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限界の先にある世界(旧名、限界異世界)  作者: 棹中三馬
第一章 転移、そして成長
8/10

007 どうやら集落に到着したらしい

限界異世界をお読みいただきありがとうございますヾ(*>∇<*)ノ

主人公達は森をこえてようやく最初の町に入りますよー♪(……と言ってもド田舎ですがw)

 弓の達人アークさんに導かれて、無事に遠吠えの森を抜けた俺達四人組の目に映った景色は、のどかな田園風景と汗水流して畑を耕す住民達の姿だった。


 合掌造りにも似た特徴的な民家が集落の中央付近に集中していて、それを取り囲むように見たこともない不思議な作物が実る畑が四方に作られている。


 山麓から流れてくる小川の水は透き通っていて、小型の魚形モンスター達が気持ち良さそうに游いでいるのが確認でき、生まれも育ちも都会の俺にはとても新鮮に映った。


 ここを以前の世界で無理矢理例えると、富山の白川郷と言ったところだろうか。



「ついたぞ。ここがワシ達の暮らす集落『ヨッドの里』じゃ。と言ってもご覧の通り、老いぼれしかおらんつまらん場所じゃよ」


「うーん、空気が美味い場所だなー」



 大きく深呼吸をして新鮮な空気を取り込む西原に、自分の故郷を褒められて嬉しいのか頬を緩ませてるアークさん。

 確かに。東京の濁った空気と比べて遥かにここの空気は澄んでいる。



「そうじゃろう金髪のお嬢ちゃん。豊かな自然だけがこの里の自慢じゃ」


「チカでいいよアークのじいさん。俺ガキの頃ド田舎に住んでたからさ、どこか懐かしい気分になったぜ。……ひっく」



 あの泣く子も黙る西原が感動のあまり泣いていた。

 そう言えば彼女は幼少期、水道もろくに整備されてない偏狭の集落で生まれ育ったって、以前彼女から聞いた事があった。


 二年前に家族と共に上京してきたのだが、今彼女の暮らしていた集落の人々は他所に強制退去させられて、行政の再開発計画によって集落はダムの中に沈められてしまったらしい。



