1-1話 マジかよ
初投稿です(#^^#)
出来る限り頑張ります。
よろしくお願いします。
距離にして10m位。なぜか女性と対峙している。
女性は左手で、ゆっくりと剣を鞘から抜き、剣先を下方に向けた。
わずかに手首を動かして剣の感覚を確認している。
剣の先が細かく動く。
ほんの数秒間の確認作業を終えると、女性は金色の長い髪を大きく左右に振り、そして目線を俺に向けた。
剣先を俺の方に向けてピタッと止める。
「最後に貴公の遺言をきいてやろう」
全身から冷や汗が流れ出す。戦闘など経験のない俺でも本能でわかる。
やばい!!!死ぬ!!
慌てて剣を抜いた。
腰を少し落とし、急ぎ抜いた剣を前方に立てた状態にして相手さらに距離を置いた。
「争う気はない」
大きな声を出す。
剣を抜いた段階で争う気はないと言っても説得力ゼロ。
慌てすぎて状況はどんどん悪化していく。
2人の周りにはいつのまにか野次馬で囲まれていた。
涙目の俺は野次馬をキョロキョロ見渡すが、聞こえてくる声は
「金髪頑張れ!」
「キレイな子いいなあ」
俺の応援ゼロ。まあ誰も助けてくれないな。
金髪の女性はニコリとした。
整った顔立ちの女性は本当に奇麗な人だ。剣は帯刀していたが、防具を着けずに厚手の赤いワンピース姿はとても似合っている。こんな状況でなければナンパの一つでもしたい気持ちになる女性だ(まあそんな勇気もないが)。ただ、残念なのはせっかくのワンピースが土で汚れてしまっているところだ。
ああ、汚してしまったのは俺か・・・
白昼堂々街中で決闘なんて、普通なら警察がとんでくるだろ?!
よし、とりあえずは時間を引き延ばしてみよう。
「服を汚してしまったのは悪いけど、本当に悪意があったわけじゃないんだ!」
真っ黒な瞳は俺に向けたまま
「悪意がないが遺言でいいか。」
・・・遺言じゃないし!!
目線を一度そらし、天を仰いだ。なんでこうなった!
異世界転送一発目で人生お終い。
ふぅー。
大きく息を吐いた。
「なぜか貴方の上に、てん・・・」
さらに、言い訳をしようと話す途中で空気が変わった。
金髪女性を中心にして大きく空気が円を描くように振動する。
左足を後ろに下げ左腕を後方、剣を水平にして構えた。
「衛兵が来る前に決着といこうか!!」
時間かせぎなんてさせてもらえない。
くそ。俺は剣を強く握った。リズムに合わせて剣を受けてみるか・・・
金髪女性の剣が左右に大きく揺れる。早い!
剣が見えない。
なんなんだこの女性は?
どんどん加速して腕すら見えなくなってきた。
うん、リズムをとるなんて無理だな。ピアノの速弾が得意な俺でも見えないなんてどんな動きなんだ!!
「我が剣を止められるか!さすれば従者の称号を与えよう」
わずかに腰を落とし地面を蹴った。
一気に俺との距離を詰めた。
とっさに右側面に剣をだす。
時を戻して十数分前までは日本にいた。
10月17日に開かれるS国際ピアノコンクールに向けて練習中だった。
日本人初の1位!
メディアには【星野 英雄君 快挙】
の言葉で溢れかえる予定だ。
とはいうものの、正直練習に身が入らず曲をただ弾いているだけ。
原因はわかっている。師である内山 有紀だ。
2年前14歳の俺は内山氏に師事した。
コンクールの為だ。
彼女は厳しくもあり、優しくもあり、俺はメキメキと上達した。
この2年間で正直S国際コンクールが見えたと思った。
だが内山氏が曲全体のイメージの為弾いたショパンが師と俺の力量の開きが絶望を感じさせた。この内山氏でも入賞がやっとだった(ただし入賞時に評価が低すぎるとブーイングがあったらしいが)。
固まった俺に気が付いたのか、
「英雄君と私の差は経験値と曲に対する意図だよ。技術はもう追いついてきている。」
そういうと俺の事を抱きしめてくれた。
「大丈夫」
そろそろ内山氏がくるころか?不甲斐ない姿を見せまいと「よし」気合を入れた。
ドアがガチャっと開く。
・・・
・・・
ん?ドアは開いたが誰も入ってこなかった。
なんだろうと思いドアに向かった。
ドアノブに触れ外を確認しようとすると、目の前が歪んだ。
・・・
石の壁に囲まれた部屋?木のドアが前後の壁にあり青と緑の色が塗られていた。
どうゆう事だ。練習室に居た筈だが?
