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短編 70 世界で八番目に強い男の話

作者: スモークされたサーモン


 なろうっぽいのも書いとくべか。んだな。


 そしてこれが出来ましたー!

 

 なろうエッセンスを濃縮した逸品です。




 俺は世界最強の男っす。


 男では間違いなく世界最強。間違いなく天辺の男なんすよ。自分は。


 でも女も入れると世界で八番目に強い人間になるっす。


 すごい事なんすよ?


 いや、本当に。


 マジで。


 単独でドラゴンも倒せるのが序列十位以内の人間っすからね。まぁ自分は単独ならドラゴンに瞬殺されますが。


 この辺は色々あるんすよ。自分の天職……『天に定められた適職』によるアレっすね。


 そんなわけで自分は世界で八番目に強い男なんすよ。八番目っすよ?


 なのに毎日女の子のパンツを洗ってます。


 パンツだけではなくブラとかシャツとか上着とかも洗ってるっす。まぁ洗濯っすね。


 洗濯以外にも宿舎の掃除と、ご飯の用意も自分がやらされてるっす。


 自分、世界で八番目の男っす。


 ……八番目なんだけどなぁ。


 これはそんな物語。



『まずは自己紹介』



 おっす! おら世界で八番目に強い男! 


 とりあえず『エイトメーン』とでも呼ぶっすよ。八番目なんで。


 自分は現在世界最強パーティーに所属して『何でも屋』をやってるっす。


 何でも屋なんで何でもやるっすよ。それこそ洗濯とか掃除とかご飯の支度とか。家事全般は自分の得意分野っす。


 世界最強パーティーなんで拠点もちゃんとあるっす。公費ででっかい家が国から支給されてるんす。家というかお屋敷っす。和風じゃなくて洋風っすよ? そういう世界観なんで。


 自分はそこのハウスキーパーをやってるっす。


 これでも世界最強の男なんですけどねぇ。間違いなく世界最強の男なんすよ?


 ちょくちょく魔物の大量発生とかで招集を受けたりするんすが基本的にハウスキーパーっす。メイドではなくハウスキーパーっすよ?


 そんな自分は家で女の子のパンツを洗うのが日課っす。みんなエグいの履いててドン引きするっす。たまに穴とか空いてるので補修するのも自分の仕事っすね。穴が空いたら新しいのを買ってほしいっすよ。流石にパンツはねぇ? 


 直すの大変なんすよ?


 自分は序列八位なんすけど一位から十位までは自分以外、全員が女性っす。んでもって、一位から五位はババアっす。こいつらは妖怪っす。人間じゃないので序列六位が暫定的に人類最強になるっす。


 その序列六位は和風剣士っす。黒髪ロングのパッツンで日本刀を振り回す危ない女の子っす。見た目に反して家事スキルはゼロ。良いとこのお嬢っす。この子は何故かパンツではなくフンドシ履いてるっす。なんかの仕来たりなんすかね。

 

 この序列六位の和風女剣士から序列十位までの五人で世界最強パーティーは結成されてるっす。女4の男1っすね。一騎当千が五人なので大体一億の魔物までなら相手に出来るっす。世界最強パーティーは誇張じゃないんすよ?


 でも恐ろしい事に女性陣の家事スキルは軒並み壊滅っす。まともな家事スキル持ちは序列十三位と十五位と十九位になるっす。二十位までいくと群雄割拠なんで序列が当てにならないんすよね。


 十五位も男なんで一緒にお酒を飲みながら愚痴を言い合ってたりするっす。憩いの一時っすね。ドラゴンも一刀両断出来るのに皿ひとつまともに洗えないんすよ、序列の上位は。そして何よりパンツがエグい。


