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僕と彼女と眠る人々Ⅰ

「生きて…いるのかな?」

「さあなァ、…走ってるときにソイツ、アラーム消えたな」

「そういえば…もう光ってもないね」

奥へと恐る恐る進みながら僕は手首を胸の辺りまで上げてみる。先ほどまでけたたましく発光していた筈のそれは無言へ戻っていた。

「あの女はどうしたんだ?」

「途中で道別れして行ったと思う。僕に声かけてから走るスピードを落としていたから」

「じゃあこの道を進むしかねェってこったな。」

大きな体で伸びをしながら隆大はズンズンと前へ足を進める。変わらず恐る恐る進む僕は、筒状の容器を見れないでいた。僕は運動も苦手だけど、ホラーとかお化けの類はもっと苦手だ。今にも動きそうな雰囲気あるし、何かが聞こえても嫌だ。

「…うぅ…」

低いうめき声が聞こえるがそれは僕の口から出ているものだった。自分の声でそんな音が出ることに驚いたけど今は隆大の背中にそっと隠れて進むしかない。初めて会ったときは怖くて仕方なかったし、弟くんの事すら覚えていなくて悪いんだけど。頼りになる背中だ。本当に体が大きいと背中も大きいんだな。

「ここかな?」

筒状の容器が並んだ道を抜けると白い扉が見えてきた。

少し先を行った隆大がそこで立ち止まっていた。扉の左横にエレベーターの昇降ボタンがある場所にタッチパネルがある。希世が言っていた扉はここのことかな?と納得しながら手首に付いている輪っかをタッチパネルにかざした。


【合言葉をお願いしマス。わからない場合はこちらのキーが使用不可となりマス。よろしいでスカ】


語尾だけ日本語を覚えたての外国の人みたいな無機質な変な音声ガイダンスが流れた。女性の声だと何となく分かるくらいの。

…ん?今なんて言った?

「合言葉なんて聞いてないよ!?」

「アァ?ここのこと知ってるあの女いねえのに分かるわけねえだろォ」

「どどどどうしよう?!」

「落ち着け、口がありえねェ開け方してんぞ」

しかもキーが使用不可って!?この手首の輪っかがキーになってるってこと?

でも彼女はここへ行ってと言った。この扉の先にこれからどうすればいいかの手掛かりが見つかるかもしれない。…行くしかないか!!

「開けたい扉が目の前にある時に、開け方が分からないときは…」

「おい?いきなりどうしたァ」

「この言葉しか僕は知らない!!」

「おい!一回しかないんだぞ間違ってたら…」

「ひらけーーーーゴマーーーーーーー!!!」


シーーーーン・・・


無音。やってしまった。僕は焦らされると寝るか暴走するかのどちらかしかない。親でも手を焼くのだ、自分自身で制御ができない。やや後ろにいるはずの隆大が見なくてもわかる。すごい怒っている。

「おいィ」

「…はい。」

振り返るのが怖い。だからそのまま前を向いて答える。

「一回しかないっていってたよなァ?」

「言ってました。」

「今なんて言ったんだよ!言ってみろよこらァ!!!」

「ごめんなさーーーーい!!」

肩を勢いよく強めに掴まれて振り返ると驚いた隆大が扉に近づく。

てっきり殴られるか、はたかれるかのどちらかを食らわされると思っていた僕は近づいてきた隆大にぶつかって腰から倒れこんだ。


「優太…?」

通ってきた道に並んでいた筒状の容器より遥かに大きいケースに入れられた人がそこにはいた。

「なんでこんなところに優太が…!?」

その容器がほかに4つある。その中にも人が入っている。大きなケースの上部から太くて長いチューブで容器内の空気を循環させているらしい。その容器の中の人に僕は見覚えがあった。

「この子が弟くん…?」

「…そうだ。体が弱くて、ごくたまにでる上手く息ができない発作に悩まされていてな、何でこんなところに…早く出してやらねえと…!!」

「…思い出した。僕が病院に母さんを見舞いに行ったとき泣いてる男の子がいたんだ。」

「おう、広大そっちから外してもらえねェか!」

「分かった!」

大きな容器を固定している下の金具をクルクル回して一緒に透明なケースを外した。隆大が急いでその男の子に近づいて呼吸と心音を確かめる。

「眠ってるだけみたいだ…」

「よかったあ…!!」

「悪かったな、どついちまって」

「いや、まさかこの昔どこかで聞いた呪文が役に立つ時が来るなんてね、僕もびっくりだよ」

するといきなり声がかすかに聞こえた。

「あなた達…誰に許可を得てここへ立ち入ったんだ」

横に並ぶ容器の中から声がする。

「お前ェたった今、目が覚めたのか。誰だ?」

僕は怖くて思わず隆大の後ろへ隠れたけど、物怖じしない隆大が代わりに聞いてくれた。

「誰にも会わずにここへ入った?」

「俺たちはさっき目が覚めてある女にここへ行けって言われて来た。希世って女にな」

「…そう。《生存者》がここに来たのなら、もう少しか」

「おい、どういうことだ。詳しく話せ、」

「どういうことか教えてくれると助かります。」

声のトーンから怖くないことが分かった僕は声の主の容器を覗いた。

こじんまりした体格の女の子。希世より一回りくらい小さい。大きな眼鏡を重そうに一度掛けなおすと、小さい彼女「小日向こひなたまひる」は小さい声でこう話し始めた。





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