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澄み渡る空に僕と彼女が目指すものー邂逅篇ー  作者: 小鳥遊箕生


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彼女と僕と始まりの場所Ⅰ

【登場人物】

希世きせい

災害により母を亡くし、それにより災害の影響による研究を始めた。東島から臨床試験の間の記憶が少なくなっていることを聞いて疑問を抱き、十四郎から研究についてすり合わせをするため会うことにした。


東島とうじま 航大こうだい

臨床試験に参加している間の記憶とふとした瞬間に思い出されるフラッシュバックが混ざり合い、モヤモヤしている。それを打ち消すために希世に相談し、共に十四郎に会いに来た。何か足りない違和感を感じているがそのモヤモヤを晴らす手段を探している。


齋田さいだ 十四郎とうしろう

希世の父で研究室の室長を務めている。妻を亡くしてから一層研究に没頭し、未だに娘との距離感が掴めないまま数年悩んでいる。ただ素直に言葉を発するのが昔からヘタクソなため、いつもため息をついてしまうのが癖になっている。


久坂くさか りゅう

十四郎の助手を務めつつ、希世とは幼少期から関わりがあった。ただ、縁のない眼鏡からは生気を感じられない冷たい目をしているので東島からは怖がられている。



 数日後、希世の研究室と同じ階にある会議室へ向かう前に、大学の事務室へ鍵を借りようと受付へ顔を出すと、すでに希世の父が許可を得ていた。希世と東島は二人で会議室へと向かう。―――藍澤兄たかひろと優太、まひるは用事のため遅れると事前連絡があった。―――

臨床試験における専門家”希世の父”からのアドバイスを得るため今回のアポを取ったが、果たしてどこまで聞いていいのか東島には少しだけ迷いがあった。あくまで臨床試験に参加しただけの学生が研究に対して何を伝えればいいのか…仮想空間における経験自体は朧げだが少しずつ覚えているところと曖昧なところにモヤついた気持ちが拭いきれない。希世はそんな東島の様子に眉を寄せると罪悪感がよぎったような瞳をふと足下へ落とした。


ガチャリと会議室の扉を開けると、既に十四郎が窓際に向かって腕を組み佇んでいた。

「来たようだな」

現・室長ともなれば、様々な研究を進めるうえで講義なども踏まえると、時間を取る事はなかなか容易ではない。眉間に皺を寄せながらこちらをしげしげと見ると、静寂な時間が一瞬流れた。

壁の時計が待ち合わせ時間になると東島が静寂をやんわりほどくように声を発した。

「お忙しい中、時間を取って頂きありがとうございます」

「東島君、だったかな。付き合わせてすまないね」

緊張して声量が思ったほど大きくはならなかったが、鋭い十四郎の目尻が少しだけ下がった。。

世間一般からすれば、親子とは家族ごとに異なっていて当たり前。ただ、特殊な研究員と室長となれば上司と部下のような妙な距離感がある。希世の親子もそういった不思議な壁があった。再び十四郎の目尻が上がり希世へと視線は移された。その視線に対抗するように一つ息を吐くと、まっすぐ希世は十四郎を見据えた。

「父さん、ひとつ確認したいことがあるのだけれど」

「何だ」

「母さんが亡くなった時期の研究資料が一部見当たらないの。何か知っている?」

「…久坂には聞いたのか」

「いいえ、先に聞いておこうと思って。それでは始めるわ」

コの字型に囲われたテーブルに向かい合う形で齋田親子が座り、それぞれが入口と反対側の壁に映し出されたプロジェクターの映像に注視する。パソコンから映し出されたのは、例の臨床試験実施前の研究員が記した手記と共に録画された研究室の防犯カメラだった。

―――ちなみに希世の言った久坂とは、齋田家の研究において十四郎の右腕となるほど有能な研究員の事で、なかなか癖の強い人物だ。眼鏡を掛けたいつも不機嫌そうな表情と研究対象への真剣な眼差しは崩れない。―――


―【災害時における人の心情・感性について】 著:久坂 琉 ―


無駄のない文章に加えられたここ数年に起きた災害と、周期にまつわる年毎に起こる可能性のある自然災害についての資料が続けて映し出される。共有のために壁につるされたスクリーンにプロジェクターからの映像が出されているが、この人数であればパソコンだけでも支障は無かったかもしれない。ただ、この空気感に狭いパソコンへ集まって注視するほど和やかな空気感ではなかった。


「―――久坂がまとめた資料に母さんが亡くなった時の災害記録がない。違和感があったのはこれだったのね」

「久坂さんはここの研究室にいるの?」

「そう。今日は休んでいるけれど、ほぼ大学内にいると思って間違いないわ。ただ神出鬼没だから話を聞こうにも奴を捕まえない限り無理ね」

「捕まえるって…人を泥棒みたいに言わないでいただけますか、希世さん」

「わぁっ!!」

急に現れた人に驚きすぎて東島は座っていた椅子から転げ落ちそうになった。

「あぁ、すみません急に声を発したのがいけませんでしたね。怪我はないですか?」

不敵に笑いながら、久坂は縁のない眼鏡をずいと掛けなおした。

心配されているのに眼鏡から覗く瞳が一ミリたりとも感情が無いように思えて、東島はぶるりと背中を震わせた。







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