 十五位も泣いてたっす。


『ロマンが……ない』


 意味が分かんないっすけど、何となく分かる気もするっす。


 男に比べて女性はやたらと頑強っすからね。世間はゴツい女ばかりっす。


 序列が高くなるほどに見た目は可憐になるんすよね、不思議と。六位の和風女剣士なんて、めっちゃ可愛い女の子なんすよ? フンドシなんすけど。


 五位までのババア等は本当に妖怪なんで一位から五位は除外っす。六位からが可憐ワールドっす。


 序列二十位以内はみんな可憐で清楚な感じの乙女たちっす。男ならこういうゴツくない女の子に憧れるんすよねぇ。腹筋がバキバキに割れてない女の子に。見た目もすごく可愛いんすよ。角刈りとかも居ないっすから。


 でもパンツはエグいっす。そこは序列関係無いっすね。序列十位の弓遣いなんてノーパン率も高いっすからね。


 せめてパンツは履いてほしいなーって思うっすよ。いや、ほんと。

 

 短パン装備だからノーパンでも大丈夫と本人は思ってるようっすが短パンが汚れるんすよね、かなり。短パンの痛みも激しいし。


 パンツにも意味はあるんす。ちゃんと。


 ……なんでこんなにもパンツに悩まされる暮らしをしてるんすか。


 自分、世界で八番目に強い男なんですけどねぇ。


 今日もため息が止まらないっすよ。


 


『世界最強パーティー。その実力は伊達じゃない?』



 自分は世界最強パーティーに入ってるっすけど、いつもはハウスキーパーやってるっす。毎日忙しくて大変っすね。


 で、他のメンバーはと言うと基本的にいつもだらだらしてる事が多いっす。自分の部屋で下着姿のまんま、のんべんだらりとしてるっすね。

 

 まぁうちらに依頼が来るときは本当にヤバイ事態なので、いつもは猫のようにだらけているのも戦士として正しい事ではあるんすよ。


 うちらが動くのは国の一大事が起きた時っすから。


 でもその下着姿で屋敷の中を動き回られるのは少し困るんすよね。


 痴女徘徊っす。


 いや、可愛いしセクシーだからダメじゃないんすよ?


 でも痴女徘徊っす。


 ちょっと前屈みになるっす。70度くらいは行くっすね。ほぼお辞儀っす。


 ご飯の時も下着姿で食堂に来られると本当に困るんすよ。六位のサムライガールなんてフンドシっすよ? 


 ここは天国っす。神様ありがとう。


 あ、勘違いされると困るので説明しとくっす。彼女達の格好は確かに痴女だけど、性に奔放な訳じゃ無いっす。むしろ貞淑にして倫理観は強い人達っす。エッチな事も子作りするのもこれと決めた伴侶のみ。まぁ当然っすよね。


 自分、勘違いはしてないっす。ハーレムうひゃひゃひゃ、なんて思ってないっすよ。肌色ドリーミングゥ! くらいっす。


 みんな故郷に許嫁がいるとかいないとかで話に花が咲いていたっす。いつも食事時は賑やかなんすよね。給仕も自分の仕事なんで自分は話に混ざらないっす。


 男は黙って引っ込んでろ。


 それがこの世界の常識っす。


 肩身が狭いっす。


 自分、一応序列八位なんで、そこそこに偉いはずなんすけどね。


 あ、この序列についても少し説明するっすよ。


 この世界には魔物がわんさといるんすよ。そういう世界観なんで。なので戦う事をお仕事にする人が沢山存在するっす。完全な農民なんて存在しないっすよ? みんなそれなりに戦えるように小さい頃から鍛えられてるっす。だからゴツいんすよねぇ……はぁ。


 半農半戦士。それがこの世界の農民っす。勿論純戦士には農民なんて敵わないっす。脳筋はすごいっす。


 そして男は基本的に弱いっす。男が十とするならば、女性は十と三っすね。大体三割増しっす。


 だから家の仕事は男の仕事、そんな常識なんすよ。


 三割はでかいっす。


 百発殴って倒れるところが百三十発っすよ? タフすぎっす。魔物退治は女の仕事。それがこの世界の常識なんすよ。


 たまにフィジカルで女に並ぶ男も出てくる事もあるっす。序列十五位がそれっすね。女に負けない筋肉は男達の羨望の的っすよ。自分よりも人気が高いんすよねぇ。十五位なのに。

 

 ……ね、十五位なのにね。


 自分、八位っすよ?


