06 変化 〜エミリー視点〜
ベルと気が済むまで話した翌朝、ベルが眠るベッド脇には神妙な面持ちをしたエミリーがいた。
エミリーはベルの顔を眺めながら、あることを考えていた。
それはベルの変化についてだ。
目を覚ましたベルはエミリーの記憶に残っているベルとはまるで違った。
言葉遣いの上品さや内から漂う公爵令嬢らしい仕草は変わらないのだが、以前のベルならエミリーのような使用人に対してもっと雑に対応していたし、子供でありながらも自分の立場を理解しているように振る舞っていた。
だが、目が覚めた後のベルはエミリーが寒そうにしているからと毛布をかけ、驚くエミリーに対してそれが当然だという。
それに、二人で話していたときの表情はまるで幼い子供のようだった。
それはなんだかまるで、
「人が変わったみたいな…」
エミリーが小さい声でそう呟くと、ベルは眉を顰めて身をよじった。
エミリーはしまった、というように自身の手で口を覆う。
しばらくすると、ベルは先ほどのように美しく安らかな寝顔に戻った。
――ありえないよね。
エミリーは想像力が豊かな自身に静かに苦笑した。
そして、先ほどベルが少し動いたことによってずれた毛布をきれいにかけ直す。
ーーきっと、記憶がなくなった影響だわ。うん、きっとそうよ。
エミリーは頭の隅に残った疑問をかき消すようにそう言い聞かせ続けた。