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魔王メイド・エクリナのセカンドライフ  作者: ひげシェフ
第九章:闇に芽吹く信頼

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◆第202話:遺跡が守るもの◆

遺跡と呼ばれる研究所の探索、四日目――。

珍しく何もいない回廊を、二人の少女が闊歩していた。

昨日リゼルを見てから、ルゼリアとライナの機嫌は悪いまま。

夕餉の席でも愚痴は増える一方だった。


「セディオスは優しすぎるんだよ!」

「王の主ともあろう方が……」

忌まわしいものでも見たかのように、二人は足を速める。


その先に、これまでにない装飾を施された扉が現れた。


「明らかに違いますね……」

「何か大事なものがあるとか?」

わずかに機嫌が持ち直す。


扉の脇には、絵合わせの石板が三つ並ぶ。

「解錠するには全て解く必要があるようですね」

「見たことない紋様ばかりだね……」

役割はいつも通り――ルゼリアが解錠、ライナが周囲警戒。

カシャ、カシャ、と石板が動く音だけが回廊に響いた。


三つの石板は、それぞれ別の法則で噛み合っていた。

一つ解けば次が変わり、整えたはずの図がまた崩れる。

ルゼリアは小さく唸り、正解を導き出そうとする。


――幾刻が過ぎ。

やがて音が変わる。――ガチャン!、ゴゴゴ……。


「難解でしたが、何とか開きましたね」

ルゼリアの魔法書を読み込んできた経験が生きる。

「おお! 流石リア姉!」

ライナが歓喜する。


扉の隙間から、光が零れた。

ライナは先頭に立ち、《魔斧グランヴォルテクス》を構える。

ルゼリアの《焔晶フレア・クリスタリア》が浮遊し双晶が煌めく。


扉が開き切る。

そこにあったのは、白く眩い魔晶を収めた巨大な保管術具。

幾条もの太い管が樹の根のように床へ潜り、ゴウン、ゴウンと脈動する。


二人は慎重に踏み入れた。

「ようやく当たりなのかな?」

「ええ、ですね……」


見上げるほどの大きな硝子の筒。

「幾つもの魔法式が刻まれていますね……この遺跡の動力源ですかね?」

「ふ~~ん、てことはこれ壊したら魔法がいつもみたいに使えるようになるかな?」

ライナの脳内で、“保管術具=動力源=守る対象=壊せば魔封じなくなる”と推測が線でつながる。


「依頼の内容にはないですから、壊してしまいますか」

紅の結晶が濃く光る。

「よ~~しっ!」

蒼い魔斧に紫電がほとばしる。


二人が戦具に魔力を込め、高まるその時――。

コーン、コーン……遠くで乾いた音が鳴り始める。


「「!?」」


次の瞬間、壁の内側でも鳴る。コーン、コーン、ココーン――。

音は増殖し、コ・コ・コ・コ・コ・コ・コッ、ココッ!


部屋の壁が端からめくれ、石板型の魔導術具が目を覚ます。

天井もガコン、ガコンと開口し、蜘蛛型術具がサシュ、サシュ、サシュ――と摩擦音を立てて群れを成す。


「これはこれは……余程大切な術具らしいですね」

「期待できるね、けど……多くない!?」


止めどない群れに、紅と蒼は背中を合わせた。

「ライナ、ギリギリまで……」

「……分かってるよリア姉……」


命令に忠実な蜘蛛と石板が距離を詰める。

先頭が踏み込んだ瞬間――二人も同時に踏み返した。


「スカーレット・ニードル! ブレイジング・スラスト!」

「サンダー・レインフォール!!」


炎矢と炎槍が空を穿ち、落雷の雨が床を叩く。

二人の魔核が軋む。――出力を上げきれず、射程も範囲も削られる。

それでも、近距離なら十分だった。

突っ込んできた半数が雷炎に包まれ、灰燼と化す。


白き巨大魔晶の保管術具が、ビィー! ビィー! ビィー! と甲高く鳴いた。

呼応して、蜘蛛型術具が更に雪崩れ込む。床が揺れ、空気が震える。


更に地震が起きる。

ガコッ! ガコンッ! ガゴゴッ! ベキッ! ズズズッ!!


――保管術具の下から“樹根”が這い出し、魔導管を幹にして巨体が立ち上がる。

天井に届きそうな影が、白晶を守るように回り込んだ。

遺跡の最奥で、姉妹の最大の戦いが始まる。


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