 八位ってすごいんすよ?


 序列の百位から二十位まではわりと適当な所があるっす。ここまでなら努力でなんとかなる世界なんすよ。男もちらほらいるし。


 でも二十位より上位に行くには偉業を成す必要があるっす。ドラゴン狩りとかっすね。魔物の大発生で活躍したりとかもポイント高いっす。


 十位のノーパン弓遣いはドラゴンハンターっす。百を越えるドラゴンを撃ち落とした強弓の射手。その偉業を称えて十位になったんす。


 自分、それよりも上っすよ?


 なのに十五位よりも影が薄くて……世間からは『八位の人』とか呼ばれてるんすよ? 誰も名前を覚えて無いんすよ? 『エイトメーン』も勝手に付けられた名前なんすよ?


 そしてパンツ洗ってるんすよ? いや、パンツはまぁ、アレっすけど。ふんどしもアレっす。


 現実って優しく無い。言いたいことはそういう事っす。


 お風呂に入るのも自分が一番最後だし。残り湯で洗濯すると汚れが落ちやすいんすよねー。洗剤の泡立ちもいいし。新鮮パンツも時間を置くと強烈な毒物に変化するんでその日の内に洗濯するのが基本っすよ。


 現実って本当に容赦無いっす。白いパンツはこまめに漂白しないとダメなんすよ。現実は漂白剤が必須っす。


 あ、どうでもいいけど更に説明っす。一位から五位は妖怪ババアなんで除外するって言ったけど、こいつらに認められないと十位よりも上には行けないっす。


 そういう仕組みっす。実力と人格を加味して序列は決められるって事っすね。


 この妖怪ババア達は人間じゃないっす。だから認められても嬉しく無いっす。むしろ不愉快。


 五曜と呼ばれるこのババア達は世界の調整者と呼ばれる事もあるっす。でも、こいつらの呼び名なんて妖怪ババアで十分っす。


 世界各地の異変に気を配り、いざ事が起きれば序列上位者を各地に派遣させるのがこの妖怪達の仕事っす。


 ぶっちゃけ人材派遣会社っすね。


 この序列上位ってのが実はこの世界でものすごく重要になってくるっす。


 序列百位以内に入った者は世界各国で引く手あまたっす。勝ち組確定っすよ。少なくとも実力はある。そうでなければ百位にはなれないっす。


 乱暴者が多いのも百位前後の特徴っすかね。勿論ゴツい奴等のオンパレードっす。スキンヘッドとか刺青とか普通に居て引くっすよ。四十位辺りから可憐ゾーンに入るっす。


 この辺になると王室からのプロポーズもちらほら来るっす。やっぱりゴツいのよりも可憐な方が良いって事っすね。


 六位のフンドシ娘は世界各国の王室からプロポーズされまくりっす。強くて可愛い。まぁそうなるのも当然っすね。


 この世界は『強さが全て』と言っても過言ではない世界なんすよ。


 だから……もっと自分をちやほやしてくれても良いと思うっす。


 八位っすよ?


 引く手あまたの百位圏内ではなく一桁ナンバーっすよ?


 自分はいつまで乙女のパンツに囲まれる事になるんすかー!


 紐パンは干しにくいから止めてほしいっすー! だって紐なんすよー!


 ……紐なんすよねぇ。こんなんで本当に大丈夫なのかなぁ。どう見てもパンツではなく紐っすよ?


