僕と彼女と突然の別れⅡ
僕の提案はその場にいた皆を驚かせたみたいだ。
「その案が仮に成功したとして…航大、お前が無事に戻ってくる保証はあんのかァ?」
「今のところ無いよ、でも僕は何もしないでいるより、希世のお母さんからどうにかしてヒントを得られるならそっちに賭けたい」
「航大くん…」
そう、もう一度水晶、腕輪を通じて希世のお母さんに話をしてみる。意思疎通ができないと十四郎さんが言っていたけど、不思議なことに僕は話をすることが出来た。
それならもう一度チャレンジしてみて、もしダメなら他の案を考える。ぶっちゃけて言えばこれ以外に案は今のところ浮かんでない。さらなる問題は…。
「希世…お母さんのこと、少し聞いてもいい?」
「えぇ、おぼろげな部分もあるのだけどいいかしら?」
「そっか、じゃあ覚えていることを教えてほしいんだけど、希世とお母さんて似てるよね」
「写真で見たときは今の私の髪型が似ているのかもしれないわね」
「はは、やっぱりか。会えた時にどことなく希世に似ていたから不思議とふわふわしたんだよね」
「そう?」
ひとつずつ組み上げていく。もう一つの可能性にかけて。
「希世が小さいころ、お母さんとやり取りしたことで覚えてることとかある?」
「やり取り…?何かしら…」
「この腕輪を通じて話したお母さんが、希世と似てるって話したでしょう」
「えぇ、」
「十四郎さんは希世に似せてお母さんをイメージしたんじゃないかなって」
「そんな…!?でも、私が研究室に居て特にデータなんて取られた記憶…」
ずっと黙っていて様子を伺っていた周りのみんなは一斉に気づいた。
「もし監視カメラ的なものが辺りに仕組まれていたとしたら…」
「街の中に沢山カメラはあったなァ…何かを追いかけるにしてもすぐに居場所が分かるレベルにあるならこの研究室に無いわけねェよな。」
「そう考えたから、僕のアイデアが生かせるかなって思うんだ。どうかな?」
やっぱり危険なんだろうか。不安は確かにぬぐえないが、僕は再び希世に尋ねた。
「僕が希世のお母さんが持っているであろう情報を何かしらの手段で伝えられるなら、お母さんとコミュニケーションがとれるかもしれない。もしかしたら打開策が見つかるかも!」
あくまで推測でしかないけど、何もしないでいるよりはずっといい。
僕は皆で生き残って、地上で生きて行く術を見つけたい。
終わりなんかじゃない。
強く願ったその時だった。
《緊急事態発生!緊急事態発生!速やかにここから立ち去ってください!速やかにここから立ち去ってください!繰り返します—――》
けたたましい音と共に腕輪が赤黒く光りだした。流れる警告の文章は、その場にいる全員の息を荒くさせた。ただ一人を除いて。
「ここでゲームオーバーです。ありがとうございました」
いつからそこにいたんだろう、どうしてそんな冷たい顔をしているの?
聞きたくても腕輪から光が爆発して何も見えなくなってしまった。
優太くん、君は最後に何を伝えようとしたんだ?
彼の切ない声で僕たちはエンディングを迎えた。
目が覚めるとそこは白い部屋の中だった。
「体験お疲れさまでした。いかがでしたか?」
凛とした聞きなれた涼やかな声、僕は少し頭痛がした。
「何が、起きたのかよく、分からなかったです」
白の研究服を着て、金髪を高く結わえた女性はふふ、と笑って手元の資料らしきものに何か書き込みながらこちらを見た。
「世界がもし天災に巻き込まれた場合の生存手段を学ぶ体験型装置の研究、開発したこの青空ーソラーは自身を夢と現実を織り交ぜたところへ誘ってくれます。きっと、あなたにとって素敵な出会いとなったのでしょうね」
どこかとても重要なことを忘れている気がする。ぼんやりと、靄がかかってしまっている脳内をどうにかしないと、でも多分どうにもできないのだろうと察した。
「ぜひまた体験しに来てください。待っていますから」
そして僕は再び、あの空間へ足を運ぶことになる。
何度目だろうか、僕と彼女が澄み渡る空へ辿りつくことが出来たのは…。
夢と現実の狭間でもがきながら僕は再び君と会いたい。
いまはまだ名前を口にすることはできないけれど。
思い出すことすら叶わないけれど。
それでも僕は…。




