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ニートからの脱却!

(金がない・・・)


そんな切ない悲鳴を心であげ、佐藤は独りごちていた。


(以前のバイトを辞めてから、早三か月。貯金もあっという間に底が見え、なるべく細々と暮らしてきたけど、いよいよピンチ!

かといって、愛猫の餌を絶やすわけにもいかず、俺の食費を切り詰めてはいるのだけど)


心許ない抵抗で日々を過ごしてきた佐藤であったが、

すでに今月の支払いで、財布の中は閑古鳥が鳴いているのであった。


(かといって、あのくそ親父に頼るのは無理というか、絶対嫌だし、どうしたもんか・・・。)

(なんとか食いつなげるバイトを探して、愛猫だけでも食わしていかなくては!)


と、決心するのであった。


そして、手元にあったバイト情報誌から、

なるべく条件が良いバイトを探すように、目元へと意識を向けていく佐藤。


(んー。こっちは時給が安いし、こっちは職場が遠い・・・。どれも微妙なところばかりだ。)

(まぁ、今の状況でえり好みしている俺が悪いのだけれども・・・)


そうして、情報誌を隅々まで見渡していくのだが、

なかなか好条件のバイトを見つけられないでいた。


そんな折、佐藤は気になるバイトを発見したのだった。


(おっ!これはいいんじゃないかな?)


(なになに。様々な職場を体験することで、貴方様の適正を発見する事ができます?

多様性に富んだ職場を2週間毎に変え、研修をすることで、企業様と貴方様の繋がりを受け持ちます?)


なかなか面白い企画だなと思った佐藤だったが、

胡散臭いのでパッと目を通して他の募集案件に移ろうとしていたのだが、

あれ?っと思い、再びその募集を見つめるのであった。

今度は、キチンと内容を読んでいき、一番下にはこう記載されていた。


『なお、職場体験中は、政府より時給1200円支給されます。また職場に出向いた際の事故災害保険も、政府に負担いたしますので、ご安心してください。』


(えっ?めちゃくちゃ良い条件じゃん!しかも職場もある程度は選べるみたいだし、やってみても損はないかも)


それならば繋ぎとしても良く、もしかしたら正社員の道も開けるかもしれないと思い、

記載された番号へと連絡するのであった。




「はい、もしもし。お電話ありがとうございます。こちらは、企業人材対策室の森本と申します。」

「本日のご用件は、どうのようなことでございますか?」


佐藤は多少上擦った声でやや緊張しながら、

「あ、あのお忙しいところ申し訳ございません。佐藤と申しますが、この情報誌を見ていたところ、御社の募集内容に惹かれて、電話を掛けたのですが・・・」

と、なるべく丁寧に自身が使える言葉を選びながら会話をしていく。


「ああ、なるほど。こちらこそお電話ありがとうございます。さて、早速ですが募集内容をお読みなっておられると判断し、念のため確認したいのですが、佐藤様は本日空き時間はございますでしょうか?」


「あ、あれ本日ですか?」

そんなものは見てなかったと背中に汗をかきつつ声を絞り出していると、

担当の森本は、優しい声色で、

「申し訳ございません。こちらの説明不足でした。詳しくは募集内容の一番上に記載されているのですが、本日締切でして、できればこちらへご足労願いたいのですが・・・ 。」

