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魔王メイドエクリナのセカンドライフ  作者: ひげシェフ
第一章:それでも、主の傍に

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◆第9話:ひそやかな嗜みと秘密の宝箱◆

ある日の午後、エクリナは誰にも言わず、館の片隅にある物置へと足を運んでいた。

埃の被った扉をそっと開けると、中には整然と並んだ小さな棚や箱。その奥、鍵のかかったチェストを開くと、そこには ――


「……ふふ、誰にも見せるわけにはいかぬが……これが、我の秘め事なのだ」

棚から取り出したのは、写真の束。


旅の途中、セディオスと二人で立ち寄った街角で偶然撮られた写真。セディオスと並んで映るその一枚を、エクリナは大事そうに見つめる。

「……我が買うしかなかったのだ。あの写真屋め、勝手に撮っておきながら……」

そして、その奥には別のアルバム。 中には――セディオスの隠し撮り写真の数々。 読書をする姿、窓辺で紅茶を飲む横顔、時には寝顔まで。色々と言い訳をして写真機を買ってもらったのは正解であったな。


「……ふふ、この真剣な表情……よくぞそこにいてくれたな、写真屋よ……」「そしてこれ……寝顔とは、なんと無防備な……ふふふ、王たる我だけが知る特権であるな……」

「な、なっ!? ば、馬鹿を言うなっ! こ、これは……参考資料であって……っ! た、ただの収集などでは……!」


頬を染め、ニヤけた顔を必死に引き締めながらも、写真を胸に抱くその姿は、まさしく恋する少女のそれであった。


さらに箱の奥にしまわれていたもう一つの“趣味”の箱。 開けた中には、自作の“勝負メイド服”の設計図。

「……こ、これは……! いざという時、うぬを魅了する最終兵器として……ッ!」

そこには、レースと黒リボン、布面積を極限まで減らした挑戦的なデザインが描かれていた。 顔を真っ赤にしながらも、エクリナはその設計図を見つめて呟く。

「……着る日は……く、来るのだろうか……」


だがその時。

「エクリナ、ここにいたのか?」

背後から聞こえたセディオスの声に、エクリナは飛び上がるように振り向いた。

「な、なにゆえここに!? あっ、あああ開けるなッ! 見てはならぬッ!」

慌てて箱を閉じ、セディオスを背にして腕を広げる。


「こ、これは我の“王たる証”……見られたら、覇気が乱れるのであるぞ!」

セディオスは呆れながらも笑い、そっとエクリナの頭を撫でた。

「まあ……君にも、いろいろあるんだな」

「う、うぬ……それ以上申すなッ!」

エクリナは顔を真っ赤にしながら、そっと箱を物置にしまった。


――それは、誰にも見せない秘密。けれどそのひとつひとつが、彼女の“いま”を映す、小さな宝物だった。

(……この我にだって、愛らしさはあるのだ。うぬのために、密かに磨いておるのだからな……)


そして、物置の扉は静かに閉じられた。

今日も彼女は、誰よりも凛々しく、誰よりも可憐に、主を想い続けているのであった。

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