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09.森の食材メニュー

休みの日の朝はいつも、ルシールとネネシーは一緒に森に向かう。


森は、フルーツやキノコや食べられる植物など、自然の食材に溢れている。

色々採って帰れば食費も浮くし、カフェメニューも兼ねて色々な物を作る事が出来る。

だから休日の朝は森へ食材を集めに行くのが、二人のルーティンになっていた。


森の奥には魔獣が出る事もあるので、安全な森の入り口までしか行かないが、森の入り口でも十分自然の食材は採れる。


節約料理はルシールの得意とするものだ。

体が資本の騎士のネネシーには、美味しいものをしっかり食べてほしいと思っているし、二人の将来のお店のためにもなる。

ルシールは今日も張り切って食材集めに取り組んで、カゴいっぱいにフルーツやキノコを集められたので、二人は少し休憩してから帰ることにした。





「はい。ルルちゃん、どうぞ」

そう言ってネネシーは、ココの実の殻を割ってストローをプスリとさした実をルシールに渡してくれた。


「ありがとうネネちゃん」

ココの実を受け取りながら、今日もまたルシールはネネシーに感心してしまう。



ネネシーは本当にすごい能力の持ち主だった。

「力しかない」と嘆くネネシーだが、半端な剣の才しか持たない騎士よりは、ネネシーの方が遥かにすごいとルシールは思う。


今ネネシーが手渡してくれたココの実の中には、とても美味しい果実ジュースが詰まっている。


だけどココの実は、岩よりも硬いと言われる重くてぶ厚い殻に覆われていて、その殻を割ることは容易ではない。

ココの実自体は、森の中にゴロゴロと転がっているものだが、ココの殻割職人でないと割れない果実ジュースはとても高価なものなのだ。


それなのにネネシーは、あの超硬質な殻を簡単に割る事が出来る。


手順はこうだ。

ネネシーが殻をコンコンと拳で軽く叩くと、ピシリと殻にヒビが入る。

そこからゆで卵の殻を剥くように、ツルリと中の実を取り出して、ルシールが飲みやすいようにいつも、中が空洞になったココの木の枝ストローをプスリと刺してくれる。


そんなジュースの詰まったココの実は、「いつでも飲めるように」と部屋の片隅に積んである。

ルシールは非力なのでココの実ひとつ持てないが、ルシールとジュースを楽しむために、重たいココの実をいくつもネネシーが持って帰ってくれるのだ。



ネネシーはとても優しくて、本当にすごい。

ルシールはそんなネネシーがとても大好きだった。







森で集めたたくさんの食材を部屋に持ち帰った後、二人はお昼ご飯の用意を始めた。

今日のお昼ごはんは、森のキノコのクリーム生パスタにしようと決めている。


この世界の食事は、パンが主流だ。

パスタ料理もあるが、パスタ麺は割高なので、ルシールはパスタ麺も手作りしている。


強力粉や薄力粉は格安なのだ。そうなると貧乏なルシール達は、作る以外の選択肢はないだろう。

ルシールは以前のバイト先で作り方を見ていた事があるので、生パスタ麺の材料も手順も何となく知っていた。


簡単生パスタは、わりと手軽に作れるものなのだ。


ネネちゃんはもっちり麺が好みなので、強力粉多めの生地にする。

強力粉と薄力粉と塩を合わせたところに、卵を加えてポロポロになるまで軽く混ぜたところに、オイルを加えて更に混ぜて生地をまとめてから30分ほど休ませる。


この間の時間は、二人のお喋り時間だ。


そうして寝かせた生地は、パスタマシーンなんてなくても、ネネちゃんが生地を麺棒で軽く伸ばすだけで、極薄の生地に仕上げてくれる。

それをカットすれば、生パスタ麺の出来上がりだ。

二人でいれば、いつでも気軽に生パスタを楽しめるのだ。


生パスタは数分で茹で上がるので、お湯を沸かしている間にソースを作る。

薄くスライスした玉ねぎとベーコン(贅沢品だから少し)とたっぷりのきのこを炒めて、しんなりしたら水と牛乳とコンソメと入れてひと煮立ちさせ、塩胡椒で味を整えて、茹でたパスタを加えたら完成だ。

生クリームがあれば濃厚パスタになるが、生クリームは贅沢品なので、特別な日だけのものになる。



ルシールが料理をしている間に、ネネシーがテーブルの上にお皿やフォークやお水を用意していてくれる。

お皿にパスタを盛り付けて、二人でお昼ご飯を食べ始めた。



「ルルちゃんのご飯……最高!本当にルルちゃんは料理が上手だね」

「ありがとう。でもネネちゃんがこねてくれたパスタが美味しいからだよ。これはネネちゃん無くしては出来ない料理だよ」

「パスタ生地はいくらでもこねるよ!これもカフェランチメニューに入れようね」


「ココの実ジュースもメニューに入れよう!殻を割るのは私の役目だね」

「ネネちゃん、カッコいい…!」


いつものように二人で褒め合いながら、二人の将来のお店の事を楽しく考える。



二人で開く未来のカフェは、森の近くにしようと決めていた。

森の入り口付近であれば、魔獣の危険もないし、森の新鮮な食材をいつでも採る事ができる。

辺鄙な場所だからお客さんはあまり来ないかもしれないが、お金のかからない店だし、二人ならば楽しく暮らしていけそうだと意見は合っていた。


今日のカフェメニュー候補は、森の食材生パスタとココの実ジュースで決定だ。


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