「こちらの事務所にて正式な説明をいたしまして、双方合意の上、本契約とさせて頂きますので。」

と、親切丁寧に教えてくれるのであった。


佐藤は、森本に感謝をしつつ、

「こちらこそ申し訳ございません。見落としていました。もしよろしければ、すぐにでも伺いたいのですが。」

と、ペコペコと携帯を握りながらお辞儀をしていた。


そんな佐藤の行動はつゆ知らず、森本は、

「わかりました。ありがとうございます。では、本日の13時に当事務所まで来て頂けるのは可能でございますか?」

「近くまで来て場所が分からないようでしたら、お手数ですが当事務所までお電話ください。当スタッフが迎えにいきますので。」

と、懇切丁寧に切り出すのであった。


そして当たり障りないように会話を続け、その後電話を切り、

佐藤は急いで支度をするのだった。




佐藤は愛車の自転車に乗り、ビルとビルの合間を潜り抜け、

指定された時間の五分前に事務所に到着した。

そして深呼吸をし、気持ちを落ち着かせてから、改めて扉をノックしたのだった。


「失礼いたします。先ほど電話いたしました佐藤と申しますが、こちら企業人材対策室?でよろしかったでしょうか?」


そして少し間をあけて、目の前の扉に人影が写り、

「はい。こちらは企業人材対策室でございます。わざわざご足労ありがとうございます。」

と、扉を開けて、中に入るようにうながすのであった。


「それでは、森本を呼んできますので、しばしお待ちください。」

そう言って、目の前で応対してくれた女性が深々とお辞儀をして退室していった。


(しかし、かなり家賃が高そうな場所だなぁ~。このソファだってふかふかだし、目の前のコーヒーを乗せている机だって高級感が主張しているし。一応スーツで来たから、場違いではないと思いたい・・・)


小市民の佐藤にとっては、

こんな空間に一人でいると自身の矮小さが身に染みてナーバスになってきてしまい、

余計な考えをしてしまうでのあった。


そんな変なことを考えていると、応接室の奥の扉からスーツの似合った男性がこちらに近づき、

「お待たせして申し訳ございません。さきほど、お電話で担当させていただきました森本と申します。」

そう言いながら、佐藤に名刺を渡した。


それに対して、佐藤が慌てて立ち上がり名刺を受け取ると、森本は優しい笑みを浮かべ、

「それでは、早速ですが本題に入ります。佐藤様は、今年度から政府が実施した企業人材再生雇用法をご存じでしょうか?」

と、問いかけてきた。


佐藤はうろ覚えでよく分からず返答に困っていると、


「いえいえ、実際知らない人もいるので、お気になさらずに。」

「平たく言えばですね、政府主体の支援団体が少子化に伴い、企業の人材確保が難しくなってきている為、職業体験を実施する企業と体験をされる方双方に、資金援助を受け持つようにする法案です。」

「これを通じて、企業の労働者確保を促成し、なおかつこれから労働をされる方の意欲を向上させるのが目的です。」


「一応、今回は実験として、応募締切を設けさせていただきました。」

「ご理解されたようでしたら、契約の方に入らさせていただきたのですが。」

と、なるべく佐藤に分かるように、森本はゆっくりと説明していった。


(うん。理解が追い付かない部分もあるけど、とりあえず概要は分かったかも・・・)


佐藤は多少混乱しながらも理解したのだった。


「わかりました。僕も面白い企画だと思いますので、契約に同意いたします。」

「それでですが、情報誌には色んな企業を選んでとの事が記載されていましたが、具体的にはなにをすればいいんですか?」


「ああ、それはですね。選ぶのは無制限とはいかないので、こちらに協力していただける企業様からとなります。」

「あとは、佐藤様ご自身が興味のある職場に出向き、そこで仕事を体験していただくようになります。また、二週間をサイクルにして、三ヶ月を期限として、契約終了とさせていただきます。」


「尚、その際に企業様からオファーがあった場合は、当部門は関与いたしませんので、佐藤様と企業様双方で話し合いをしてください。」

「各職場体験の終わりに、体験された職場の内容と感想をレポートで提出していただければ、給料といった形で時給をお支払いたします。」

「足早の説明となりましたが、なにか質問がありますでしょうか?」


森本は、机の上に置かれていたコーヒーを一口飲み、爽やかな笑顔を佐藤に向けていた。


(うん。森本さんの説明と情報誌との差異は見当たらないし、大丈夫かな?)

「わかりました。質問っていうのか、いつから職場体験をすればいいのでしょうか?」


「はい、それはですね。この後、職場のリストをお渡しいたしますので、それを見てご連絡いただければ、明日にでもマッチングできるようにいたします。」


(なら、ちゃちゃっと決めて明日から働こう!特に愛猫の餌代と、来月の家賃の支払いができるように!)


そうして佐藤は決心し、森本に二つ返事で契約書にサインをするのであった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

堅苦しい説明が長くなり、申し訳ございませんm(__)m

もしよろしければ、感想等お願いいたします。

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