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限界の先にある世界(旧名、限界異世界)  作者: 棹中三馬
第一章 転移、そして成長
6/10

005 どうやら森で迷ったらしい

2019/08/29 投稿

限界異世界お読みいただきありがとうございます♪

いよいよ主人公達は異世界メイプルを冒険しますよヾ(*>∇<*)ノ

 松林先生がクラス全員の士気をあげてからは、まるで坂道で雪玉を転がすように状況が進展していった。

 皆早くこの異世界を冒険してみたい一心なのか、たった一時間だけで冒険の準備を終わらてしまった。



 まずは仲が良い人達同士で集まって、共に冒険をするパーティを作った。

 俺のパーティは会長と、佐藤と、西原の四人。

 パーティのリーダーは当然会長である。


 異世界ガイドブックによると、一つのパーティは4~6人迄と定められている。

 パーティを結成すると、メンバー同士のステータスをいつでも共有できる。パーティ共有の収納箱(アイテムボックス)を使えるようになる。仲間がモンスターにやられてもパーティのメンバーが教会で行く事で蘇らせられる。等のメリットがあるらしい。



 この情報だけを聞くと、なんかのラノベみたいなVRMMO風の異世界みたいだが、この世界の半分の住人が高齢者だと考えると、あまりお年寄りに優しい世界とは言えないよなぁ。



 そして次は、冒険には欠かせない武器と装備、初期金としてこの世界の通貨であるメインを3000ばかし、冒険者全員に配布された。



 どうやらこの世界にやって来た冒険者達には、メイプルの武器屋や服屋やが無償で提供する慣わしで、さっき校庭にいた巨大なドラゴンは、物品を運ぶために育成された《物竜》と言う大人しい種族のドラゴンだった。



 因みに俺の装備はいかにも新米な冒険者……って感じの質素な服だったが、制服のままモンスターと戦闘するよりかは遥かにましだと判断し、ありがたく着用させて貰っている。

 武器は鋼の剣(攻撃力32)と初期装備にしてはまあまあスペックが良かったし、最初の内はこれで問題ないだろう。

 



 ……で、早速学校から最寄りのダンジョン『遠吠えの森』へ足を踏み込んでみた。

 この森を抜けた先に小さい集落があり、この世界の住人から情報収集するのにはうってつけだからだ。



 ……だが、



 「……ねえ、もしかして私達、道に迷ってない?」



 回復職(ヒーラー)の会長が少し不安そうに言葉を溢し。



 「そうかー? 一本道を真っ直ぐ突っ切ってるだけだから、別に問題ねえだろ」



 戦闘職(バトラー)の西原がぞんざいに返事を返し。



 「まあいつかつくんじゃねー?」



 防御職(タンク)の佐藤がジャンプを読み歩きながら適当に返し。



 「いや……絶対に迷ってますよね。だってあの大きな木さっきも見ましたし!」



 これまた戦闘職の俺が道に迷った事を断言した。


 そもそもずっと右方向に進んでいる事自体が可笑しい。

 まるで環状道路みたいに同じ所をグルグルと回っているとしか思えない。

 会長が今にも泣きそうな声色で呟いた。



「じゃあ……どうやってこの森から出れば良いの?」


「さあな。ゲームならこの森のボスを倒すか、隠されてる仕掛けを起動させるのがセオリーだろうけど」


「でも何処にもそれらしきものは……んっ?」


「おっとあぶねえ。どうした如月?」


「いや、あそこの木の影になんか……イノシシっぽいのがいる」



 姿こそはニホンイノシシに似ているが、まだ子供なのかサイズが小さめだった。

 言わずもがなこの森に生息するモンスターだろうが……。

 為石に《鑑定》スキルを使用してみるか。


 サングリー

 LV 3

 HP 42


 ……まあ剣で一発切れば倒せそうではあるな。

 ここまでの道中で大きな蛾みたいなモンスター《ガライド》とか、兜をつけた蟻みたいなモンスター《ナイトアント》とやらを剣で倒してきたから、ここでまた小遣いと経験値稼ぎをしておくのも悪くはない。



「どうします? 為石に倒してみます?」


「駄目だよ! あんなに可愛いのがモンスターな訳無いじゃん! とっしーの人でなし!!」


「如月よ。前々から薄々思っていたんだが、お前って自分の利益を優先して弱い者をなぶり殺す、最低な奴だったんだな。と言うか死ねよクズ」



 うわー。

 サングリーの可愛さに女子二人が洗脳されてしまってる……。

 佐藤も佐藤でこの危機的状況を目の前にしていながら、わざと無視しながらジャンプを読んでケラケラと笑ってるし!

