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 数々の屈強な男達(不良)でさえ阻むことのできなかった桜の拳。その鉄拳をピタリと止めて見せたのは、猛獣超獣の類ではなく、意外にも部屋に鳴り響く単調なアラーム音だった。死線の目の前で寸止めを受けた勝の口からは魂がはみ出す、ことはないが、究極のビビりにはこの手の方が効果抜群なのは、再び失神してしまった本人を見れば一目瞭然だった。が、桜の視界にはもはや勝の存在は背景以下と化していた。


「なに……着信? 00000000000――って、んな電話番号あるわけ……」


 ないと思いながらも、通話ボタンを押す桜だった。


「――はい、もしもし?」





              *** ***





 はるか天空にまでその手を伸ばす光柱。まばゆい光の中、全身を包み込むぬくもりは、ひだまりのように優しく、リルファはその懐かしい感覚一杯に抱かれ、瞼を閉じる。瞼越しにさえまばゆい光の色は淡い緑。今まで胸の内にだけ仕舞っていた自分の魔力との初めての出会い。それは、親友との出会いのように、なぜかお互いに目を合わせただけで知らずに微笑んでしまうような、共感と似ていた。


 部屋を飲み込む炎は光の洗礼の前に消え去り、焼け残った部屋の中心でリルファは呟いた。


「――届いた」

「届いちゃったの!?」


 リルファの足元で、黒猫のトトは絶望の悲鳴を上げる。





              *** ***





「もしもし? もしもーし……。なに、このひどいノイズ……まさか壊れてんじゃないでしょうね……ったく」


 すぐさま、通話を切る桜だった。





              *** ***





「えっ! あ、あれ!」

「な、なに。どうしたの、リルファ?」

「分からないけど、分からないけど……なんか、切られちゃったよぅ」


 今の今まで健気に気丈に振る舞っていたが、緊張の糸が切れたせいかおどおどとトトに涙目を向けるリルファだった。


「――リルファの中で一体何が起こってるのか僕には見当もつかないけど、召喚失敗と受け取っていいのかな。それでこそリルファだと僕は思う」





            *** ***





「――なによ、また着信? ……さっきと同じ番号。無視ね」





            *** ***





「な、なんで!? 届かなくなっちゃったよ、トト?! ううん、なんか、届いてるんだけど無視されてるのが手に取る様に分かる……なんでぇ?」


「その抽象的な表現だけじゃなんとも言えないけど、現実は厳しいってことだと僕は思う。もう、諦めようよ。そもそも召喚魔法には正式な儀礼があるって話だよ。僕も詳しくは知らないけど、思いつきでうまくいくような魔法じゃないんだ。幸い今のリルファの魔力で炎は消えたから、今のうちに逃げ――」


「思いつきじゃないもんっ!」


「リ、リルファ……」


「成功するまで何度だって挑戦する! トトは今のうちに一人で逃げて!」


「そんなことしたらシェリーに後で殺されるけど、召喚が成功しちゃっても僕は後でシェリーに殺される。これってひどい運命だと思わない?」





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