青のドアが開いて人が入ってきた。
大きな砂時計を抱えて布がなぜかフワリと浮いたままだ。なんとなく俺が思い浮かべる天女だ。
「&‘$“($)#’%!☆!!」
天女は大きく溜息をつく。緑のドアを指差しドンと砂時計を置いた。
「・・・すみません。何話てるか、わかりません?!」
バシッ!!全力の平手でぶん殴られた。
「この砂が全て落ちる前にここから出てくがよい。わかった?」
ぶん殴られたお陰で言語スキルとかそう言うものか!
「おお!言葉がわかります。ここはいったいどこですか?」
「ローレンツという星の神の部屋。そして私が神ローラ=ローレンツ。」
自称神が変なポーズをとって自慢げに言う。
「どうして俺がここにいるんですか?」
「う~ん説明するのが面倒だからこれで理解しなさい」
と、またぶん殴られた。
頭の中に情報が流れてきた。
どうもこの地球からローレンツという星に移転したらしい。
この移転というのが、結構多いらしい。昔から神隠しだの魔の三角地帯だの空間の歪みで地球とローレンツが繋がって移転するらしい。何度も直すよう地球の神に言ってはいるが、それは俺(私)の担当ではないと言われるらしい。
「地球の神多すぎ!」
女神ローラは荒い口調で話す。
「この前も抗議をするとトイレの神様だという。トイレに神はいらんだろう!と言うと、クレーマー扱い。」
私への地球の神々の扱いが酷い。女神は地球の神々への苛立ちから、地球からの移転者にも頭にきて雑に扱ってしまうらしい。
流石にローレンツに放り出すのは気が引けるのでお供え物で届くお金や使い込まれた武器、防具を持たせてくれるらしい。
ん?武器防具?
「すみません神様、武器や防具ってそんな物騒な星なんですか?」
「魔獣が出たり決闘や戦争があったりもするかの。移転者は魔獣や餓死であまり長生きしておらん」
「えええええ。神様!地球に戻してください!!」
「戻せん。地球の神に連絡しても担当がわからん」
まずい!そんな物騒な星で生き抜く事は出来ない自信がある。
「せめて何か凄い武器とか、凄い魔法とか、能力とか貰えませんか!」
「そんなもんホイホイ渡せるわけがなかろう」
「凄い能力じゃなくても生活レベル能力でいいです。お願いします。」
俺は土下座で懇願した。
はあ、と溜息をこぼし、「お情けで」と言うとハイヒールみたいな靴で土下座の俺を踏む。
・・・
・・・
「かっ、神様。何の能力を与えて下さってるのですか。」
「能力?いや?さっきからぶん殴っても何も言わないからドMの君にハイヒールで踏むというご褒美でお別れを・・・」
うおおおおお。思いっきり時間の無駄だったわ。
「おい、君。君のLUCKの値凄いね!」
「はあ?運がいいということですか?」
「そうだ。強運も強運。前回来た者も凄かったが君はそれ以上だぞ。」
「はあ」
こんなところに移転してしまう者が強運である訳がない。
「ちなみに能力交換はしてもいいぞ」
「えっ!!」
「前回の者は強運からラッキースケベに交換しているぞ」
・・・うんその人と会うことは無いな。多分もうこの世にいない気がする。
「強運と交換は
1.ラッキースケベ
2.ヒヨコの雄雌を瞬時に見破れる
3.視力が0.1上昇
の何れかだな。」
「現状のままでお願いします」
俺は即答した。
ピピピピピー。
「おっ!あと1分だ。」
ちらりと神が腕時計を見る。
「あ・・・あのう砂時計は?」
「あれは見た目がかっこいいから持ち歩いてるだけ。実際は10分でこの神の部屋に侵入者を亡き者にしようと天使の軍団がくる。」
「侵入者がいるぞー!」
ドタドタと足音が聞こえる。
うわあああああ、慌てて剣と少しばかりのお金をとり緑のドアを開け飛び込んだ。
神の最後の言葉が聞こえた。
「長生きするんだぞ」
飛び込んだ先には地面がなくなぜか下には女性が。
女性の上に思いっきり落ちてしまった。
かなりの遅筆なのですがとりあえず、1~2日中にもう一話載せる予定です。