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乙女ゲームに婚約破棄は付きものだというならば  作者: 白井夢子
乙女ゲームの世界とは

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15.今日のブランチもカフェメニュー


昨日も今日も雨だ。

今日はせっかくの休日だけど、森へ食材調達には出かけられない。


今日は部屋にこもることになりそうだと、昨日から分かっていたので、今日は朝寝坊してゆっくり過ごそうと話していた。



今日の朝食と昼食を兼ねたブランチは、フレンチトーストと決めている。


昨日、少しパサついてきた食パンを見ながら、朝食にフレンチトーストを作ってみようと盛り上がっていた。

フレンチトーストに使うパンは、少しパサつくくらいの方が卵液を十分に吸い込んで美味しい。

ルシールは、たっぷりの卵液に漬けていた、分厚く切った食パンを冷蔵庫から取り出した。


昨日から一晩以上の時間漬けている、そんなフレンチトーストは、しっとりでフワフワでトロトロな特別なものになる。

熱したフライパンにオイルを引いて、崩れないように慎重にパンを置き、じゅうじゅうと中火で両面に美味しそうな焼き色をつけた後、フライパンに蓋をして弱火でふっくら焼き上げる。


焼き上がったパンをお皿に移してハチミツをかけ、森のベリージャムを添えたら、美味しそうしかないフレンチトーストの完成だ。


ジャムは森で採ったベリーを砂糖とレモン果汁で軽く煮込んだもので、色鮮やかに艶やかに光っていて、甘酸っぱくてとても美味しい。



ルシールがフレンチトーストを焼いている間に、ネネシーは部屋に積んでいたココの実ジュースの殻を割って、ストローをプスリと刺したものを用意する。


「ふわトロだね」

「これもカフェメニューに入れてみる?」

「絶対お客さん喜ぶよ!」


今日もまたひとつカフェメニューが決まった。



カフェメニュー話題で、ネネシーが思い出す。

「そういえば執事のデリクさんが、黒豆茶を特に気に入ってくれているよね。『疲れが取れる』って喜んでたし、さすがルルちゃん特製の黒豆茶だよ。カフェでも人気のメニューになるね」


「そうだといいな。またデリクさんには、新しく作った黒豆茶を持って行こうね。クレイグ様も褒めてくれてたから、黒豆茶はお客さんに反響があるかもしれないね」


「行くのは今度天気の良い日にする?ついでに森を回れば食材も採れるしね」


そんな話題でブランチ中も盛り上がった。



デリクは、フィナンを助けたお礼にと美味しい紅茶をプレゼントしてくれた。

そのまたお礼にと、デリクにも癒し魔法を込めた黒豆茶を渡しに行くととても喜んでくれたので、時々デリクに黒豆茶を届けに行っていた。





ブランチは少し早いお昼ご飯になるので、食後に早速オヤツの準備をしておく事にした。

二人が開くカフェメニューは、多ければ多いほどいい。試作は二人の将来にとって、とても大事なものだった。


今日のオヤツはシフォンケーキを作ってみる。

シフォンケーキは、前世のルシールは何度も作っていた物だった。だけど今世では、ハンドミキサーを買う余裕がなかったので、作れていないものでもある。

非力のルシールには、卵白を力強く泡立ててシッカリしたメレンゲを作ることは不可能だったのだ。

だけど今、ルシールにはネネシーがいる。


シフォンケーキはお財布に優しい。

卵と砂糖と油と少しの粉だけで作れる、美味しくて嬉しいケーキは、将来のカフェメニューに欠かせない。



「じゃあ作ろっか。ネネちゃん、メレンゲ作りをお願いね」

「任せて!」

二人は早速作り始め出す。


卵黄と砂糖をすり混ぜて、油を加えて混ぜた後に水も加えて混ぜる。

ネネシーの作ったメレンゲを、何回かに分けてサックリ混ぜて型に入れれば、後はもう焼くだけだ。


ハンドミキサーなど無くても、ネネシーがクルクルと卵白に砂糖を加えたものを混ぜると、簡単に理想の固さのメレンゲが出来てしまう。

これはハンドミキサーを持たないルシールだけでは作れないお菓子でもあった。


オーブンの前で焼き上がりを待ちながら二人でお喋りをする。



「ネネちゃん、そういえば元婚約者のヴェイル様はネネちゃんにたかりに来ていない?大丈夫?同じ騎士科だから顔を合わせる事もあるでしょう?」


そう。ルシールの今の不安要素はそれだ。


ルシールの元婚約者のハロルドは、ルシールと科が違うので、基本的に顔を合わせる事はない。

お昼も今はネネシーと庭園で食べているので、食堂で鉢合わせる事もなかった。


だけどネネシーは、学年が違うと言っても同じ騎士科だ。心配になってしまう。


「ヴェイル様?……そういえば見てないわね。休み時間はルルちゃんと庭園で会うから、顔を合わせる機会なんてないよ。大丈夫だよ」

「そう?それなら良かった」

ルシールはホッと安心した。




そんなルシールに、ネネシーは嬉しくなる。

こんなに自分を大切にしてくれる子は、家族以外初めてだった。

――いや、丈夫で怪力なネネシーを、両親さえも頼りにする事はあっても心配する事がなかったから、ルシールだけだと言える。




この学園に入学する時に、田舎から一緒に付いてきたサブリナは幼馴染だったが、いつもネネシーを利用しようとしてきた。


食事の買い物も任せられたし、その支払いさえも任せられた。「今月はあまり稼げなくて」と、サブリナが家賃をほとんど払わなかったのは、ネネシーの稼ぎを当てにして「働かないから稼げない」という事にも、本当は気づいていた。

それを分かっていながらも一緒にいたのは、力の強いネネシーの方がサブリナを守る立場だと思い込んでいたからだ。


結局はサブリナに裏切られてヴェイルと破局する事になったが、ヴェイルに全く未練はない。

ネネシーにとって高価すぎる魔剣を購入しようとバイトに励む間に、幼馴染と浮気するような野郎に未練なんて残るはずもない。


むしろ別れたからこそ、ルシールとこうして過ごすことが出来るようになった。


ルシールとの楽しい毎日の中で、ネネシーは元婚約者も幼馴染の事も、思い出すことはなくなっていた。





「あ。焼けたね。ひっくり返して冷まさなきゃ」

「今日のオヤツも楽しみだね」


オーブンのケーキに意識が向いて、また婚約者の話をしていた事さえも忘れていった。




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