第四章 思い出
■第四章 思い出
その後も麗子とは、男女の関係が続いた。
好意を持ち健康な身体の男女であれば
自然のことだったと思う。
その日も、私は麗子を激しく求めた。
麗子の心臓の鼓動は激しく、発汗していた。
白い綺麗な肌はピンク色に染まっていた。
目を閉じ、能面のような絶頂の表情から、
徐々に美しい麗子の表情に戻り始めていた。
「こんないいのは初めてだよ」
と麗子は少し照れながら小さい声で言った。
「同じだよ。すごく良かった」と私もこたえた。
「女は子供を産んだ30代が一番良くなるんだって」と麗子は笑った。
「男は30代から衰えてるよ。たぶん」
「卓也さんは49だっけ、すごいよ」
「え~褒めてくれるんだ。麗子がいい女だからだよ」
「私のこと好き」と麗子は聞いてきた。
「最初からずっと好きだよ」と言った。
「じゃ~名前からちゃんと言って」と目をじっと見つめてきた。
「麗子が好きだよ」と目を見つめて言った
「麗子は?」と私が聞くと
「まあ、普通かな」と言って嬉しそうに笑った。
「普通なら良かったよ。少なくても嫌いじゃないみたいで」
と私も笑った。
麗子に好きと言われることは、この後も一度もなかった。
ただ、麗子には何度も好きと言わされた。
自分の価値を確認する儀式のようだった。
麗子はお茶目でおどけているようでいて、
実は自尊意識が低かった。
気が強いようでいて、それは気の強い女を演じてるだけだった。
麗子は誰かに愛されていることを確認することで
心の平穏を得ているように感じた。
「最初に会った時のこと覚えている?」と聞いた。
「卓也さんと初めて会った時の印象は・・・」麗子は言った。
「素敵なスーツだなと思った」
「他の社長さんとは全然違ってた」
「体にフィットして、高級スーツって感じ」
「卓也さん、お腹出てないしスタイルいいし」
「え~印象はスーツなんだ」と私は笑った。
「まあ、正直言えばそんな好きなタイプでもなかったかも」と麗子はお道化て言った。
「私のこと気に入ってるのに、必死に隠してるところが可笑しかったよ」
「そんな態度取ったかな~」
「目がもう、ギンギンに輝いてたよ」
「獲物を見る目だった」と麗子は笑った。
「イジワルだな~。それイジメだね」私は笑った。
「卓也さんのギンギンは、別に私は嫌じなかったけどね」麗子も笑った。
「じゃ~銀行で再会してランチ誘ったときの印象は」
「そうだな~」と麗子は何かを思い出す表情。
「あの時は、断ったらショック死しそうな雰囲気だったから付き合った」楽しそうに笑った。
「ボランティア活動だったんだ~」私はお道化た。
「まあ、そんな感じかな」
「その時もスーツが素敵だったね」
「またスーツか~」と私は笑った。
「でもさ~今ここに一緒にいるってことは、そういう事だよ」
「好きなタイプでもなかったけど、普通になったってこと?」私は聞いた。
「まあ、そういうこと」と麗子は答えた。
「いっぱい話したら喉が渇いたので、水を飲ませて」と麗子が言った。
コップとペットボトルを取ってあげた。
いたずらっぽい顔をして
「そうじゃなくて」
と私の唇と自分の唇とボトルを順番に指さしていた。
「やったことないからうまく出来るかな」と言うと
「私だってやってもらったことないよ」
「卓也さんはキスが大好きでしょう、だからできるよ」
「え~好きかな」
「あ~とぼけてる。キスめちゃくちゃ好きだよね」
と私の目を見てくる。
口から口へ飲ませてあげると、うっとりした顔で麗子は
「おいしい」と言った。
「すごく美味しいから、私もしてあげる」
と言って同じようにペットボトルの水を飲ませてくれた。
確かにその水は、全体はまろやか感じがして
中は冷たく感じた。
初めての経験だった。とても美味しかった。
麗子とは何度でもできた。
それは麗子にとって驚きだったらしかった。
「え~まだできるの」と言って、
硬直していることを確認するといつも嬉しそうだった。
「ほんとうだ。すごいね」と言って応じてくれた。
「私の体が役に立ってるね」
「女は本能的に何度もできるんだよ」と言って笑っていた。
麗子とは体の相性が最高に良かった。
俗にいう肌が合うということなのかと思った。
どんな体位でも、うまくいった。
卓也さんと別れて家に帰る途中に卓也さんのが出てきて
「下着が汚れるんだよ」と言って笑った。
「あ~出て来てる~ってわかる。ちょっと気持ち悪いし~」
「それがちょっと変なニオイなんだよね~」
「もう、変なこと言うなよ」と私が抗議すると、
「ごめんね~」
と麗子は楽しそうに笑って私に抱きついてきた。
麗子はセックスの最中は大胆で激しかったが
終わった後は必ず体を隠した。
裸のままで部屋を歩くことは決してなかった。
バスタオルやガウンで肌を隠した。
スタイルが美しいからそのままの姿を見たかったが
それはなぜか拒んだ。
いつまでも恥じらいや品のある女だった。