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魔王メイド・エクリナのセカンドライフ  作者: ひげシェフ
第九章:闇に芽吹く信頼

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◆第191話:仄暗い部屋の中で◆

魔導ランプが等間隔に並ぶ、仄暗い部屋。

壁面下段には、魔法陣を紋章化した文様が連なり輝いている。

ゆったりと明滅を繰り返し、呼吸のような、脈拍のような生き物の気配を思い立たせた。


カキンッ! キンッ! ――金属の打ち合う音が響いた。

幾度も続く、攻防の剣閃の音。

仄暗い明りの中で反響を繰り返していた。


「奇襲、ですか? 甘いですね♪」

リゼルがニタリと嗤っていた。


正面には、二刀を構える剣士。

「二人きりだ、仕掛けるに決まっている!」

弾かれた刃を収め直し、セディオスが構えを取り直す。


先ほどの広間に敷かれていた魔法陣は、拘束と転送を兼ねていた。

光が収まったとき、二人は向かい合っていた。

レンガが積まれたような石壁に囲まれた別室に二人きり――炎雷の姉妹の姿はなかった。


「まあ、いいでしょう。クロノ・アシュータ」

「来い。グロース」


リゼルは身体動作と思考を加速。

セディオスは動体視と敏捷を底上げする。


――だが、いつもと違う。


リゼルの魔核が軋み、想定以上に魔力が削られていく。

セディオスの《魔導充式剣ディスフィルス》も、魔晶の輝きが心許なく淡い。


(くッ! 何故痛みが?)

顔に出ないように我慢するリゼル、身体強化の低級魔法で魔核が痛むなどあり得なかった。


(何故だ! ティセラの整備は完了していたはずだぞ?)

魔剣の違和感を感じ、バレない様にするセディオス。


止まらない攻撃。杖剣と二刀が交錯する。


「二刀流になったんですね?」

「お前と戦うためだ!」


畳みかけるべく、リゼルは杖剣を大剣形態《セファル=クレイモア》へ変形――


……しない。異空間から大刃が出てこない。

空間の継ぎ目が火花を散らし、何かに噛み潰された。


「……なぜ?」

目を細めるリゼル。


「不調ってわけか。スパーク・ダーツ!」


魔剣から雷光の矢が走る――が、間際で消える。届かない。


「やはり、いつもと違うな……」

先ほど感じた違和感が強くなる。


(この部屋、魔力に対して仕掛けがあるのか……?)

目に入る石壁。その下部の脈動する紋様を見つめるセディオス。


「貴方も、だらしないですね」

挑発で呼吸を整えるリゼル。


(戦具の転送が阻害されている? 嫌な予感しかしないですね……)

余裕の面持ちで、内心は懸念がこだましていた。


手応えの鈍い二人。

そこへ――ガコン、ガコンと天井や壁が開口していく。


サシャ、サシャ、サシャ……四肢で這う“蜘蛛型”の魔導術具が群れで出現する。


「なるほど。ここはお仕置き部屋でしたか……」

「侵入者排除用の罠だったか……」


二人の逃げ道を素早く奪い、じわじわと包囲が狭める蜘蛛型術具。


「数が多いな……」

セディオスは《アルヴェルク》も構え、リゼルと蜘蛛の群れ、両方を警戒する。


「ふん、付き合う義理は無いですね……」


リゼルは魔力を集中する。

魔核が痛むのも無視して紡ぐは、空間転送移動——転移の魔法。


(ぐうう……ま、魔核がぁ! でも、放出量を増やせば……ここを出るくらいは!)


リゼルは歯を食いしばり、迫りくる敵を見つめ、いつも以上に魔力を収束させる。

いつもなら瞬時に行なえる高位魔法も、魔核の負荷をこらえ、倍以上の時間を掛けていた。


ようやく、足元に魔法陣まで展開を果たした。

歪な陣であったが研究所から脱出だけならば出力は十分。


リゼルは念じ、そのまま発動――は出来なかった。

石壁の紋様の光が眩しく思えるほどに強くなる。

それに共鳴するようにリゼルの魔法陣は揺らぎ、バキンッ!と破壊された。


「はあはあはあ……阻害されましたか……転移は駄目ですか……」


無視していた魔核の痛みが一気に襲い掛かってくる。

リゼルは胸を押さえ、呼吸が乱れていた。


一仕事を終えた石壁の紋様は、輝きを落ち着かせ、再び淡い光に戻る。

セディオスはそれを見て確認した。

魔核の痛み、転移の阻害、この部屋には魔力封じの効果があると。


サシャ、サシャ、サシャ……と不気味な音を奏でながら、蜘蛛型術具が迫りくる。

もう、五歩手前まで近づいていた。


「……はあはあ。し、仕方ありませんね……」

リゼルは転移での脱出をあきらめた。

この状況で選ぶ選択肢は二つだが、明らかに利点があるのは一つだった。


「それしか無いよな……同じ考えのようで助かるな……」

セディオスも悟っていた。

この部屋を無事に切り抜ける手段、それは一つだけ。


「勘違いしないでくださいよ? わたくしは自身が可愛いだけですからね?」

「ああ……俺も同じだ。互いに手を貸すのは最低限にしようぜ」


リゼルとセディオスは睨み合う。

最善で最悪の手。生き抜くために互いを“利用”すると決め、協定を結ぶ。


二人は同時に踏み出した。横目で視線を交わす。

思考は、奇妙に一致していた。


「――抜けるぞ!」

「ええ、扉まで!」


目をつけていた出口へ、二人同時に疾駆。

蜘蛛型が鋼矢を吐く。全方位から飛来する、鋭い射。

それでも二人は止まらず前へ出る。


「クレセント・フォールド!」

リゼルは杖を横薙ぎ、圧縮した空間を湾曲刃として展開して矢を逸らす。

魔核は痛むが、高位魔法である転移を発動する時ほどではなかった。


「ブレイク・ノヴァ!」


セディオスは魔剣を床へ叩きつけ、中心から爆ぜる衝撃波で包囲を弾く。

(発動を抑え込まれている……だが、放出する魔力をいつもの倍で押し切れる!)


だが、転移だけは別だと理解していた。

リゼルの陣が潰れた瞬間――この部屋は“逃げ道”だけを許さないと悟った。


矢は弾かれ、蜘蛛の群れは砕け散る。

二人は扉を押し開け、身を滑り込ませた。

勢いよく扉を閉じ、先を警戒する。


目の前に敵勢無し。

ただし、レンガを積んだような石壁は暗闇まで続き、淡く光る文様が足元を照らしていた。


「「はぁぁ……」」


警戒を解き、背を扉に預け、セディオスとリゼルは同時に息を吐く。


魔力出力を抑制し、魔法発動を阻害する研究所。

自身らの現在地は不明、そしてルゼリアとライナはどこかに飛ばされた。

セディオスの隣に居るのは、敵対すべきリゼル。


だが今だけは――同じ檻に入れられた“同類”だった。

遺跡と化した研究所の探索は、まだ始まったばかりだった。

次回は、『2月15日(日)13時ごろ』の投稿となります。

引き続きよろしくお願いします。


本日もお付き合いいただきありがとうございました!

引き続き、評価・ブックマーク・感想で応援いただけると励みになります!


*キャラクター設定集を作り始めました。

https://ncode.syosetu.com/n0327lj/

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