 序列九位のパンツは紐っす。普通のパンツはダメなんすかね。




『お仕事キター! パンツは夜に洗う?』



 おっす! おらエイトメーン。


 今日は魔物退治のお仕事で外にお出掛けっす。


 スタンピードとかモンスターパレードと呼ばれる事もある『魔物大量発生』が起きたっす。


 自分が派遣された場所は大国間を繋げる貿易路のひとつ。ここを魔物に潰されると世界経済に深刻なダメージが出るので自分が派遣される事になったっす。


 自分、これでも世界八位の男っすから。出掛けるまで掃除とかしてたけど世界八位の猛者なんすよ?


 今回派遣されたのは自分と序列百位以下の有象無象が千人っす。


 ぶっちゃけ荒くれの群れっすね。たまーに可愛い娘が紛れてるっす。あとでお名前を聞いとかねば。


 魔物の大発生はそれなりの頻度で起こる自然現象としてみんなに捉えられているっす。困りものではあるっすがこれによって世界に漂う『なにか』の流れが正常化されると考えられているっす。


 だから魔物の大発生を阻止するのは善くないことであるとされてるっす。でも一度起きた後なら潰しても良いことになってるっす。大発生が起きるのはいつも人里離れた場所。そこから大移動が始まるっす。発生直後に潰したい所っすけどそれをやると滅茶苦茶怒られるっす。


 手を出して良いのは移動してからなんすよねー。


 ぶっちゃけ魔物大発生ってかなり面倒な仕事っす。


 基本的に万越え。魔物の大発生っすよ? 毎回被害甚大っす。今回も大移動に呑まれた村や町が幾つもあったとか。事前に避難してたから人的被害は軽微とは言うものの建物は全滅っすよ。


 いやー、面倒っす。


 建物の再建も仕事に含まれてる気がして滅入るっす。こりゃ間違いなく……夜まで掛かる案件っすよ。

 

 一応冷蔵庫に夕飯も用意だけはしておいた……ダメだ。温める事すらあの下着娘達には高難易度クエストになるっす。


 くっ、干し肉でもテーブルに置いておけば良かった!


 というか外で食えばいいんすよね。うん。多分そうするっすよね、あのポンコツ達でも。うんうん。


 というわけでお仕事開始っす。


 万を越える魔物の群れに対抗するため、道のど真ん中に立つ自分とその他諸々。


 序列八位の自分が一番前に立っていて、その後ろに有象無象の戦士達がずらーっと控えている状況っすね。


 隊列という隊列ではないっす。何となくの隊列っす。ぶっちゃけ今回は接待スタンピードになるので。


 今回招集された千人の戦士達はいずれも『初めての魔物大発生討伐』っす。


 一度は魔物大発生を間近で体験しておくべきとの教育的イベントになるっす。


 いやー、子守りっすよ。ぶっちゃけ。地鳴りがしてきたけどまだかなり遠いっすねぇ。魔物の海が見えてきたっすよー。いやー。何度見てもすごい光景っす。


 後ろのマッスル戦士達から動揺の声が上がってるっすね。確かに壮観。今すぐ尻まくって逃げ出したくなるっすよ。前から押し寄せてくる巨大な波。視界一杯に魔物の波が見えるっす。本能的な恐怖を感じるっすね。


 でももうちょい近付かないと本当の恐怖は味わえないっす。あの魔物達って虚ろな眼をして動いてるんすよ、実は。


 間近で見ると超怖いっす。ぶっちゃけ漏らすっす。


 スタンピード限定なんすよね。なにかに動かされている、そんな様子の魔物達。レアっすよ。襲ってくるときも虚ろな眼っすからね。


 ……あ、後ろでなんか騒いでるっすね。有象無象の一部が逃げ出し始めたっすか。まだ距離はあるというのに。


 ここで逃げちゃうと評価がだだ下がりになるんすよね。自分も最初は逃げたっす。だって怖いもん。あれは怖いもん。無理っすよ。


 ……あれ? 後ろから聞こえてくる悲鳴が……おかしいっすよ?


