1ページ目 粗末な自己紹介
「おいテメエらああ!! なにワシらほっといて新たなる物語への扉を開こうとしとんのじゃあああ!! 自分で言うのもなんやけど、よくこんなキャラ濃い集団を放置しようという結論に至ったな!!」
「普通そういう大事な話はワシらを追い払ってからするんとちゃうんかい! ワシらどんな顔してそのやりとり眺めとったらええんじゃゴラァ! 気まずさがすごいわ!!」
いきなりの美少女の登場にすっかりインパクトを奪われてしまった餓舞裏獲流の皆さんが、青筋をメキメキ立てて怒っている。
「あぁ悪い悪い、暴走族っぽい形の雲かと思った」
「オマエ助けが来た途端に余裕ぶっこきすぎやろ!! さっきまでのオドオドどこいったんじゃ!!」
「もうええわ!! そこのワケ分からん女もろともハチの巣にしたれぇぇ!!」
餓舞裏獲流が同時に弓を引き、俺たちに向けて無数の矢を放った。
「ちょっ、こんなの避けられ……ぐえっ!!」
女の子は喋ってる俺を遠くへ蹴り飛ばした。舌噛み砕きかけた。
「ゴチャゴチャ言ってないで下がって」
「いってて……ずいぶんと乱暴なお嬢ちゃんだな……つーかあんたも早く逃げろ! 一人であの量の弓矢を捌き切れるワケ……」
俺の忠告を聞かず、女の子は眉一つ動かさずにその場に立ち尽くしている。
俺はたまらず彼女を庇おうと駆け出した。
その時だった。
彼女は突如、大きく息を吸い、右手を前に突き出した。
「天華盾法………【露返し】」
その手が勢いよく空を凪ぎ払うと、まるで鏡に反射されたかのように弓矢の軌道が180度変わった。
そしてそれらは攻撃を仕掛けた餓舞裏獲流さんのもとへ、一目散に飛んでいく。
「なっ、なんやと!? ギゥフヮタイイイイイイイイイイ!!!」
「ゴヌォヒコアアアアアアアア!!!」
「テポユョケオオオオオオオオ!!!!!」
餓舞裏獲流は急なカウンターにまったく反応できず、返ってきた弓矢がキレイに命中し痛々しい悲鳴をあげる。断末魔がもれなく画期的。
「ちっ、ちくしょう!! 覚えちぇ、おびょ、おびぉえぴぇ……………オラアアアアアアア!!!」
餓舞裏獲流は全身から血を流しながら、尻尾を巻いて逃げていった。『覚えてやがれ』ぐらい噛まずに言って!!
やかましい奴らが撤退し、残ったのは俺と女の子だけ。しばらくの間、沈黙が場を支配する。
…………気まずいの、苦手なんよなあ。
「えっと、助けてくれてありが」
「アンタ、なにやってんの?」
俺が喋り始めた途端に、女の子がキツい口調で問い詰めた。間が悪いったらありゃしない。
「下がっててって言ったじゃん。どうして私を庇おうとしたの?」
「気付いてたのか……いや、どうしてって言われてもな。そりゃ俺には特別な力なんて何もないし、あの蹴りからしてもお嬢ちゃんがめちゃ強いってのはなんとなく分かったよ。でもさ、やっぱり女の子に大量の弓矢が飛んでくるのを間近で見せられたら、お兄ちゃんも駆け出したくなるわな」
「…………変なやつ」
女の子はそう呟くと俺に近付き……
「その『女の子』って呼び方やめてよ。『お嬢ちゃん』もね。私はヒメラ。ヒメラ=ティルミナフ。見ての通り天使だよ。アンタの名前は……知ってるけど一応聞いておくね。礼儀だから」
……………ヒメラは、真っ白な手を差し出した。
なーんか、やりにくい子だな。紹介も雑だし。
「あーっと……心を読めるやつにわざわざ名前を言う必要はないと思ったが、おたくの言う通り礼儀だから名乗るわ。ご存知、小谷 彩多だ。男だ。よろしく」
こちらも自己紹介を終え、ヒメラの手を取った。
「なんつーか、こんな粗末な紹介ですまねえな。でも仕方ないんだ。俺は……」
「分かってるよ。名前以外の記憶がない、でしょ?」
「……心が読めるってのは本当に便利だな。俺もぜひ習得したいもんだ。コツとかあんのかい?」
「アンタに会ってほしい人がいるの。ついてきてくれる?」
「……心が読めるってのは本当に便利だな。俺もぜひ習得したいもんだ。コツとかあんのかい?」
「アンタに会ってほしい人がいるの。ついてきてくれる?」
「……心が読めるってのは本当に便利だな。俺もぜひ習得したいもんだ。コツとかあんのかい?」
「アンタに会ってほしい人がいるの。ついてきてくれる?」
コイツぜんっぜん人の話聞かねええええええ!!
三回同じこと質問されたら普通は答えるだろ! 三回ともまったく同じコースで打ち返してくるってどういうことだよ! 卓球のフェッショナルか!!
「……なんでツッコミを『プロか!!』じゃなくて『フェッショナルか!!』にしたの? そっちの方が面白いと思ったの?」
「どうでもいいことだけ反応すんなや!! いいからさっさと連れてけよ! 会わせたい人がいるんだろ!」
こうして俺はヒメラに手を引かれ、どこへなりと連れていかれるのであった。こいつ結構ボケキャラなのかな?
あと最初に突っ込むべきだったけど『餓舞裏獲流』て。