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限界の先にある世界(旧名、限界異世界)  作者: 棹中三馬
第一章 転移、そして成長
5/10

004 どうやら学校から出発するらしい

2019/08/25 投稿

ここまで読んで下さりありがとうございます♪

今までコントをしまくっていた主人公達だけど、ようやく物語が進み出す……かも。



 再び泣き崩れる会長の機嫌を取り戻すまでに更なる時間を費やし、周囲からの冷やかと言うか妬ましそうな目線をもろにくらった俺だった。

 冒険に出る前にSAN値がゴリゴリと削られたぜ。

 まあ余計な一言を付け加えた俺のミスでもあったし、その点はしっかりと反省して今後の糧としていくつもりだ。


 ……さて、ようやくこのメイプルとかいう高齢者だらけ(らしい。だってまだ外の住人を見ていないから判別できる訳がない)ファンタジーの世界へ旅立つ準備ができるぞ。



「いてて……」


「ううっ……」



 おっ、ちょうど良いタイミングで佐藤と担任の松林が意識を取り戻してくれた。

 まずは親友の佐藤の方から話を聞いてみるとしよう。


「大丈夫か? ほら起こしてやるから、早く俺の腕に捕まれよ」


「ああサンキュ。……ったく、なんだよあのじいさん。いきなりオレに雷を落としてきやがって。今度あったら絶対にとっちめてやる!」


「やめとけやめとけ。あの西原ですら全く歯が立たなかった相手だぞ?」


「ああっ!? なんだよあのって! 俺は怪物扱いかよ!」


「いや、あれはその……言葉の綾ってやつだって」



 口を尖らせて俺に激しく抗議してくる西原。

 ヤバイ、彼女を怒らせたら最悪俺の命に関わりかねない。

 会長は苦笑いを浮かべながら俺をフォローするかの如く言葉を紡いだ。



「まあ怪物は流石に言い過ぎだとしても、西原さんがこの学園有数の問題児って事はあながち間違ってもないかも。この前だって他校の強そうな男子生徒とタイマンして、見事に西原さん勝っちゃってたし」


「浅倉会長まで俺を裏切った!? 糞ぉぉ!!」



 小柄で泣き虫なのに、いうべきところを的確に言うところは流石会長である。

 会長にそこまで言われたのがよほどショックだったのか、自分の席に戻ってやさぐれてしまった西原。

 机にうつ伏せになってるから見えないが、多分泣いてるな。

 今は暫く一人にしといておこう。


 その一方、そこらのギャルと然程変わらない華奢な女の子に、喧嘩でぼろ負けされた喧嘩相手が寧ろ可哀想に思えてくるから不思議だった。

 と言うか、どうして他校の不良とタイマンする事になったんだろう。


 ……それよりも、今は松林先生に用事があるんだった。

 松林先生に片手をさしのばして彼を立ち上がらせるのを手伝う。



「ありがとう如月君。……あれ? さっきの不審なご老人は一体どこへ……」


「神様なら天界とやらに帰っていきましたよ。それよりも速急に冒険の準備をするんで、先生は他の生徒達に指示を送ってください。俺が言っても流石に全員までは言うことを聞かないので」


「……はあ。まだ異世界とか魔法とかいう非科学的なものは私には信じられませんが……。で? 何を伝えれば良いんですか如月君?」



 俺は会長が持ってきた中から、1部勝手に拝借してきた異世界マニュアルを開いて、「ステータス」のページを松林に見せつけた。



「ステータス確認ですよ。この世界では『ステータス表示』と唱えるとステータスウィンドウが視界に表示されるんです。クラスの皆にそれを指示して貰えれば、後は皆が勝手に動いてくれます」



 松林は何を言ってるのかサッパリ解らないらしく目を点にしていたが、素直に解らないとは生徒の前では言えない強がりな性分らしく、ページを隅々まで見て彼なりの考えを纏めた後に、悩ましげに口を開いた。