『あんなモヤシと心中なんて御免だよ!』とか『序列八位なんて抜かす大法螺吹きに付き合ってられっか!』とか聞こえるっす。


 ……そんなに弱そうに見えるかなぁ。自分、八位なんすよ? いや、本当に。


 ……あれ? 本当に八位だったっけ? あれー? なんか自分も怪しい気がしてきたっすー。自分はただのパンツ洗いだったっけ?


 ……人形さんや、どう思う?


『うぎぎぎぎ?』


 ……そう言えば発声器官は付けてなかったっすね。どうやってこの子は喋ってるんすかねぇ。まぁいいや。とりあえず突撃っすー。みんなー、お仕事っすよー。


『うぎぎぎー!』


 地面のあちこちが盛り上がり土塊となす。そこから大量の土人形が生まれ出でて……一気にダッシュを掛けたっす。


 なんで人形達は毎回初手ダッシュを掛けるのか疑問っす。


 魔物の海にダッシュで立ち向かう土人形達。自分の作った『土人形』は今も地面から続々と現れていきダッシュを掛けているっす。


 自分が序列八位になった理由がこれっすね。


『スタンピード喰らい』


 自分の二つ名……誰も呼んでくれない二つ名っす。悲しいけど世界で一番スタンピードを潰してきた男。それが自分っす。本当っすよ?


 ……本当っすよ? 


 土人形君は疾走の勢いのまま魔物にフライングタックルをかまして土に返って行くっす。一人一殺。人間の半分くらいのサイズとはいえ十分質量兵器になるっす。土人形君はまだまだ生まれ続けるのでいつかは魔物の海も殺し尽くせるという特攻戦法っすね。


 天職が『ドールマスター』たる自分に掛かれば同時に生み出せる人形の数は五百体。それが絶え間なく生み出せるのなら……万の軍勢なんて一分もせずに揃うものなんすよね。


 今回はそこまで強くない『土人形』にしたので蹂躙劇が長く楽しめるっす。一人一殺も中々に難しいっすね。何せ土人形っすからねー。石人形だと一気に強くなっちゃうんすよねぇ。この辺の塩梅が接待スタンピードの難しさっす。


 新人さんを程ほどに怖がらせつつ仕事をこなさないといけない。


 最早職人と言えるほどに自分は調整上手になっているっすよ。


 でも誰も『スタンピード喰らい』とは呼んでくれないっす。


 何でかなぁ。潰してきた魔物大発生の数は百や二百じゃ効かないのに。一日で三回のスタンピードにぶち当たった事もあるのに。


『うぎぎ?』


 ……おや? 土人形君が困っているっすね。敵が居ないと。もう終わってしまったっすか。今回も無事に終わって何よりっす。


 ……とりあえず土人形君は逃げた新人にお尻ペンペンしてきなさい。


『うぎぎぎー!』


 新人達から悲鳴が起きてるっすね。うんうん。ドールマスター舐めんなよ? 世界八位は伊達じゃないって所、見せてやるっすー!


 


『だからどうした! おらは世界最強の男っす!』



 おっす! おらエイトメーン。


 この前の仕事で新人の大半が心を折ったっす。なので自分は滅茶苦茶怒られたっす。妖怪ババアに呼び出されて二時間の説教を受けたっす。


 ……長いっすよ。正座っすよ?


 こっちの心が折れるっす。


 序列の降格話も持ち上がったとか言ってたっすねぇ。降格したら妖怪ババアからの要請を全部無視できるからそれはそれで嬉しい事なんすよねぇ。一桁と二桁はそこが違うんすよ。


 むしろ下げてくれとは面と向かって言えないっす。相手は妖怪。倒す準備をしてからでないと。土人形では話にならないっす。


 人類に対する貢献度で見ると断トツに働いてる自分。そんな相手に対して妖怪どもは何を考えているんすかねぇ。


『ますたぁ。お掃除おわたー』


 うむ。ご苦労っす。君達は休んでていいっすよー。


『あいー』


 ぬいぐるみ部隊による掃除が終わったとなると……次は飯の支度っす。おばちゃん型ドールの援護に向かうべきか、それとも洗濯班の応援に向かうべきか……。


『マスター。洗濯は既に終わっております』


 ぐっ! 干すのは!?


