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序章 血まみれの少年
とある廃棄されたはずの施設の一室で少年は血に塗れていた。少し荒い息遣いでぐちょりと音を立てて重い足取りで中へ歩を進めていたがふと立ち止まってゆっくりと顔を上げた。視界の端に入った洗面台の大きな鏡に目をやると一通の手紙が貼りつけられていて、少年は速足で近づくと洗面台のふちを掴み白い表面を赤黒い液がいくつも指先から垂れて流れていく。少年の瞳孔と瞼は大きく開き一度の瞬きもせずにその手紙に目を注いだ。
『レオン、君のように強い子の存在は私にとっての天啓に等しい事だ。きっとその強さで私を追い、足掻くのだろう。君が困難に抗い立ち向かう様が私の心を沸き立たせ、存在すらしないと思っていた感情が……私を恍惚とさせ体を静まらせない。この沸き立つ感覚をもっと感じさせてくれ。何度でも立ち上がる様を見せてくれ……そのためなら私は何もかも犠牲にしよう、君に堕ちてもらうために……苦痛の底まで』
レオンは怒号を上げて手紙をびりびりに破き床に投げつけたが紙は宙を舞い、顔を上げると鏡には見たこともない自分の顔がそこにあった。