依頼の行方 燃え滓の男の答え
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パチパチパチ!
『いやぁ。こりゃまた派手な勇者宣言ですこと』
「ああ。一つ間違えば危なかったが、上手く行ったようでホッとしたよ。別の部屋で見ているライも、広場で見ているジュリアさん達や鋼鉄の意志の方々も気が気じゃなかっただろうね」
ユーノの宣言を大神殿の一室で聞きながら、俺達は状況を見守っていた。いざとなったらそれぞれ乱入してユーノを助けに入る算段だったが、この分なら心配なさそうだ。
途中ユーノが予定外の動きをしたのは驚いたが、最後の最後でもう一人のユーノが出てきた事で流れは良い方向に進んだ。値踏みするような視線を向けていた市民達も大半がその勇者の姿に圧倒され、肝心のブライト様も、
『ハハハハハ! 良いねぇ悪くない。寧ろそのくらいアドリブを利かせられなきゃ面白くない!』
と真っ先に笑いながら拍手し、それに合わせて市民達も拍手し始め今では拍手喝采だ。
後は祝辞を受けた後、ブライト様が加護をユーノに与えて式典は終わり。加護については詳しくは不明だが、ヒヨリがユーノに何かの制約を課す類ではないと確認をとっている。
もうすぐひと段落着くと俺が胸を撫で下ろしていると、
『これで正式にユーノちゃんが勇者ですかぁ。……さて開斗様。ここで一つ大切なお話があります』
「何だよ改まって」
急にヒヨリがふわりと俺の肩から飛び立ち、正面に回って真剣な顔をするので俺も背筋を伸ばす。
『突然ですが……貴方にはここで依頼を中断する選択肢があります』
「中断?」
『はい。以前ワタクシはこうご説明いたしました。勇者とヒトのユーノちゃん。別々の精神である限り完全な勇者の覚醒はなく、貴方へのご依頼も未達成扱いとなりますと。ですが……それは少し誤りだったようです』
ヒヨリは今も画面の中で、すぐに元の姿に戻って恥ずかしがりながら市民に手を振るユーノを見つめて続ける。
曰く、正式に神族によってヒトとしてのユーノが勇者として認定され、ユーノがヒトのまま勇者になった場合、こじつけではあるが依頼達成扱いに出来るという。
「大丈夫なのかそれ?」
『微妙ですね。ヒトのユーノちゃんだけで勇者を名乗ってもダメなのですが、それを神族が正式に認めるとなると世界的に影響が……そもそもワタクシが世界から依頼された内容もやたら大雑把で……あっ!?』
「ちょっと待て。前々から微妙に説明が伝聞調だと思っていたら、元々ヒヨリが受けた依頼だったのか? それを俺に押し付けていたと」
『あ~…………てへっ!』
てへっじゃないよ!? 詳しく聞いてみると、最初にヒヨリがこの世界から依頼を受けた時、超越者が直接顕現してはマズいので自分の代行者が必要だったのだという。この世界に来てもう一月近く経ってから知る事実だ。
『コホン。それはともかくです。この状況であれば多少強引でも開斗様。貴方はユーノちゃんをここまで導いたという事で、無理やり依頼達成扱いに出来るという事です。勿論報酬である元の世界への帰還もお約束しましょう。……如何です?』
ヒヨリはそう口にしてどこか試すような目でこちらを見てくる。それは以前ゴブリンが村を襲撃する予言が出た時や、試練システムを俺がどうするのか尋ねた時と同じような目で。なので俺は少し考えて、
「……うん。特に中断する必要はないね。今まで通り正しく……ヒヨリが納得するようにユーノが勇者として覚醒するまで依頼は続行する」
そう答えるとヒヨリは少し驚いたような、或いはそう答えると思っていたとでも言うような複雑な顔をした。
『本当によろしいので? 正直に申しまして、これからも開斗様には困難が付きまとうでしょう。先日のような刃傷沙汰も有りましょう。いくら予言システムがあっても、必ずしも開斗様がどうにかなるものではありません』
確かにその通りだ。これまでもヒヨリやバイマンさん等多くの人の手助けがなければどうにもならなかっただろう。俺一人の力などたかが知れている。
『なら今の内に貰える物を貰った方が賢いやり方かと存じますが? ……開斗様は十分務めを果たされました。三度も勇者の危機を救ったのです。世界を救うとまではいきませんが、命の対価としてはまあ悪くないでしょう。なら』
「だが、ヒヨリだけ残す事になるだろう?」
そう答えた瞬間、ヒヨリは『ほえっ!?』と一瞬呆けた顔をする。
「さっきヒヨリは中断と言った。つまりヒヨリにはこの依頼を再開する意思があるって事だ。また新しい代行者を準備するのかもしれないが……はっきり言ってこんな珍しい依頼を受けるのは余程切羽詰まった奴だぞ。それこそ自分や誰かの命が懸かった誰かぐらいだ。そんな奇特な誰かが見つかるまで、ユーノやライや……お前を放っておく訳にもいかないだろ?」
ビーっ! ビーっ!
その時もはや聞きなれた警告音が響き渡る。それを聞いて俺もヒヨリも顔を引き締めた。
「さあ。中断なんてしてる暇はない。近くで命の危険に晒される人、特に子供が居るのなら、それを全力で手助けするのが大人の仕事だ」
『……そうですね。じゃあ覚悟しちゃってくださいよ開斗様! まだまだご依頼は終わりませんから! ここで素直に辞めておけば良かったなんて後で泣いても知りませんからね!』
そうしてすっかりいつもの調子に戻ったヒヨリと共に、俺は再び予言板を展開した。
そう。まだまだ勇者達に迫りくる数多の死亡ルートを乗り越えて、正しい生存ルートを掴み取る為に。
『ところで、さっきのはアレですかね? プロポーズ? ワタクシを放っておく訳にはいかないだなんて……きゃ~っ!』
「頬を赤らめてくねるんじゃないっ!? お前やライやユーノを放っておけないって意味だよっ!?」
如何だったでしょうか?
ヒヨリが言ったように、ここで開斗には現世に生きて帰還するという選択肢もありました。ですが開斗的には、依頼云々よりもまだ近くで手助けしなくてはいけない子供がいる以上、それを放っておいて戻る選択肢なんてないという話でした。
さて。一応ここでこの話は完結となります。ただ、大本である小説投稿サイトネオページではもう一章だけ続く予定です。幾つか残った伏線、聖都でヒヨリを襲った襲撃者や、軽く匂わせてきた開斗の過去など、その辺りを少し掘り下げていきます。
もし気になるという読者様がいらっしゃれば、そちらまでご足労いただければと思います。
そして、ここまで読んでいただいた読者様に感謝を。この作品が、少しでも読者様の暇潰しにでもなったのなら幸いです。
それではここで恒例のおねだりをば。
ブックマーク、評価、感想は作家のエネルギー源です。ここぞとばかりに投入していただけるともうやる気がモリモリ湧いてきますので何卒、何卒よろしく!




