僕と彼女と生存者Ⅰ
…あれから何時間経ったのだろう―――水で喉を潤した後、脳の許容量をオーバーしたせいか、いつの間にか眠ってしまっていたらしい。起き上がって辺りを見回すと、あるのは真っ赤な家具たちと希世だった。
「…起きた?」
「うん…ごめん」
「無理もないわ、落ち着いたかしら?」
静かにこちらを見る彼女は伏し目がちで僕の心を見透かしているようだった。
ガタガタッ……
いきなり部屋の外で大きな音がした。
「何!?今の…」
「見てくるわ、あなたはここにいる?」
「もう一人になるのはごめんだよ…!」
「建物が誤作動を起こしている可能性もある。危険かもしれないわ」
「何も…出来ないかもしれないけど…君が一人で行くのを見ているだけよりはマシだ!」
「そう、」
本当は物凄く怖いけど!一人でここで待っているのは心細いのにもほどがある。
来た道を戻るように部屋を出ると彼女の足は速くなった。置いて行かれないように怖い気持ちを奮い立たせ、足を進める。
入り口へ少し歩いたところから『KISEI ROOM』と書かれた部屋とは反対の道を進んでいくとひらけた場所へ出た。そこの壁すべてが本棚になっている。その側には長テーブル、ソファがいくつかに分かれて綺麗に配置されている。 小さな図書館のようなそこは家具は全て白く、本の背表紙の色だけがやけに浮いて見える。あえて本が目立つように工夫されているのかもしれない。長テーブルのひとつが透明で四方に小さな丸椅子がぽつりぽつりと6つ並べられている。お茶を楽しめるスペースなのかも、と思いながらそこを通り過ぎた。彼女の足はどんどん遠くなっていく。1度角を曲がるのにもちょっとした勇気がいるくらい、僕は不安に煽られていた。
そこにいたんだ。全身真っ赤な衣服をまとったこれまた真っ赤な髪の毛の男が…――――――――。