「ステータス? それは元素の名前か何かですかね? ……いやしかし、元素表の全ての元素名、元素記号、原子番号、原子量を完璧に暗記している私にも聞いたことが無い元素ですね。……あっ、なんならここで水素から全部言いましょうか?」


「いや結構です」



 駄目だこの人。

 なんでこんなに暗記ができるのにゲームの基礎知識には疎すぎるんだ。


 まさかとは思うが、幼少期からずっとスパルタ教育で日々勉強漬けだったから、ゲームやおもちゃで遊んだ事が無いという訳じゃないだろうな。

 ……それだとあまりに悲しすぎるから、絶対に本人に聞かない様にしよう。

 単に担任が勉強オタクなだけでこれまでゲームに関心がなかっただけだろうし。

 


「ステータスってのは……えっと、現在の自分の強さが数値化されている数字なんです。体力、魔力、攻撃力、防備力、速さの五要素で構成されていて、それと別に一人につき一つのスキルが付与されているみたいですよ。あっ、スキルと言うのは冒険者に備わった特殊能力の事で、例えば《火焔》なら炎を自由に操ることができるんです」



 ……って、異世界マニュアルに描いてあった内容をアレンジして彼に伝える。



「ふむ……、なにを言ってるのがサッパリ解りませんが……つまり教え子達にステータスとやらの閲覧を促せって事で良いんですかね?」



 アホメガネの唐突な元素表丸暗記自慢の方がよっぽど訳が解らなかったけどな。



「お願いします。あと先生にもステータスが備わっている筈なので、後でご自身でも確認しておいた方がいいですよ」


「そうなんですか。じゃあ皆に伝えてきます。あとその冊子を貸して貰えませんか」


「ああどうぞ。ちゃんと人数分はあるのでずっと持っててもいいっすよ?」


「それでは有り難く頂戴しましょう。それでは」



 そう言って松林先生はパラパラと異世界マニュアルを素早く捲っていき、全部見終わったら俺の側から離れた。

 教卓の前に立ち、他の生徒達にステータス閲覧を促す。

 自分勝手に動いていた生徒達は彼の指示を聞くと、言われた通りにそれぞれのステータスの確認を始めていた。


 融通が聞かない真面目者で、変に知識が片寄りまくっていて、たまに意味不明な発言をするアホメガネではあるが、担任は人望が厚く生徒達に愛される良い先生だ。

 彼の迅速かつ丁寧な指示ならば、このクラスの生徒達はすぐに言う事を聞いてくれる。


 神様曰くチートスキルは誰にも付与してないらしいが、それを差し引いても現実では存在しない特異能力をお手軽に使えるスキルの存在は大きい。

 クラスの皆がそれぞれのスキルを友達に教え合い、一喜一憂している様子を見ると、案外この異世界でも皆なんとかやっていけるんじゃないか……と、思う俺だった。



「それじゃあこれからは各自行動です。ですがモンスターの蔓延るこの世界メイプルでは個人行動は厳禁です。必ず自分が信頼できる仲間と4~5人位のパーティを組んで行動してください。3年2組は今日より学生ではなく立派な冒険者です。各自各々の冒険を、君達の手で物語を紡ぎだして下さい」



 満場一致で「おー!」と歓声をあげる他の生徒達に紛れて、俺は別の事を考えていた。


 あれ? すっかりファンタジー用語に慣れてないかアホメガネ?

 ……そうか。俺がさっき渡したガイドブックを一通り黙読して、冊子に載っているファンタジー用語を粗方覚えてしまったのか。

 あのパラパラ漫画すらままならないほんの一瞬だというのに……。


 流石東大卒のエリート新米教師と言うべきか。

 あるいはただの暗記のプロフェッショナルと言うべきか。

 どちらにしても、松林先生には異世界でも付加されたスキルとは関係無く、俺達にはない潜在的な何かがあるような気がしてならなかった。

最後まで読んで下さりありがとうございます♪



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