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魔王メイド・エクリナのセカンドライフ  作者: ひげシェフ
第九章:闇に芽吹く信頼

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◆第204話:陣地構築◆

大樹のように天井まで伸びる保管魔導術具が、部屋の“心臓”を占めていた。

幹に相当する胴体には白く眩い巨大魔晶が抱え込まれ、床面へと無数の管が根のごとく張りつく。

取り巻くのは、所狭しと蠢く蜘蛛型術具と石板型術具——心臓を守る白血球の群れのようだ。


大樹を正面に、姉妹はその手前――術具たちの包囲網の中で背を合わせていた。


「せめて高位魔法さえ放てれば……」


ルゼリアは《焔晶フレア・クリスタリア》を『獄炎爪』形態で両手に構え、炎刃で蜘蛛を裂く。

だが、魔封じの術式が壁一面に流れているこの階層では、範囲・威力ともに大きく削がれていた。


「数が多いよ!!」


ライナは《魔斧グランヴォルテクス》を『雷大両刃斧』形態へ。

横薙ぎに払えば稲妻が迸り、火花が散るたび掌が痺れる。

柄に返る反動が腕を焼くように重い。


前方からは大管の刺突、左右からは横薙ぎ、上空からは鋼矢の雨、隙間を縫って濃酸の射撃——四拍子の圧力が途切れない。

保管術具が新たな大管をせり出す。

刺突、横薙ぎ、刺突。動きのパターンは単純でも、数で押してくる。


「ああっ! もう!」

「くっ……!」


ライナは斧の背で刃を弾き、ルゼリアは身を捻って刃筋をずらす。

だが、じわじわと足が止まり始めた。


「ライナ……《魔刀ライメイ》の一閃は使えませんか?」

背中合わせに体勢を整えながら、ルゼリアが問う。


「消費は少ないからいけると思う……でも、すごく集中しなきゃで……蜘蛛たちが邪魔!」

極東剣術の抜刀——神速の一撃。

とはいえ修行中のライナには“静かな導線”が要る。


「……分かりました。道はわたしが作ります」

ルゼリアは決める。

「でもどうやって? このままだとジリ貧だよ?」と、ライナが矢を斬り払いながら顔をしかめた。


「魔力を補充できれば……」

ルゼリアは何かないのかと見渡す。

周囲に転がるのは、砕けた術具の残骸ばかり。


「……あ!」

ルゼリアは思い付いたことがあった。


「ライナ、少しだけ背を守ってください」

「うん!、分かった!」

ライナはルゼリアを守護するように立ち回る。


ルゼリアは一歩、獄炎爪の先で蜘蛛の頭部装甲を割る。

内部に、小石ほどの結晶が煌めいた。


「自立する術具ですものね、加工された魔晶くらいありますよね?」

小石ほどの小さな結晶体を取り出す。

「魔力封じの中で、動ける術具……使うほかないですね」


視線の先、白い巨大魔晶を抱く“大樹”が脈打つ。


(問題はここからです……これを自身の魔力にできるのか……)

ルゼリアはセディオスと同じように外部の魔晶から魔力を補充したかったのだ。


(……このままでは使えない、魔法式を構築………)


ルゼリアは地に手を付き、目をつぶり集中する。

頭の中で魔法式を想い描き、握りしめる魔晶との繋がりを探す。

指先が熱を帯び、掌の結晶が紅に脈打つ。


白き巨大魔晶を抱える大樹は、更に攻め手を増やす。

大管を増やし、既に二十に膨れていた。

動かなくなった紅髪の少女を標的に刺突を始める。


バンッ!、バシンッ―――――

大管をはじく蒼髪の少女。


「やらせるもんか!」


ライナが吠え、迫る大管を魔斧で叩き折る。

金属の悲鳴が走り、矢が頬を掠めた。

肩、腿を狙ういやらしい射線。顔だけは逸らして、眼だけは守る。


「きっつい攻撃! でも——やらせない!」

痺れる指を握り直し、稲妻を刃へ落とす。


ポオォォォオン——

低く腹に響く音。床が微振動し、天井から煤がさらりと降る。

保管術具が“咆哮”し、招集の音を放つ。

開いた天井孔へ風が吸われ、蝙蝠型、大蛇型——見たことのない警備術具が雪崩れ込んできた。


「これは……まずいかも、リア姉ぇ~~」

大軍の影に、ライナが思わず一歩退く。



「待たせましたね、ライナ!」

祈るように膝をついていたルゼリアが立ち上がる。


ルゼリアの靴底から、赤い紋が蜂の巣状に走り、床一面へと魔法陣が広がった。

蜘蛛型や石板型の“骸”へ干渉するたびに内部魔晶が、次々と紅へ共鳴する。

紅の点が線と繋がり、やがて面を構築する。


「これより、この魔法陣は私たちの『陣地』……反撃開始です!」


床下で、魔力が走った。

残骸の魔晶が、ひとつ、またひとつと灯る。

赤い蜂の巣が――面になる。

陣地となった紅き巨大な魔法陣は、炎と雷の少女たちを囲んだ。


次回は、『3月8日(日)13時ごろ』の投稿となります。

引き続きよろしくお願いします。


本日もお付き合いいただきありがとうございました!

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