表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王メイドエクリナのセカンドライフ  作者: ひげシェフ
第六章:偽りの楽園、砕かれる朝

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

102/121

◆幕間:観測者リゼル◆

「精神接続、安定してまぁす、リゼル様ぁ」


紅い瞳を輝かせた少女――ネヴァが、ボサボサ髪を揺らしながら報告する。

白衣の袖には魔法式が浮かび上がり、彼女の背後では歪な魔導術具群が淡く明滅していた。


「ふふ……いいですね。先日の記憶が、実に鮮明に反映されている。再現度、九割を超えてます……上出来です」


紺髪の三つ編みをくるくると指先で弄びながら、リゼルは宙空に映し出された映像を見つめる。


髪は夜空を思わせる深い群青。

腰まで届く長髪を丁寧に編み上げ、薄紫のリボンで結んでいる。

整った面差しはどこか中性的で、瞳は淡い硝子色――光を映すたびに、冷たい銀の煌めきを帯びた。


そこに映っているのは、エクリナが拷問される夢の中の映像――。

ヴァルザの魔法攻撃を全身で受け、悲鳴を上げる姿だった。


「ん~……いい悲鳴です。あの記憶より少し反抗的ですが、それもまた彼女の“らしさ”でしょうか」


まるで葡萄酒の香りでも評価するかのように語る声。

その表情は、嬉々とした好奇心に満ちていた。


リゼルは、“夢”の中に仕込んだ精神干渉を魔導術具を通して、エクリナの記憶・思考・感情の動きを観察していた。

それは過去を追体験させるための技術――そして、心を壊すための実験。


「精神世界とはいぃえ、脳が受ける刺激は現実そのもの……でぇす? 精神波形にもちゃ~んと、揺らぎが出てぇいまぁす」


ネヴァが指先で幻像を操作すると、映像に重なるように脳波と魔力波動の図が浮かぶ。

エクリナの“痛み”が、数値としてそこに記録されていた。


「……そのまま監視を続けてください」


リゼルの声は冷ややかに、けれど熱を孕んでいた。


「“実験”は、まだ始まったばかりですから。

もっと見せてください、エクリナ――」


「あなたの感情の揺らぎを。そしてその“終わり”を」


その狂気は、かつてのヴァルザを彷彿とさせるものだった。


歪んだ工房の奥で、影は微笑む。

冷たい香水と金属の匂いが、空気を支配する。


それは、誰にも知られずに進む、“心の破壊”の実験だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