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僕と彼女と生存者Ⅲ

テーブルの周りにある小さな丸椅子へ三人がそれぞれ座る。希世は最初に入った部屋から飲み物のボトルを二本持ってきた。

「あなたの分よ、大事に飲んでね」

「悪い、」

どこか居心地悪そうな顔をしてボソリと呟いた隆大は、渡されたボトルを受け取ると急いでキャップを外し、ゴクリと喉を鳴らした。

「…ハ、喉が生き返ったぜェ」

「じゃあ聞かせてくれるかな…?」

「…あぁ、」

しばらく黙ったまま動かなかった彼は大きな息を吸うと、真向かいに座った僕と斜め前に座った希世に視線を一瞬交わらせた。俺は、と先ほどより幾分か通った声で話し始めた。

「俺は気を失っててな、何が起こったのか確かめる前にまず弟を探してた。もともとこれに参加するのは弟のはずだった。1週間前に参加の有無を知らせるカードが俺の家のポストに無記名で入っててな。明らか不審だろ?一応、弟に知らせたら参加したいとか言いやがる。だから代わりに俺が参加することにした。」

「優しいんだね、」僕は思わず口に出してしまった。

「ったく、何言いやがる。弟は見つからねェし、この事態がどんな危険か分かったもんじゃねェのに、お前も人が良すぎるぜ」

「それで、」希世は続きを促す。

「俺が考えるに、《生存者》となり、この事態を生き抜く。これが俺に課せられた目標だってなァ」

隆大はもう一度ボトルに口をつけると、希世に視線を向ける。

「お前はもともとココの人間か?」

「そうよ。ここは私の父が運営していた研究所の隠し入り口。小さいころからの遊び場。そして彼は何が起こったのか記憶がないの。あなたより数時間前にここへ案内したわ」

希世は静かに僕へと瞳を動かす。ブレない目力に少し圧倒される。

「そう、気が付いたらこの変な輪っかが手首に付いていて、自分で外そうと思ったんだけど、自然に外れる仕掛けになっているみたいでうんともすんともいかなくてね」

目が覚めた瓦礫の前で、光っていた手首の輪っかは今は黒光りしたまま無音を貫いている。手首に付いてるそれを隆大が訝し気にまじまじと見つめる。

「フィクションでよくあるのはそれがいきなり動き出してェ、何分前になりましたァ、とか言いやがるんだよな」

「そうそう、パニックゲームとかにもあるやつね!」

はは、と吹き出してしまいそうな不謹慎な感情が少しでもあったことを僕は非常に悔いている。誰かこの時の僕に説教をかましてやってほしい。

ピコーン、ピコーン、…

連続して響く不快な音が突然その手首の輪っかから鳴り始めた。驚いた僕は立ちあがったまま硬直してしまう。


【緊急警告!直ちに避難!!この場から直ちに避難!!!】


蛍光色で輪っかのふちが光りながら赤文字で右から左へ警告が流れ出す。

「なんだァ!?本当に音が鳴りやがったァ…!」

「直ちに避難てどうすればいいかな…?!」

「逃げるわよ、全速力で」

そういったかと思えば希世はKISEI ROOMの方へ走り出す。

慌てて隆大と二人で追いかけるけど希世は足が速いことを忘れていた。

「…は、ま、待って…!!」

もう置いてけぼりにされるのはごめんだ、とカスほどの体力を凝縮してついて行った。隆大は大きい体のわりに俊敏だ。少しづつ距離を離されていく。

「ここから下へ潜ったところに鍵の付いている部屋がある。その手前の壁にあるタッチパネルにこの腕輪をかざしなさい」

淡々と静かに息を切らさず希世は走りながら話す。信じられないけど、女の子が足が速いのは僕的に悔しい。体力がカスなのも僕自身が飽き性なのもあるけど、運動が苦手なんだ。昔から。

「分かった!」

底を尽きそうな体力で白い廊下を結構長い距離走った。見えてきたのは下へ小さくくり貫かれている階段とおぼしき段差。左と右へも白い廊下は続いていて、大きなガラスが嵌められている。来る途中にも白い扉はいくつもあったが、それらをすべて見る余裕は僕には無かった。


 階段を降り切ると、そこまで無言だった隆大がやっと口を開いた。

「なんじゃァこりャ…」

降り切った階段の地面から下が透明な板で覆われた筒状の大きめな容器が現れた。その中に人が一人ずつ管に繋がれていて、向かい合うように筒状の容器にしゃがんでいる。奥の部屋へと繋がるようにずらりと並んでいるそれは僕たちの行く手を阻んでいるようにも見えた。






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