 そう、彼女の故郷も限界集落だった。

 限界異世界であるメイプル共和国と同じように。

 そしてお役所()の事情だけで、思い出の地は水に流され……消滅させられた。

 そして今、上位神達はこの世界が存在する価値の無い世界だと見限れば、俺達やアークさんを含めたメイプル共和国の全てを、好きなタイミングで消滅させる事が出来る……。


 ゲームでちょっとしくじっちゃったから、リセットボタンを押してセーブ地点からまたやり直しちゃえ。……そんな気軽な気持ちで、沢山の生命を一瞬で殺せるんだ。

 そんな非道な上位神達のご機嫌を毎日取っているんだから、そりゃカタクトフのじいさんもたまったもんじゃないよな。



「うわー。本当にお爺ちゃんお婆ちゃんばっかりなんだねー。おーい!」



 どんよりしている俺と西原とは対照的に、子供の様に無邪気にはしゃいでいるのはやはり会長だ。

 仕事が忙しい住人さん達に向かって両手を振っている。

 その内の何人かは作業する手を一旦休めて、律儀に会長に手を振り返してくれた。

 優しい人が一杯いるなこの村は。



 ……そうだな。過去ばかりに囚われないで俺も会長みたいに前向きになろう。

 今はこの世界を満喫するのが最優先だってアークさんも言っていたじゃないか。



 会長の頭の上で嬉しそうにブヒブヒと言っているのは、森で迷子になった時に出会ったサングリーことサンちゃんだ。


 頑なにペットにすると話を聞かない会長の渋とさに根負けしたのか、今は抵抗するのを諦めて会長と一緒に行動を共にしていている。


 今のところ会長や俺達に危害を加える様子も無いので、サンちゃんもこのパーティーの一員として暖かく迎えるつもりだ……癒し担当(ペット)として。



「うっひょー、あの畑になってる食材はなんだろうなぁ。オレの美食家の血が騒ぐぜぃ!」


「まーた始まったよ。佐藤のジャンプネタ」


「あれか。あれはこの地に古くから伝わるヨドサイって野菜じゃよ」


「こう見てみると、私達の知ってる白菜とは少し違うけどそれに近いかも」



 会長が近くのヨドサイ畑に駆けよって、小学生の紫陽花観察の自由研究みたいにヨドサイを色んな角度から観ていると、アークさんが何かを閃いたらしくポンと相槌を打った。



「そうじゃ! 今晩お前達に取れ立てを食わせてやろう。さっきクイン・サングリーの肉もゲットしたしのう、ばあさんに作って貰えば良いご馳走が出来るぞ」


「えっ!? 本当に良いのかアークのじいさん!」


「よっしゃ! 今晩の晩御飯ゲットだぜ!」


「勿論。ついでに今晩はワシん家に泊まっていきなさいな。実はワシの冒険者は副業でのぅ、本業はワシら夫婦は冒険者を休ませる宿屋を営んでおるんじゃ。じゃが、何分こんな場所じゃから滅多にお客さんは来なくて、暇で仕方が無くてのう。お前さん達には飯も宿もタダでやるわい」



 今日一日で色々な事がありすぎて忘れていたけど、そう言えばもう夕暮れ時だったんだ。

 腹の虫もグーグー鳴ってるし、旅の疲れも身体中にたまっている。

 確かにアークさんの提案は僕らには甘いお誘いだった。

 けれど、流石にここまで良くして貰ったアークさんにこれ以上甘えるのも、正直人としてどうかと思うのも事実だった。



 「ありがとうございます。……ですが、ちゃんとお金は払わせてください」


 「別に無理をせんでも良いんじゃぞ? お金はあるうちに大事に管理しとかんと、すぐに底をついて餓え死んでしまうぞ?」



 本来だったら年金暮らしが当たり前であろう年齢のアークさんが言うと、それは尚更説得力が増す持論だった。

 それでも、俺にも絶対に譲れないプライドがある。



 「……それなら働かせて下さい。家事でも掃除でも雑用でもなんでもします。初めてあったばかりの俺達に親切にしてくれるアークさんに、ちゃんと恩返しをしたいんです」


 「そうだね。働かざる者食うべからずって言うし」


 「老夫婦二人暮らしじゃあ、何かと大変だろうしな」


 「へっ? 別にじいさんが良いって言ってんなら、今日ぐらい甘えさせて貰っても良いんじゃねーの?」



 折角一致団結して良い雰囲気だったのに、この空気の読めない馬鹿は。

 アークさん呆れて苦笑いを浮かべているし。

 目を少しだけ不愉快そうに吊り上げた西原は、佐藤の至近距離に一気に詰め寄り、小鳥の囀ずる様な声で彼の耳元で甘く囁いた。



 「あっ? なんつーたかよー聴こえんなぁ佐藤? もう一回言ってみろ?」



 何をどう勘違いしたのか、「青春してるのう」って言いたげな眼差しで二人を見守り、器用に「ぴゅー」と口笛を吹くアークさん。

 ……小声すぎてアークさんはよく聞き取れなかったんだろうが、これは誘惑や告白ではなくただの脅迫だった。

 


 「……いや、これからたくさんお世話になるんだからちゃんと働かなきゃ……ってな」


 「だよな♪ そう言うと俺は思ってたぜ♪」



 顔をひきつらせながら前言撤回する佐藤に、爽やかな笑みで何事も無かった様にポンと彼の肩を叩く西原。

 あそこで親友が選択をミスってたら危うく暴力沙汰になるところだった。

 


 まあ冗談はさておき、他愛ない世間話をしながら暫く集落を歩き回った俺達は、アークさんの実家であり僕らの宿泊先である宿屋へと辿り着いた。

 周囲の合掌造り風の民家と比べて一回りほどは大きいが、需要が少ないからだろうかか、お世辞でも大人数が一気に宿泊できるような立派な宿ではなかった。



 「ここがワシとばあさんが経営している宿場じゃ。といってもあいにく客室は4部屋しかなくてのぅ。一人一部屋貸してやりたいのは山々なんじゃが、一応他にもお客さんが来るかもしれぬから、坊っちゃん達と嬢ちゃん達に別れて二人一部屋で使って貰うと助かるのぅ」



 当然俺達の中で彼の提案に異議を唱える者は誰もいなかった。

 寧ろ、部屋が一つしかないから男女四人で同じ部屋を使ってくれなんて無茶ぶりを言われなくて、心底安堵してる位だった。

ここまでお読みいただきありがとうございました!

その内、番外編として西原千夏の幼少期のストーリーも描きたいね。

今んところヤンキーってイメージしか無いからね……誰のせいだろ(俺かw)。

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