上げる。

「早いですね……離脱!」

動作を見て、回避行動をとる。


左前脚でダンッ!と床を力強く踏む。

踏み抜いた床から衝撃波が走り、氷杭が林立し飛び出す。


迫る氷杭を杖剣で弾き飛ばしながら、リゼルは瞼を細めた。

「くッ! 多彩なようですね!」


セディオスとリゼルは一度、壁際で合流する。


「リゼル、先行してくれ」

「わたくしを囮に……ですか?」

ジッと見上げる金の眼。


「威力が足りん。魔剣に魔力を吸わせたいんだ、ちゃんと守るさ」

「ふ~~ん……まあ、乗ってあげましょう」


観念したように肩をすくめ、リゼルは正面から攻める。

後続にはセディオス。


「セディオス、ちゃんと付いてきてくださいよ!——クロノ・アシュータ」


更なる加速。

(魔核が軋む……面倒な!)

胸の奥に、嫌な軋みが走る。


二つの影が一直線に迫る。獅子は口を大きく開け、空気を呑む。

コオォォォォ——

喉奥の砲身が赤熱し始めた。


「!? まずい、セディオス!」

「そのまま突っ切れ!」

背後から疾駆する二刀の気配。


キュウウウゥ——————

吸い込んだ空気を圧縮。


そして――


ゴゴォォォ——!!!

灼熱の奔流が吐き出される。視界を焼く火炎放射。


「クロノ・シフト!」

リゼルは“自分以外”の世界を、二秒だけ止めた。

止まった業火の尾を抜け、足元を滑らせるように射貫く導線を通す。


——ニィ……イチ……ゼロ。

世界が解け、音が戻る。

火炎はなお吠え続けているが、眼前に残った影は剣士ただ一人。


「あっつぅぅ!」


獅子の腹まで逃げたリゼル。

業火の放熱に焦がされ、声を出していた。


「おおおっ! アルヴェルク、切り裂け――!」

《アルヴェルク》で迫りくる火炎の流れを“割る”——魔力を裂き、そのまま吸い上げる。

炎は剣先を中心に左右へ割れ、灼熱の風がセディオスの頬をなぶる。


「ぐおおっ、あっちいいいい!」

熱波までは防げない。


「ラティス・シェルド!」

《魔導充式剣ディスフィルス》を薙ぎ、結界の刃で自身を包む。

断ち割られた炎の壁が、ようやく沈黙した。


シュウウゥ——

赤熱が退き、ガゴォン、と獣の口が閉じる。


「はぁ……はぁ……流石にきつかったな」

《アルヴェルク》の魔晶は魔力を取込み、わずかに輝きを取り戻し始めている。


その頃、前足の間を抜け、腹の下に隠れるリゼルは胸を押さえていた。

「時を止めるだけで……この痛み」


汗が額からぽたり。

「中級が、せいぜいか……厳しい……」


火炎を切り裂かれ、獅子は低く唸る。

グオオオ——ン。

背の砲塔が微かに回頭し、側腹の刃がわずかに覗く。


「はは、機嫌が悪いな……まだまだ、やるぞ!」

セディオスは二刀を構え、踏み込む。


巨大な獣は、巣を荒らす小動物を見る目で睨み下ろした。

その眼窩の魔法陣が、じわりと回転速度を上げる——。


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