ルティとナハト・リンボル
ルティは 柔らかな月の光の精霊でした。
いつものように 月の光が届くところを
ゆったりと お散歩していたある日。
それはそれは きれいな泉がありました。
その泉は とても不思議な穏やかさに満ちていて
中では 虹色の魚がたくさん泳いでいるのです。
『すてき!月光で虹色に光るお魚なんて』
ルティは 嬉しくなって
泉のほとりまで ふわりと おりてみました。
泉の水ごとすくい 何匹か虹色の魚を
水晶でできた器に入れて もって帰ることにしました。
あくる朝 ワクワクしながら器をのぞくと
一匹も 虹色の魚がいません。
『あら?お魚はどこに行ってしまったのかしら?』
ルティは 少し悲しくなりましたが
また 今夜も泉に行ってこなくてはと思いました。
その日の夜 出る前にもう一度器をのぞくと
なんと 昼間は一匹もいなかったはずの水の中に
虹色の魚がちゃんといるのです。
びっくりしたルティは 一晩中観察してみることにしました。
そして そろそろ夜明け
月の光と 日の光が入れかわるころ
少しずつ 解けるように虹色が薄くなり
完全に日が昇ると また泉のみずだけしか見えなくなりました。
『お日様の光で見えなくて お月様の光で見えるなんて
ふしぎなことも あるものだわ。
でも とっても素敵!とても仲良くできそうね!』
虹色の魚は ナハト・リンボルというお魚として
月の光の輝く夜にだけ見える
安らぎと倖せを運んでくれる月の精霊の
一番の友として 知られていくのはまた 別なお話し。