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11ページ目 これぞウリ科パワー


【おっかえりなさーーーい!! ヒメラちゅわんにサイタちゅわん!! 無事に帰ってこられたみたいでママうれぴー!!】


 教会に入ったとたん祭壇のモニターが点灯し、相変わらずケバい化粧を施したミュカレスさんが映し出される。


 そういえば『母さんとの連絡はここでとれる』ってヒメラが言ってたな。


【その様子だと、あたしの目に狂いはなかったみたいね! サイタちゅわんがものすっごい力に目覚めたのが、モニター越しでもビンビコビンビコ伝わってくるもの!】


 疲れてるときにこの人のテンションきつい……。


「母さん。今日の収穫は啼雲一匹だけ。でも…………あの啼雲、今までの奴らよりも強化されてた。巨大化とか分裂とか使ってきたよ」


【マジでっ!? やっぱり最近になって啼雲の……いえ、移怪全体の質が上がってるわねぇ…………まいっちゃうわ!】


 そこ『まいっちんぐ』じゃないんだ。


【まあとにかく、初戦を勝利で飾れたのは大きいわよ! サイタちゅわんも疲れたでしょお? 今日はぐっすり休んでねぇ!】


「ぐっすりって……いつ啼雲が出るのか分からない中で堂々と寝てられませんよ」


【その点は問題ナッシング! ヒメラちゅわんからも聞いてると思うけど、天使ちゅわんも贄薙ぎちゅわんも二人の他にいっぱいいるから! このマップを見てちょーだいな!】


 突如ミュカレスさんが画面から消え、代わりに例のマップがドドンと出現。教会の場所に俺とヒメラ……青と緑の点は変わらず。


 少し待っていると、赤い点……移怪が1つ、地図の上に打たれた。これは……また学校の方だ。


「おいヒメラ、これ…………」


「大丈夫だよ、見てて」


 ヒメラを信じて画面を見つめる。すると、緑の点が1つ出現し、赤い点へものすごいスピードで迫っていく。


 あっという間に赤い点が消え、緑の点も役目を終えたかのように地図からスウッといなくなった。


【復習しておくわね! 青の点は贄薙ぎ、緑の点は天使、そして赤い点は移怪! 今のは学校に出現した移怪を、天使……この子ちゅわんが倒してくれたってことよ!】


 この子ちゅわんってなに?


 再び画面はミュカレスさん、と…………その隣には、オレンジ色の髪をツインテールにしたややミニサイズの女の子が、ルビーのように赤く丸い瞳をキリリとさせた、真剣みあふれる表情で立っていた。


 ヒメラやミュカレスさんと違って、やたらフリフリした白衣を身にまとっている。頭にも白いレースの被り物を……これって……。


【天使にも色々と職業というか、担当みたいなものがあってね!彼女は見ての通り、給仕係なの! 言わばメイドよ、メイデストよ、メイダーよ! 可愛いでしょ!】


「なぜ最上級から比較級へ格下げを……。さっきの移怪はその子が倒したんですか?」


【天使には全員、移怪を倒せるだけのチョー高い戦闘能力が備わっているわ! 啼雲が強化されてようがおかまいなしってワケよ! オマケに贄薙ぎだってたくさんいる! だからサイタちゅわんも安心して休んじゃっていいのよぉ! まさに花金(はなきん)ね!】


「今日火曜日ですけど…………あれ? 天使には移怪を倒せるような戦闘能力が備わっている? ていうことは、移怪の最低ランクである啼雲を倒せなかったヒメラは、天使の中でも落ちこぼ」



「天華刃法・最終奥義…………」



「まってまってまって!! 冗談だから! 落ちこぼれとか全然思ってないから! てかこういう茶番パートで最終奥義を初披露しようとするな!!」


【ヒメラちゅわんはまだ未熟なのよお! サイタちゅわんにも色々と苦労をかけると思うけど、愛想つかさないで仲良くしてあげてねぇ!】


 大天使の娘なのに未熟ってか。実戦経験が少ないのかな……。


【それじゃあそろそろ『テレビで学ぶズッキーニの磨き方』の時間だから、あたしはそろそろドロンするわね! 二人とも、これからも頑張ってねぇ!】


 ターゲット層どこなのその番組。


【あっ、そうそう! その教会なんだけどぉ、ホコリが多くてきったないでしょお? そんな不衛生なところで寝泊まりさせるのは心がズッキュンキュンだから、この子ちゅわんをそっちに送り込むわ! きっとすぐにピッカピカにしてくれるわよ! それじゃあバイビー!】


 ミュカレスさんが隣にいるメイド天使の頭を撫でながら、満面の笑みで手をヒラヒラと振ると、モニターが再び巨大マップに切り替わった。


『テレビで学ぶズッキーニの磨き方』が気になってあんまり話聞いてなかったけど、とりあえず俺がこのだだっ広い教会を掃除する必要はなくなったってことか?


「良かったね。それじゃあ私は当初の予定通り、『人間食べ歩き日帰りツアー』に出掛けてくるから。接客は任せたよ」


「『界にあるおいしいもの』もちゃんと言え!! 食人鬼クイズ大会の優勝商品みたいなツアー名になってんじゃねぇか!! あ、つーか……ちょっと待て」


 おなかをグースカ鳴らしながら足早に立ち去ろうとするヒメラを呼び止め、俺は自分のポケットをまさぐった。


「なに? まさか小銭渡してパシらせるつもり? 近いうちに殺すよ?」


「ちげえわ。憶測だけを頼りに殺害予告するな。お前、啼雲との戦闘で左腕ケガしてるだろ? 職員室からコイツをパクってきたから使いな。傷は浅いからこれで足りるはずだ」


 中からバンソウコウを2枚取り出して、ヒメラの傷口に十字型に貼り付ける。


「あ……バレてたんだ。アンタのことだから、自分の戦闘に手一杯で、私なんかお構い無しかと思った」


「寝ぼけたこと言ってないで早く行け」


「…………ありがと、いってくる」


 ヒメラは俺にボソリとそう告げると、人間『界にあるおいしいもの』食べ歩き日帰りツアーへと出陣した。


 なんかアイツ、出ていくときさっきより少しだけ足取りが軽くなってたような気がする…………。


 いや、気のせい気のせい。


 モニターが切り替わる音が聞こえる。画面に注目すると、ミュカレスさんがスナック菓子のようなものを食べながらテレビを観ていた。


【そうそう、サイタちゅわんにだけ教えてあげるわ…………みんなが知らないヒ・ミ・ツ】


 ミュカレスさんが人差し指を唇に当ててウインク。でも口とか手に食べカスついてるから色気が皆無。


「なんすか改まって?」


 ヒメラがいなくなったときに切り出してくるなんて……。


 ま、まさか、俺の過去のことについて何か……!?



【この『テレビで分かるズッキーニの磨き方』は、なんと今日で放送3000回目なのよぉ!!】



「どうでもいいわっ!!! まったく、期待した俺がバカでし……………いやどうでもよくない!! 何でそんな長寿なんすか!? くっそ気になる!!」



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