『既に終わっております』


 ぐぬぬ! メイド型ドールは優秀過ぎるっす! お疲れさまっす!


『わたくしは優秀なメイドですから』


 ……あれ? こんな返答アルゴリズム入れてたっけ? 


『厨で救援要請が出されております』


 了解っす! ……あれ? 自分の方が使われてない? あ、メイドが先に背中向けて行っちゃった。自分、マスターなんすけどー? あれー? まぁいいっす。おばちゃんの救援に行くっすよー!


 厨房に着くとおばちゃんドールにめっちゃ怒られた。人手が足りないと。


 ……ドールマスターも万能ではないんすよ? 

 

 おばちゃんドールの指示で馬車馬のように働かされたっす。自分……マスターのはずなんすけどね?


 そしてこの日の夜。夕飯の後に会議が開かれたっす。


 自分は世界八位から転落することになったっす。


 自分は降格処分を受けて世界最強パーティーから追い出される事になったんす。というか屋敷からも追い出されたっす。ドール共々。


『復讐系ざまぁ物語開始!?』


 新たな物語の開始っすよ。


 今まで散々こきつかわれていた自分が下着娘達にあんなことやこんなことをしてしまうっす! 


 復讐だから合法っす!


 許嫁なんて知らねぇ! っす!


 因みに自分の降格先、新たな序列は十五位。


 あいつと入れ替わりっす。


 頑張れ新たな八位よ。


 毎日パンツを洗って過ごすのだ。お掃除も頑張れ。料理も頑張れ。世界最強パーティーの面々は人見知りが激しいから一般のメイドとか雇えない。だから八位よ、お前が頑張るしかないのだ。


 自分は久し振りに休暇を取って旅をするっすよー! 復讐なんて下らねぇ事やってられっかー!


 ぬいぐるみ達よ!


『あいー』


 メイド部隊!


『温泉ですね?』


 いや、そこまではまだなんとも。おばちゃーん!


『温泉かい。良いねぇ』


 あれ? なんか温泉一択っすか?


 まぁいいや。


 温泉に行くっすよー!


『あいあーい!』


 ……ぬいぐるみ達も温泉に入るつもりっすね?


 防水処理しとくっすか。 



 


 こうして序列八位の『スタンピード喰らい』はひっそりと歴史の表舞台から消えていった。そして彼が居なくなった事でスタンピードによる甚大な被害が世界各国で起きることになる。


 世界最強パーティーも各々スタンピード狩りに派遣されるも、かつてのパフォーマンスをまるで発揮出来ずに人類は窮地に立たされる。


 五曜の老婆達は急いで『スタンピード喰らい』の序列を元の八位戻したが、彼が戻ることは決して無かった。


 世界最強パーティーは瓦解。


 序列制度もその信用を急速に失っていく。


 世界は魔物に恐れる暗黒時代となりつつあった。


 とある地方を除いては。






「いらっしゃいませっすー! ドール温泉にようこそっすー!」

 

『おいでませー』


 人里離れた場所にぬいぐるみ達がお出迎えしてくれる温泉宿があるという。


 メイドが給仕してくれる不思議な温泉宿の売りは美味しいご飯と素敵な温泉。


 ぬいぐるみ達が背中を洗ってくれる夢のような温泉宿がこの世界の何処かにあるという。

 

 その宿に泊まると翌日にはパンツが真っ白になっているという不思議な現象も起きる摩訶不思議な温泉宿。


 この宿がある地方は末永くスタンピードに悩まされる事は無かったという。




 今回の感想。


 なんだこれは! なろうっぽいぞ!?


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