エピローグ
パーティーが盛り上がっている最中、亘宏はお酌をしている侍女・加奈を見つけた。
「加奈さん」
亘宏は加奈に声を掛けた。
「君を探していたけど、助けてくれてありがとう」
「ありがとうございます」
加奈はかつての様に丁寧にお辞儀をした。
「ですが、どうせならもう少し頼りになるところを見せてくれると良かったのですけどね」
「……それはゴメン」
実際、自分は加奈に頼りがちだった。
「ところで、君が小さく『早くここから逃げた方が良い』って言っていたけど、どうしてあんな事を?」
すると、加奈は少し考えた後、打ち明けた。
「実を言いますと、私は亘宏様がゲームに失敗すると予想していました」
彼女の口から出た理由に、亘宏は「えっ?」声を漏らした。
「ど、どうして?」
亘宏は困惑しながら加奈に尋ねた。
「キャバレーの時にも話しましたが、亘宏様の事はこちらで事前に調べていました。ですが、いくら訓練を受け、かつ私のサポートがあるとはいえ、現在の能力では、今回のゲームをクリアする事は難しいと判断していたのです。ですから、もしあなたが屋敷から逃げる事を選択した場合、事前にこちらで車を用意していました。そうすれば、ゲームも中断になりますからね」
彼女が僕をそんな風に思っていたなんて。まぁ、あんな調子じゃそう思われても無理は無いが。
「でも、それでもあなたは現状を変えようとした。木水の言葉にも惑わされず前に進む事を止めなかった。それは素晴らしいと思います」
彼女から褒められて、嬉しくなった。
だが、気になる事は他にもある。
「ところで、キャバレーでのあの気の強いキャラやお兄さんの話はどこまでが本当なの?」
すると、加奈は軽く微笑みながら答えた。
「それはご想像にお任せします」
「えーっ。そこが一番気になるところなのにー」
亘宏は口を尖らせたが、加奈は涼しい顔で話題を変えた。
「ところで、亘宏様。これからはどうするのですか?」
それを訊かれて、亘宏は少し考えた。
「そうだな。まずは家に帰ったら両親に謝る。あの二人には迷惑を掛けたからね。その後は就労継続支援施設に通う。上手くいくかは分からないけど、いつまでもくよくよしている訳にはいかないからね。それが終わってお金を貯めたら両親に親孝行をする。それが当面の目標かな?」
亘宏の答えに「亘宏様も随分と成長されましたね」と感心した。
「でしたら、先程の言葉はよく覚えてくださいね。もし、しばらくしたらあなたに会いに行きますから。その時に、ニートのままだったら承知しませんからね」
そりゃそうだ。あんな出来事があったにも関わらず「やっぱり駄目でした」というオチになったら、もう二度と彼女達に合わせる顔が無い。
「分かった、約束するよ」
加奈との約束をかわすと、亘宏はパーティーに戻った。
これにて完結です。この後、修正作業に入ります。感想、評価ポイントよろしくお願いします。




