第1話 アギラカナ超空間航行中
ゼノ主星に向け超空間にジャンプインしたのが12年前。
12年間。一言で言うと暇だった。それで、俺はへたな小説を書きまくった。帰ったら俺は小説家になるんだ。ん? まずい、これはフラグか? それはないな。
ペンネームはそうだな、山のふもとで遊んでいる人、山口遊子、なかなかいいペンネームだ。現アギラカナ代表の書いた小説だ、売れないわけがない。
そう思って、執筆(キーボードを叩いているだけなのに執筆とはこれ如何に)始めたのだが、まずは何を書くか決めなくてはならない。
うーん。これは、やはり俺の壮大な半生を描いた私小説風ドラマしかない。どれどれ、……
どこから、書き始めるかなー、そうだ! あそこからにしよう。
あの日は、残業が終わって、事務所の玄関先で、夜空を見上げたら、流れ星が見えたんだっけ……
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「あれ、今のは流れ星か? 大きかったな。思った以上に速い。あんな短時間じゃ願い事は無理だな」
午後9時過ぎ、街の明かりのせいで、3等星以下の星はほとんど見なくなった夜空だが、今日は雲もなく運よく流れ星を見ることができた。あしたはいいことがあるかもしれないな。
俺の名は、山田圭一、歳は四捨五入の四捨すると30。今日も金属材料の強度検査で残業だ。最低限の人手でぎりぎりやっている職場のため作業量が急に増えると残業でこなしてゆくしかない。何人かいる女性社員は早めに帰すようにしているが、それでも午後7時を越えることはざらである。
上からは、作業を早めるよう催促されるが正確な検査をするためには時間がそれなりにかかる。検査機器も自動で何でもできるような最新式とは違い、検査員がつきっ切りで作業しなければならない旧式だ。
今日の作業がやっとひと段落したので、検査機材をチェックし帰り支度を済ませて事務所の玄関を出たところだ。
ここは市街地からやや外れた郊外にある検査施設なので、通勤は自家用車か郊外バスでのそれが主流になるが、この時間だとすでに最終バスは終わっている。
会社の駐車場に停めた愛車の軽に乗り込みエンジンをかける。
今日も途中のコンビニでパックご飯と総菜物を買って帰ろう。まだ残ってればいいが。運転席から守衛のおじさんに挨拶して会社の敷地を後にした。
毎日同じ作業の繰り返し、あまり頭を悩ますことはなく普通にやっているだけで給料がもらえているのだからありがたい。毎日夜の9時、10時と残業することが普通なのかはさておくとしてだが。しかも、曲りなりのも管理職であるいま、この時間では深夜手当もつかず全くのサービス残業だ。手取りは、平社員だった数年前とさほど差はない。
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ほう、書いてみれば、書けるじゃないか。
あれっ? 調子に乗ってすらすら書いていたはずなんだが、もう3時間も経っている。この字数で3時間。うーん。素人が書いたにしては早いのか? よくわからん。途中で、コーヒーを淹れたりして休憩が長ったからな。
そう言えばあの頃は、仕事が大変だったなー。あんな会社だったが、今はどうなっているのか気にはなる。
[あとがき]
なろうでの『宇宙船をもらった男、もらったのは星だった!?』250万PV達成で思いついたもので、次話以降の予定はありません。
『宇宙船をもらった男、もらったのは星だった!?』250万PV達成で思いついたもので、次話以降の予定はいまのところありません。