 一番の人でなしはどうみても俺の親友じゃねーか。



 木陰から離れてきて、俺達に興味津々と言わんばかりに近付いてくるサングリー。

 生まれたての小鹿の様にぎこちなく前進している姿がとても愛らしい。

 それを見つけた会長は、両手を大きく広げてサングリーを抱き抱えようと近づいていく。



「ほらほら。怖くないからおいでって、サングリーちゃん」


「会長。まさかこいつをペットにする気なんですか。一応モンスターなんすよ?」


「だって可愛いから良いじゃん♪」



 はあ。なんで女の子って揃いも揃って可愛いのが好きなんだろ。

 会長なんておもちゃを与えられた子供みたいに無邪気にはしゃいじゃってるし、あの不良の西原ですら目をキラキラさせている始末だ。


 俺の忠告も無視して会長はサングリーを捕獲してしまった。



「……と言うか嫌がってません? 会長に捕まってから、足を必死にバタバタさせてますけど」


「そんな事ないよ。きっと拾って貰えて嬉しいんだよ。ねーサンちゃん」


「名前まで着けてるし……」



 俺がもう倒すのを諦めて、さっさと森の出口を探そうと右足を前に出した瞬間。



 ぐぉぉぉっぁぁぁぁ!!



 突如と怪物の鳴き声が森中を蹂躙し、俺達は直ぐ様己の耳を両手で塞ぐ。

 それでも耳の奥がジリジリと痛くなる程の轟音は、俺達をパニックに陥らせていった。



 「きゃあ!?」


 「なんだなんだこの野太い荒声は! うっせぇなぁぁ!」 


 「……おい如月。あれって……」


 「ああっ? なんだよ一体……あっ……」



 俺達四人組の前に轟音と共に現れたのは、全長3メートルはあると思われる超巨大なイノシシだった。

 まさか、こいつが遠吠えの森の主なのか?

 まるで終盤のダンジョンのボスモンスターが、何かの手違いで序盤のダンジョンに出てしまった様な場違い感を感じるぞ。



 ……ゴクリ。怖いけど《鑑定》してみよう。

 案外見かけ倒しの雑魚ボスかもしれないし。



 クイン・サングリー

 LV 67

 HP 4972



「体力およそ5000……。今の俺達には絶対勝てませんよ!」


「マジか! オレ達絶対絶命じゃねーか‼」


「ひゃぁぁー‼ やっぱ私達ここで死ぬんだ……うぐっ!?」


「浅倉会長黙ってろ‼ 下手に奴に刺激を当てると俺達本当に死ぬぞ!」



 西原が会長を押し倒し口を塞いで黙らせるという、百合みたいな展開になってることは今はどうでも良いとして。

 それよりも不可解なのはあのモンスターの行動だった。



 クイン・サングリーは俺達を視界に入れている筈なのに、何故だかすぐに襲って来ない。

 それどころかずるずると後退して、俺達から距離を取っている様にすら思えた。

 まるで、何かから怯えているように。



「おい。そこのぼっちゃん、お嬢ちゃんや。危ないからちと退いておれ」



 背中から誰かの声が聞こえ、無意識に声の指示に従った俺達。

 すると……



 ひゅぅぅん‼



 と風を切り裂く音が空間を一閃し、クイン・サングリーの腹部に極光に輝く光の矢が突き刺さっていた。

 矢が放たれた方向にいたのは、杖をついた70歳くらいの老人だ。

 いや、厳密に言えばそれは杖ではなく弓だったが。



素人(にわかもん)がどうしてここへ迷い混んだんかはワシにはどうでも良い。じゃが、ワシの狩り(いきがい)を邪魔するんだったら。……お前らも殺すぞ」


 

 ……なんかめっちゃ面倒臭そうなおじいさんに助けて貰ったんだけど。

ここまでお読みいただきありがとうございました!


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